俺は変われるのか【舌癌編】21
退院して1か月が経とうとしていた。
この1か月で、口腔粘膜炎と腫瘍跡の壊死は順調に回復していたが、味覚だけはまだまだ回復とは言えなかった。
わかりやすく言えば、味覚を一番感じなかった時を10段階の「0」とすると、その時は「2」だったと思う。
味覚障害も辛かったが何より一番辛かったのは、食欲があるのに口が殆ど開かない事であった。
放射線治療で内側翼突筋が固まってしまい、頑張って口を開けても精々1センチ程しか開口しないのだ。
なので食事は酷いものだ。
頑張って開けた「1センチ」の口に、お粥やお茶漬けを器用に流し込む。
食事ではなく、見事な「作業」だ。
うまく流し込まないと口の外に食べ物が流れてしまうので、慎重に口の中へ入れなくてはならない。
だが、その時の私にとって食事はとても大切なものであった。
2か月の入院で大幅に体重を落としたが、体重の低下は、癌患者にとって生存率などに影響する大きなリスクなのだ。
だから、そんな辛い食事であったが、慎重に食するというより、真剣に食するのであった。
開口障害だけではない。
咀嚼や嚥下も弱っているので、当然に柔らかい物しか食べられない。
このような状況下で気に入ったメニューがある。
クノールのコーンポタージュにご飯を入れただけの…
「コーンポタージュご飯」
であった。
尚、塩を2摘まみ入れるのがミソです。
食欲と性欲と睡眠欲がバッチリだったので、まだまだ生きられるかなぁと実感はしたが、一番生きられると実感できたのは…
「日本酒が本当に美味しく感じた。」
ことであった。
本当に俺は変われるのか… 。
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