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新任教師のための「スタートアイテム30」

●「先生になる前にやっておくことってありますか?」

 こんな質問をされたとき,先輩教師として,どんなことを伝えますか。
 自分が初任者になる前にも,同じような質問をしたら,「今しかできないんだから,遊んでおけばいいんだよ」という答えが多かったです。
 でも,その後じっさいに新任教師になり,新任の忙しさ,大変さ,つらさを知り,それと同時に「たのしく教師をしていくための方法」も学んできたぼくが今になって思うのは,時間のあるうちに「たのしい授業のアイテム」をたくさん知っておきたかった! ということです。
 せめて,たのしい授業のアイテムを「30」集めておけば,忙しい中であっても,すぐに取り入れられて,自分や子どもに「うるおい」を与えられます。「今度の先生って,たのしい!」と思ってもらえたら,いろいろなことが好転していきます。
 そんなアイテムたちを紹介していきたいと思います。

●まず,自分の定番アイテムを書き出してみる

 30に厳選する前に,とりあえず自分がやったことがあって,思い出せるものを書き出してみたら,300以上のアイテムがあって驚きました(笑)
 これらは「やらなければならないもの」ではぜんぜんありません。ただ,クラスの中でできたら,子どもも喜ぶし,自分もうれしくなるものです。そして,一度身に付けておけば1つ覚えでずっと使えます。
 なにしろ,初任の時は,普通の授業すらまともにできなくて,1日6時間もあるときなど,本当に間が持ちません(-_-;)
 最初の頃は,6時間目になにもやることがなくなってしまって,1時間かけて帰りの用意をしたこともありました(ToT)
 なんにもないときに,子どもたちとたのしく過ごせるアイテムはないのか…。それを求めて20年。気がつけば,たのしく過ごせる教材が,たくさん集まりました。

 その中でも特に, 

①どの学年でも使えるもの
②汎用性のあるもの
③個人的にやっても「クラス運営の範囲内」と思われそうなもの


 という点を意識して選んでみました。

 特に③は大切です。なんでも周りに合わせてやらなければならない初任者にとって,一番困るのは「クラスで独自に考えなければならないもの」です。だけど,逆に言えば,周りに合わせずに,自分の裁量でできるのであれば,先に準備しておけば,それがすぐにできるというわけです。



1.自己紹介クイズ

 最初にクラスの前に立つときは,めちゃくちゃ緊張します。これは,ベテランになっても毎年そうです。だから,やることが決まっていて,絶対にウケる,小原茂巳さんのスーパーアイテム「自己紹介クイズ」は出会いの必需品。たのしく自己紹介ができるのはもちろんのこと,自分が大切にしていることも一緒に伝えられます。
 学年に合わせて問題も変えられるので,①はクリア。②においては,全ての出会い行事に使える優れもの。例えば,教育実習生やボランティアさん,転入生など,新しい人がクラスに来たときにも,これで一点突破できます。また,保護者会でも使えます。保護者会用の自己紹介クイズは,田辺守男さん式がオススメ。③は,もちろんクラス運営の範囲内。(資料あり)

2.ぼく・わたしクイズ

 自己紹介クイズの応用。子ども版の「自己紹介クイズ」です。朝の会などのスピーチに使えます。自分のことを問題にしているので,答えについて他の子から質問が出ると,出題している方はうれしくなります。①②③ともにクリア。(資料あり。また,『新学期の定番メニュー』にも紹介されています!)


3.授業書《空気と水》

 仮説実験授業の授業書から,「最初にやるもの」として1つだけ選びました。まずは,これから。一度その素晴らしさを知れば,次の授業書につながっていくので,②の汎用性はかなり高いです。なにしろ,ぼくはやりたい授業書が山のようにあります。どれも8時間くらいかかりますが,ぼくも子どももつまんない授業で苦痛を感じる時間を重ねるのかと思えば,こっちを選んだ方がお互いに幸せです。ただ,①③としてはやりにくいです。
 そこでぼくは,スタートしたばかりの1週間でこの授業書をやってしまいます。初めの1週間というのは,まだ専科の授業も始まらなくて,学校全体が「クラスのルール作り」でバタバタしているとき。なので,あまり周りに注目されずにしれっとできてしまう期間です。「なんでこんなことしているの?」聞かれたときの理由も「ぼくのクラスの授業のルールをこれで教えている」とします(でも,みんな忙しい時期なので,ほとんど聞かれたことはないです)。なおかつ,子どもたちはこれにより「たのしい授業をしてくれる先生」として,こちらを認識してくれます。そのアドバンテージはめちゃくちゃ大きいです。


