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【読書感想文】差別はいけないとみんないうけれど

基本的にはロールズの正議論に則り、「正体が無知のヴェールに包まれた状態」におけるものに立脚していたいものの、生得的な違いなどにより、平等ではない事実(女性のほうが感情的だったりすることを裏付けるデータだったり、人種によってIQ平均値の統計的な差異が認められていることなど)により、それが上っ面な正義でしかないことが明らかになってきた。また、女性の平等を求めたとしても、それに見合う効能とコストがあるのかと指摘し、棄却するような功利主義(それぞれの正義や道徳の対立を効能とコストの観点から回避する)も台頭している。また、過剰に平等を求めた先に、自分の内在する暴力性(Aを言うなら、BはどうやとかA’のことはいいのか)を過剰に取り上げることが多くなり、発言するのも気が引けるようなそんな堅苦しい世界になっているようにも感じる。
でもそれでも、中国のようなアーキテクトによって人間をコントロールしようみたいなものや差別に対抗するには、道徳や正義を発揮する必要がある。非常に脆弱で曖昧な主観的なそれに立脚することのみが人間としての矜持とすら今この本を読んだ後に感じる。この本を読む前まではこの昨今の生きづらさや発言のしにくさがめんどくさく、鬱陶しいものだと感じていた。もっと自由に生きたほうがいいに決まっているとすら思っていた。どちらかといえば、功利主義的な人間(だからIT企業で働いている)だし、性質の違いがあるのだから完全な平等は成立しないと思っていたが、そんな事実や主義も勘案したうえで、平等を求めること、そのポーズの意義を最後の天皇の章で感じたように思う。
データ分析やIoT、DXなど数字で語ろうとする機会は非常に多いし、それが有用である側面もわかりつつ、道徳心や正義にこだわることは大事なんじゃないかと思わされた。

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