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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問54

みなさん、こんにちは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問54です。

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問54
ゲシュタルト療法の特徴として、正しいものを2つ選べ。

① 今ここでの体験に注目させる。

② 個人の全体性への統合を目指す。

③ 人間の「意味への意思」を重視する。

④ M.Wertheimerによって創始された。

⑤ 恐怖症の治療に用いられることが多い。
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正解、 ①と②です
ゲシュタルト療法は、医師のF.Perlsを中心に提唱された心理療法です。

ゲシュタルトとは形、全体、統合を意味する言葉であり、ゲシュタルト療法も統合を指向する人格への変容を目的とします。

人間を統合された一元論的(ホメオスタティック)な自己調節機能を持つ全体的存在として捉え、具体的技法が開発されています。

ゲシュタルト療法はゲシュタルト心理学の影響を受けており、ゲシュタルト心理学は知覚現象を説明する理論でしたが、後に学習や社会行動の研究にも影響を与えました。

ゲシュタルト療法の創始者であるPersは、人格の全体性について、ゲシュタルト心理学の「図」と「地」という用語で説明しました。

すなわち、感じられる「図」としての感情と、それまで無視されていた「地」としての人格が統合されることで、その人のゲシュタルト(全体性)が完成されるとしているのです。

パールズが理想としていた健康なパーソナリティは「今ここに生きる人間」ということですが、これは以下の通りの条件を備えています。

現在の瞬間ということを重視する。
自分自身も十分に意識している。
衝動や願望を重視できる。
自分自身の人生に責任を負う。
自分や世界と生きた接触を保つ。
怒りを表現できる。
自分に頼り、外的な基準に頼らない。
その瞬間瞬間の状況に柔軟に対応する。
自分のすべての面を受容している。
幸福の追求それ自体を目的としない。

なお、ゲシュタルト療法を創始したのは上記の通りパールズですが、それに影響を与えたゲシュタルト心理学の創始者はWertheimerになります。

この辺が④の正誤判断となりますね。

以下では、ゲシュタルト療法の基本概念について述べていきます。

まずは「ホメオスタシス」です。

ホメオスタシスとは、生命維持のために有機体が外界の変化に対応して、内界のバランスを保持しようとする生理的機能のことであり、例えば、体内の水分が不足すれば喉が渇く、というものを指します。

このホメオスタシスが精神的現象の中にも存在することを見出したのがパールズであり、不快な経験をすれば不快や怒りを覚えるなどが例となります。

ですから、不快や怒りであろうとも、それらを抑えたり、無視するのではなく、むしろ、取り上げたり、それと関わるようにする方が良いとされており、これを「コンタクト」と呼び、経験していることを言語的もしくは身体的に表出することを指します(「形」にする、という表現を使うこともあります)。

続いての基本概念は「図と地」です。

図とは、意識の前面にあるもの、もしくは関心事であり、その背景にあるものを「地」と呼びます。

精神的に健康であれば、知覚されるものは1つで、2つが同時に知覚されないとゲシュタルト療法では考えます。

例えば、本も読みたいが買い物もしたいという場合、この2つの欲求を同時に満たすことは不可能なので、どちらの欲求が高次にあるのかを「図」として認知して、それを選ぶことが要請されるわけです。

買い物を「図」として、それを実行した場合、その欲求は解消されることになりますが、「図」にある欲求が解消されると、今度は次善の欲求が「地」から意識の前面に出てくることになります。

そして、今度は読書をするという「地」から「図」になったものを取り上げて、円滑に生活を進めることができ、これが人間の欲求という観点から見た「図地反転」になります。

この「図地反転」が起こらない場合もあり、例えば、失恋したときに「死にたい」となれば、失恋の経験が固着して「図」から消えないということになり、これでは失恋の一面しか捉えられていないということになります。

失恋の痛みや悔しさ、残念さなどが、自分にとってどのような意味があるのかという面について考えることができていないということですね。

この「自分にとってどのような意味があるのか」に気づくことができれば、すなわち、経験のもう一つの面を見ることができれば、人間はしたたかに生きることができるというわけであり、ゲシュタルト療法的にはこのことを「視野が広がる」と表現します。

そして、上記の「気づき」も基本概念の一つに挙げられます。

この「気づき」とは、意識性とも呼ばれますが、「今ここ」で「地」から「図」にのぼってくる意識の過程を指しています。

つまり、身体の内外で起こっていることを感じたり、意識することを指します。

ゲシュタルト療法では、先述の「ホメオスタシス」「図と地」の観点から、ゲシュタルト療法では無意識に封じ込めた自分のありのままの感情への「気づき」を重要視します。

自分でも気づいていない自分の感情に気づくことで、無意識に沈んでいた心からのサインに応え、固まっていた「図と地」の反転をスムーズに行えるようにしていくのです。

しかし、この気づきというのは、過去に遡ったり、未来に飛んでいったりして得ることはできず、過去も未来も「今ここ」で起こっているものとして体験することが重要であるとゲシュタルト療法では考えます。

そのため、ゲシュタルト療法では「今ここ」で関わる技法が創案されており、それは電話相談や危機介入に取り入れられています。

ゲシュタルト療法はグループで行われる場合もありますが、もちろん、個人療法の形態でも行われます。

その適用の範囲は、自ずとセラピストの技量と経験とに関係することが多く、適用例の報告を挙げていくと、神経症や心身症、失感情症、そしてうつ状態、ボーダーラインへとその範囲は広げられつつあるとされています。

ただ、特定の病理に特化した心理療法というわけではないので、クライエントの特徴とゲシュタルト療法の特徴(上記で挙げたような、ゲシュタルト療法の基本概念に沿った対応が合うか否かなど)が合致することが重要だろうと考えられます。

よって、⑤にあるような「恐怖症の治療に用いられることが多い」とは端的に言えず、むしろ「恐怖症の治療」ということであれば行動療法的なアプローチが第一選択となるべきでしょう。

以上より、①および②が正しいと判断でき、④および⑤は誤りと判断できます。また③人間の「意味への意思」を重視するについては、Franklが提唱したものになります。

引用URL:https://public-psychologist.systems/18-心理に関する支援(相談、助言、指導その他の/公認心理師%E3%80%802023-54/

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