colaboとの委託契約は「公法上の契約」?
東京都に予定価格算定に関する資料の開示請求をした所、公法上の契約のため当該資料は存在しないとのことであった。東京都は公法上の契約として地方自治法の契約、つまり予定価格の算定や監督・検査は適用されないものとして運用している可能性がある*。
※後述の資料3では行政実務関係者の解釈や下級審判決が一致しておらず、「公法契約についてもできる 限り自治法234条以下の適用を念頭に置いた取扱いが穏当であろう」としている。東京都は行政実務関係者の解釈で運用している可能性がある。
公法上の契約とは
私もよく知らないため、以下の資料を参考に整理する。
資料3:自治体契約と民法
資料4:学陽書房サイト
資料5:公害防止協定の法的効力とその活用
資料6:公の施設の指定管理者制度について
公法上の契約は「行政主体が公法上の手段として契約を結ぶ行為である。公益を目的とし、公益を実現 するための契約なので私法規定は適用されない。(資料4)」とのことである。具体的には、都道府県から市区町村への事務委託等の官と官の契約が大半なようである。しかしながら、官・私人間の以下の契約も公法上の契約とされている。何れも法律を根拠とし無償での契約である。
公害防止協定
建築協定(建築基準法 69 条)
緑地協定(都市緑地法 45 条)
有償の公法上の契約として平成15年の地方自治法改正により公の施設管理を民間開放する指定管理者制度があるが、地方自治法において事業報告書の報告や管理の状況等の報告等の条例を制定するように義務付けている。東京都も「東京都指定管理者制度に関する指針」により提案価格を含めた選定、履行確認書や運営状況評価等の品質管理手法を定めている。
colaboの委託契約は公法上の契約?
「公法上の契約」は古い概念であり公法上の契約であっても地方自治法234条以下の適用がなされるとの指摘がある。一方、東京都は地方自治法上の予定価格に関して「公法上の契約」を理由に書類がないとしており、その古い概念で運用しているのではなかろうか。
古い概念とした場合でも、colaboと東京都間で締結された委託契約は根拠法がない有償契約であり(民間団体を位置づけた困難な問題を抱える女性への支援に関する法律は令和4年制定、令和6年施行)、公法上の契約とすることは難しいと考える。
また、古い概念のままでは、地方自治法で定める価格競争や予定価格等の適正価格とするメカニズム、発注者の監督・検査による品質確保方策の適用から逃れた運用を行っている可能性があり、指定管理者制度のように監督・検査の代替措置も講じていない。
公法上の契約としたことによる検査・監督への影響を示す直接的な証拠はないが、経費精算なのに経費のチェックをしていないこと、平成30年の契約の検査が実施されてないことと符合する。
「colaboの不正疑惑に関する考察」では準委任と請負の悪いところ取りをした「成果品は不要だし、過程(経費)のチェックも疎か」な契約だと指摘した。公法上の契約とすることにより、「発注者の責任免除」という更に悪い部分を重ねているように見える。
困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議
現在、「困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議」が開催されており、民間団体への補助規定が検討されるようである。
民間への支援は必要だと思われるが、「公法上の契約」とするのであれば、指定管理者制度と同様に監督・検査や民間団体間の競争性確保の方策を定める必要がある。
なお、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」は施行されておらず、現時点で同法を公法上の契約の根拠とすることはできないのではないか。
他の自治体
札幌市及び仙台市は、通常の企画競争やプロポーザルで調達しており、公法上の契約として扱っているようには見えない。また、仙台市は東京都のような経費精算の支払いをしておらず、各自治体の比較を記事にしたいと思う。
修正履歴
12月22日 公法上の契約による検査等への影響の推定根拠を追加
12月21日 「公法上の契約」は古い概念との指摘に基づき修正。
12月20日 有償の公法上の契約として指定管理者制度の追加、札幌市・仙台市の状況追加等