4.授業プラン〈見れども見えず〉

 ぼくはこれを,最初の学習参観でやっています。すでに《空気と水》が終わっている頃なので,子どもたちも楽しみ方をわかっているし,保護者の方も一緒に参加できるので,おうちの人たちが感動してくれます。1時間で,授業書っぽいことが体験できるのがよいです。「授業する理由」が伝えられるので,②の汎用性としてはかなり高いです。最初の学習参観でやると決めておけば,①と③もクリアできます。


5.漢字マッキーノ

 毎日必ず「やろう」って言われて,毎回たのしめる無敵のアイテム。漢字を覚えるというより,毎日のたのしみごととしてやっています。マッキーノは漢字以外にも全てのドリルで使えるので②の汎用性は最強レベルです。漢字を覚えるという点では必修ですので,①は申し分ありません。③としては,ちょっと特殊なので周りへのお断りが必要かもしれませんが,「漢字の教え方」などというのは,クラス担任に任されていることが多いので,やるなと注意を受けたことは一度もないです。


6.テンまる読み

 国語の授業中の音読練習は,これがベスト。読むのが苦手な子も,「テンまる読み」ならできます。苦手な子ほど,「、」「。」を意識できてなかったりするので,よい練習になります。すぐに回ってくるように,グループで範囲を決めて「テンまる読み」をするとよいです。これを知っているのと知らないのとでは大違いです。
 また,詩の音読だったら「たけのこ読み」がオススメ。自分で決めた一行のときに,立って読みます。選ぶところは友だちとかぶっても大丈夫。ただし,だれも読まないところができて,音読が止まってしまったらアウト。最後まで読み切ると,みんなで大喜びができます。

7.朝の連続小説

 朝の短い時間をつかって,毎日1話ずつ「読み語り」をしてあげると,子どもたちはことのほか喜びます。絵本もいいですが,学級担任だからこそできることとして「長編の物語」を話して聞かせてあげられることが大きいです。本を読むのが苦手な子も,周りの反応を聞きながら,読書の楽しみ方を学んでくれます。
 最初の長編でオススメなのは,なんといっても『ルドルフとイッパイアッテナ』。「教養」がどんなに大切なことなのか,すごく学べるので,②はバッチリ。どの学年のスタートも,ぼくは「ルド」一択なので①もクリア。そして,読み語りは,「国語の範囲内」に入ることが多いので③も余裕でOKです。
 ぼくは基本的におしゃべりなしで静かに聞いてもらいたいので,新出漢字をノートにまとめる時間をとって,そこで読み語りをしています。もちろん,その時間に書かなくてもOK。


8.バンジーチャイム

 その日がお誕生日の子のために,給食の前にみんなで演奏してもいいし,1人で演奏してもいいです。「ひろってくれる人~」というと,だれかやってくれます。仮説社で購入でき,すごく効果だが,毎年何度も使うので,すぐにもとがとれます。①②③全てクリア。みんなのお誕生日をたいせつにできるのがいいです。


9.手品各種(とりあえず5ネタ)

 ぼくは,自己紹介クイズの中に組み込んでいます。学期のスタートにはいくつかやってあげると喜びます。子どもたちと笑顔の時間をつくるためのアイテムです。
 ものづくりと連動させると,家に帰ってもできるので,おうちでの笑顔も作り出せます。そういう点で5つ選ぶなら,「どっきりフォーク曲げ」「イグアナブラザーズ」「レインボーストリーマー」「ワープボール」「へんしんトランプ」がいいかな,と思います。

10.さすらいのギャンブラー

 教室に「お金もどき」を用意しておけば,いつでもたのしめる「お手軽ゲーム」です。席替えのあとにやってもたのしいし,学活の時間にやってもたのしいです。保護者会でのウォーミングアップにも使えます!


11.クイズ100人に聞きました

 学活クイズの定番です。教室でチーム戦をするとなったら,媒体は「100人に聞きました」が盛り上がります。


12.おりぞめ(ものづくり)

 ぼくのものづくりの定番は,「おりぞめ」です。子どもたちの自然の笑顔に,すぐに出会えます。そめるだけで十分たのしいのですが,教室掲示への汎用性がめちゃくちゃ高いです。掲示物にそえるだけで,それがランクアップして,教室が一気に明るくなります。
 染めた後の紙の使い道もたくさん研究されていて,個人的な作品に昇華させることもできるし,共同作品を簡単に作り出すこともできます。
 また,卒業生を励ますための彩りにも使えます。


13.道徳プラン〈ピンチの時に〉

 「どっちに転んでもシメタ」という言葉を紹介したくて作った授業プランです(原作:峯岸昌弘)。たのしい道徳授業の定番として使っています。これを最初にやると,「もっとある?」となり,最初の道徳の授業にオススメです。


