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食選びは人生選び〜世にも奇妙な人生会議、久住昌之さんに会いたい〜

世にも奇妙な物語。
その独特な物事のキリトリ方や、少し考えさせられるドラマが好きで、子どもの頃よく見ていた。

印象深い、今でも覚えているストーリーもいくつかある。

その中で、最も強烈に覚えている話が
「夜汽車の男」

男が、夜汽車の中で弁当を食べる。

まぁ、それだけの話。でも、奥が深い。

駅弁を丁寧に、完璧に食べる主人公。
こだわりが光る。

食事の仕方には、西洋式と東洋式の二つのスタイルがある。
西洋式とは、メインのおかずに向かって、一品ずつ順番に片付けて行く形式である。
一方東洋式とは、メインのおかずを中心に進めていきながら、間に他のおかずを挟み込んで行く形式である。
しかし、俺が実践しようとしているのは、どちらのスタイルでもない。

てな感じで。

フライの中身や、調味料はどれを何に使うか、など推理しながら進んでいく。
最後は、男のショックな気持ちに共感しながらも、思わず笑ってしまう。

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こんなに強烈に心に残るのは、
自分もここまではっきり言葉にしてイメージしていなくても、同じような思考を巡らせながら弁当を食べているからなのかもしれない、なんて思う。


2020年、久々の一人暮らし。しかも、コロナで外食は自粛。
一人暮らししたら、毎日外食になっちゃうかもなぁ、なんてのは、大きな誤算となり
毎日自炊の生活。これはこれで楽しくて、つい色々作っちゃう。
もともとテレビはほとんど見ない方だけど、家にいれば、ついつい見ちゃう。

この1年で一気にはまって見まくったのが
「孤独のグルメ」


思わず単行本も購入。

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何より衝撃だったのは、単行本のあとがき。
あの「夜汽車の男」の原作が、まさにこの孤独のグルメの原作者、久住昌之さんだと初めて知った。

食をベースにした、
ストイックな、
でも庶民的な、
そんな話が僕は好きなんだな、と思っていたが

どうやら、久住昌之さん、が好きなのか?


アマゾンプライムで孤独のグルメを見倒しているのだが、
本編の松重豊さんの一人で食う時の眉間のシワの語りが渋くて面白いのは当然だけど
久住さんがその同じ店で嬉しそうにお酒とともに味わい喋る「ふらっとQusumi」が大好きだ。
井之頭五郎より、久住さんと食べたり飲んだりしてみたい。

というわけで、

いま、一番会いたい人。久住昌之さん。


面(ジャケ)食い、という新刊を早速読んでいる。
昔、iTunesとかYoutubeなんてない頃に、レコードのジャケットを見てレコードを買った。ジャケ買い、だ。
同じように、調べようと思えば調べられるが、そんなレビューには頼らず、店の外観と雰囲気、つまり「ニオイ」を頼りに直感で店に入り、食べる。これが「面(ジャケ)食い」だ。

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その中で、
呼子のイカで有名な、呼子の朝市を訪れた話の中で、人気店ではなく、ふと出会った渋い「よしや食堂」を選んで入る久住さん。

そこに、こんな言葉がある。

そんな慌てなくても、呼子のイカは逃げない。今度来た時、呼子でイカが一匹も獲れなくなっていても、そん時ゃそん時だ。「死ぬまでに食いたいもの」とか「死ぬまでに見たい風景」とかいう宣伝が多いが、余計なお世話だ。誰だって明日死ぬかもしれない。俺は笑って「よしや食堂」に入るのだ。

そうだ、僕も少し前までは、名物を食べなきゃ。次いつ来れるかわからないぞ。なんて考える方だった。
でも、ここ数年、その考え方が変わっているのを自覚し始めていたから、この文章には、深く頷いた。


食選びは、人生選び。

直感を信じて、面(ジャケ)食いする人。
徹底的にレビューを調べ上げてから扉を開ける人。
食べてから後悔する人。偶然の店が常連になっちゃう人。


いま、人生会議。についてお話しすることも増えている。

病気になったらどうするか?どこで死にたいか?そんな話は気が重い。

もっと好きなこと、こだわり、大切にしたいこと、を話してください。なんて説明するけど
そうは言われてもやっぱり話をするのは難しい。

大好きな食べ物は?
迷った時はどうやって決める?
おしゃれなレストランと商店街の定食屋、どっち好き?
アジフライに醤油が添えられてたら、どうする?

人生最後に食べるなら何がいい?

そんな風に「食」についてかたりあう、最後の晩餐バナシは
その人らしい生き方や、その人が本当に大事にしていることを話題にできる、必殺技かもしれない。

井之頭五郎さんの主治医になったら、想いやこだわりに、頷きながら寄り添えそうな気がするのは、彼の「食」への向き合い方をよ〜く知っているからかもしれない。「病」への向き合い方は知らなくても。


夏にはオンラインで久住さんのバンド「スクリーントーンズ」のライブをオンラインで見た。孤独のグルメのドラマで使われている音楽のメドレーで、ウキウキする、楽しいライブ。メンバーが仲よさそうで嬉しそうなのが印象的。
これだけ多彩な才能で仕事をやってる有名人なのに「会ってみたい、一緒に飲みたい」なんてふわっと思わせる、優しさや笑顔が魅力なんだな。

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