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住吉山実里の欧州滞在記 2024/05/04

朝、いづみさんといつものカフェで待ち合わせ。いつもご馳走になっているから今日は絶対いづみさんにお返ししないとね、と二人で息まきながら歩く。週末は混んでいるという人気のお店だけど、なんとかテラスのいい席をゲットした、店内から椅子を一つ持ってくる。いづみさんと数ヶ月ぶりの再会! お変わりなさそうで嬉しい。カメラを回しながら、イタリアでの活動と経験を聞かせてもらう。インデペンデントのプロデュースカンパニーの一員として、アーティストの表現したいことと劇場の要求との間に立ちながら、かなり攻めたプロデュースをされていたんだなと想像する。

ランチはジョルジュさんも合流してシチリア料理を。オーナーが変わりながらも、スタイルを変えずに続けているお店、中華街の隠れ家......知らなかった! ミラノは奥が深い。ビュッフェスタイルの前菜やパスタをシェアしながら、お二人とたくさん話す。数ヶ月前と今はくっついているように感じるけれど、去年はパレスチナ・ガザ問題は起こってなかったんだ、その時間の不可逆性に呆然とする。

食事後、センピオーネ公園を散歩しつつ美術館へ。あ、花粉のワタだ。いづみさんに名前を聞くと、カーゼ・ポポラーニというそう。去年はもうシーズンが終わっていたのか、気づいていなかったのか。この花粉にも、日本でのスギ花粉のような社会的歴史的背景があるんだろうか。気になるな......。

トリエンナーレミラノの中庭を使ってのトーク。ここ数日の天候不安で、ミケーラがギリギリまで外でするか中でするか悩み抜いてくれて、とっても可愛い設えに。建築系のキュレータでもあるニーナさんを聞き手に、ミラノでのリサーチや創作について話す。ニーナさんの、「ずっと昔によく来ていた場所に再会できた」話や、お話を聞きに来てくれた冒険者ユーリさんの「ミラノでの過去のトラウマが癒された」話を聞けて嬉しい。冒険中の写真をプレゼントしてくれたドミニコさんは翌日のワークショップにも参加してくれるそう。ミラノじゅうに短編をたくさん仕掛ける今回の『演劇クエスト ミラノ、霧のエージェント』の作戦は、リサーチとか超大変やったけど、参加者の琴線に触れる要素をどこかしら入れることができたようで嬉しい。3言語、めっちゃ分厚いけど。

しばし休憩してQuartetto d'archi di Torino『String Quartet II』(Morton Feldman)を観に。途中で、いづみさんのご友人に出会う。トリエンナーレミラノで働いている彼女はまさにこの公演から戻ってきたところで、こう、胃袋のところで人差し指を下にするジェスチャー。ああ! 生ジェスチャー!! 去年、大道寺莉乃さんからイタリアのジェスチャーについて話を聞いていたそれを生で目にするとは!

人生4回目のミラノのメトロ、古い車両に乗れたので、ホクホク。メトロから上がると、方向感覚を取り戻すまで時間がかかる。あ、ここかぁと思ったところで、ジョルジョさんがグッチの暗殺事件の話を。え、そんな話知らなかったかも。や、知ってたっけな......うーむミラノは奥が深い。し、作品を作り上げたことで見えてくる、聞こえてくる話もあるのかも。

6時間上演のライブ。受付を済ませて、空間に入ったとたん「好きかも」と直感する。部屋の中央で4人の奏者。観客はなんとなく周りを取り囲み、床のクッションに座ったり、あるひとは寝転んだり。心地良さそうな場所を探りながら、少しずつ身体を馴染ませる。長時間上演はささやかな能動的参加を求められる気がする。どこを注目して何を鑑賞するのかを気まぐれに揺らしながら。驚くのは、即興ではないということ。時々楽譜がめくられる。一体どうやって楽譜が書かれたんやろう。リハーサルどうやっているんやろう。そんなことを思いながらいると、だんだんページを捲るために演奏しているような、空白のための音楽のような気にもなってくる。最後まで聞いていたかったけど、明朝にワークショップがあるので、とっても名残惜しく帰路につく。

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