14.道徳プラン〈いじめが教えてくれたこと〉

 「いじめ」は,クラスで必ず問題になることです。それを意識できるようになる知識,「いじめには仕返しがある」「いじめには終わりがくる」「いじめられている人に気づいたときの,周りの対処法」など,大事なポイントがいくつも出てくる,いじめを説明するための基礎資料となるプランです(原作:坪郷正徳,プラン化:峯岸昌弘)。 
 クラスでいじめが問題になる前に,これを実施しておくと,あとのクラス運営でおおいに役に立ちます。


15.道徳プラン〈マイノリティ〉

 クラスの中で,より過ごしやすくなるための見方を教えてくれるプランです(原作:坪郷正徳さん)。自分が過ごしにくいとき,「マイノリティ」という見方ができると,対処の仕方がわかってきます。

16.○○めくり

 社会の最初の10分で,ドリル的にたのしめるカードゲームです。「都道府県めくり」や「国旗めくり」など,楽しくめくっているだけで,なんとなく覚えられてしまう,すばらしいゲームです。種類もたくさんあり,目的に合わせて選ぶことができます。(作:淀井泉さん)


17.定番カードゲーム(足算・てん✩てん,モルQ)

 遊んでいる内に,計算力や知識が身に付く,秀逸なカードゲームです。
足算(作:淀井泉さん),てん✩てん/モルQ(作:志田竜彦さん)


18.通知表〈振り返りアンケート〉

 通知表の前に,子どもたちに「その学期にやった〈たのしい授業〉をたくさん思い出せるようなアンケート」を書いてもらうと,教師のぼくらも,たのしく通知表が書けてしまう方法です!


19.授業プラン「おおかみ」の詩の授業

 参観の授業などにオススメの,詩の中の「ことば」を予想していく授業プランです。

20.体つくり運動プラン〈着地と飛び下り〉

 体育の出会いの定番授業です。たくさん動いて,「またやりたい!」と言ってくれる大人気の授業プランです。


21.ボールゲームプラン〈シュートボール〉

 体育のボールゲームの基本は,これがオススメです。バスケットボール,ポートボールをやる前には,この〈シュートボール〉を,短い時間でもいいから体験させてあげるとよいでしょう。最初のボールゲームの定番授業です。


22.道徳プラン〈夏休みの宿題〉

 夏休みの前にやると,とても喜ばれる授業プランです。お説教にならずに,宿題を計画的にやりたくなる,おもしろいお話です。


23.カルタdeビンゴ

 どんな「かるた」でも使うことができます。たるたを自分のシートの9マスに,最初からならべておきます。読まれたらそれを取って,ビンゴをそろえていくルールです。部首カルタ,地域のかるた,英語カードなど,教科に合わせて,いろいろな授業で使えます。競争ではなく,基本的には配膳式かるたの応用なので,集めるたのしみが得られます。

24.授業プラン〈謎のだるま暗号〉

 ローマ字などを教えた後にやると喜ばれる,読み聞かせ型・推理授業です。親も一緒にたのしめるので,学習参観の授業にオススメです。

25.超能力カード(ものづくり)

 相手に好きな食べ物をひとつ,心の中で選んでもらい,それを超能力で当ててしまうことができる「ものづくり」です。友だちに問題を出し合うので関わりを楽しむことができ,作った後にたのしめるものづくりです。

26.かさぶくロケット(ものづくり)

 飛ばす系ものづくりの中では,工夫する楽しさがあって喜ばれるものづくりです。かさぶくろに,ちょっとした工夫をするだけで,回転式ロケットが完成します!

27.惑星ごま(ものづくり)

 コマ系のものづくりの中では,とても秀逸なものづくりです。見た目を工夫するたのしみもあるし,回してバトルするたのしさも十分味わえます。それが,ペットボトルのふたで作れるというところがとてもよいです。

28.日本列島絵描き歌

 いろいろなところで説明するのに日本列島を描くことがありますが,その度に歌いながら描くと,子どもたちが覚えてくれる「日本列島が描ける絵かき歌」です。日本列島が自分のものにできて喜ばれます。

29.授業プラン〈吹き矢の力学〉

 お別れの授業の定番です。力積の大切さを伝えることができ,お別れする子どもたちへの最後のメッセージになります。

30.お別れの手紙

 定番のお別れの手紙を作っておくと,みんなから思い出のお手紙をもらえます。最後のお別れの日までにぜひ。

(資料あり)とあるものは,詳しい資料が↓こちらから入手できます。
 資料がないものは,それぞれ別のNOTEの記事で紹介していきます。
 

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