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〈ゲーム感想〉【FE 風花雪月】語りつくせない物語のSRPG

王道邪道は自分次第

(ネタバレあり)
歴代のFEシリーズの中でも特に推しタイトルにする人が多い『ファイアーエムブレム 風花雪月』。新作の『エンゲージ』が発売された今更ながら、改めて良いトコ悪いトコ、語れればと思います。

※今回は長くなったので、話題の句切れに「○ ○ ○」を入れてみました。

苦し紛れに描いた悪いトコ編はこちら:


ゲーム性

先に書いておくと、このタイトルは全ての要素がキャラクターへの愛着につながるようにできていると言っても過言ではありません。

まずは育成要素。SRPGらしい育成期間の制限によるリソース管理がありつつも、育成の方向性はプレイヤーに委ねられています。戦って育てるか、勉強して育てるか、交流してやる気を出させるか…それらをうまく組み合わせて私欲にまみれた理想の軍団を編成します。

ガルグ=マク大修道院に併設される士官学校にて教鞭を振るうことになった傭兵の主人公が、皇族から市民まで身分も出自も異なる生徒たちと交流を深めながら、困難に立ち向かい共に成長していきます。

従来通り、戦闘でレベル上げができることはもちろん、上の設定を活かして受け持つ学級の生徒たちや協力してくれる人々を指導できるところが最大の特徴。武器レベルを上げるのが主目的ですが、事あるごとに相手との絆=支援値が高まります。

二部になると生徒たちからも技術を教えてもらえ…

休日に学校内を散策することで得することも多く、あらゆるアクティビティでアイテムはもちろんプラスの効果を得られます。これは次回作のエンゲージにも引き継がれています。(「お茶会がない」?ASMRで囁いてくれるじゃないですか!)

複数のアプローチから仲間を成長させられる、育成要素の充実っぷりは『風花雪月』を語る上で外せませんね。

○ ○ ○

戦闘面での変化でイチオシしたいのが、魔法が1マップごとの回数制に変化したことです。十回使える魔法を使い切っても、次のマップでは使用回数を回復してくれます。

おぽのは貧乏性なので、メティオだのリザーブだの回数制限が少なく無限に手に入らないアイテムは輸送隊(倉庫)の肥やしにしてしまいがちでした。しかし、『風花雪月』では上記の変化により、遠慮せずガンガン使って問題ありません。

その代わり「誰が何を使えるか」はゲーム側で設定されています。ウィンド系は使えてサンダー系は使えない魔法使いや、魔力の成長は低めにも関わらずレスキューを覚えられる人がいたり、教導を通したそういった意外な発見も絶えません。

いえ、覚える魔法なんて攻略サイト見れば一発なんですが、好き勝手に育成しても無駄じゃないことが大事なんですよ!

○ ○ ○

ゲーム性の最後は「周回のやりやすさ」を取り上げます。シリーズ通してもほとんど例を見ない育成周りの引き継ぎ要素が存在します。

ひとつ目に挙げたように、この作品は育成要素が多く、主人公の指導によってチームのバランスを自由自在に調整できます。引き継がないことも選べますが、引き継ぎを行うことで序盤から強い状態でスタートするため、より実験的なこともできるようになります。

そしてなぜそこまでして周回を促して来るのかというと…最大の魅力である正解なき物語のルート選択があるためです。

物語ついては次章で触れるとして、自由な育成とその引き継ぎがあることが、シリーズ初めての人でもどんどん遊んでしまう仕掛けとなっています。
ようこそ、FEの沼へ。


世界観

ファンタジー戦記物らしく、フォドラの大地を三つに分けるそれぞれの国の思惑や目指す理想がしっかり描かれ、それらがまんまとすれ違っていく様も丁寧表現されています。

もうこれ見た瞬間、均衡は崩れるんでしょってなる。

シリーズ4作目の『聖戦の系譜』が今もなお人気である通り、戦記物は善悪の二面だけでは語ることはできません。誰もが理想をい抱きながらも少しずつ間違えているため軋轢が生まれ、その不和を正そうとしてさらなる火種を撒き散らすことになってしまいます。

みんなが正しくて、みんなが間違ってるのが創作物の戦争です。

FEでは手を変え品を変え、英雄譚をベースに国家間、民族間の戦争を描いてきましたが、こと風花雪月に至っては、それが最高潮に達したと過剰なまでに褒めてしまいます。

○ ○ ○

貴族と平民、貧富や性別、生まれや育ちの差はあれど現実のそれよりはまだマシな方で、フォドラで最も人々の摩擦を生むきっかけなっているものが、「紋章」です。ファイアー“エムブレム”のタイトルなのに紋章が必ずしも良いことばかりじゃないというのはひねりが効いていますよね。

「紋章」は一つのキーワードで英雄の遺産を使える一つの素質のようですが、遊んでいた人はもう気付いていると思いますが、実はそれほど重要な強さを秘めてはいない、というところがミソです。

エンゲージを例に出すと打開のための大技、エンゲージ技がありましたが、「紋章」はそちらとは違い確率発動が多く、対応する攻撃スキルを利用したとしても盤面をひっくり返せるほどの力はありません。せいぜい強力な英雄の遺産をデメリット無しで使える程度ですが、それも本当に微々たる利点です。

さらに言うと、「紋章」を持つものは劇中でそれなりに登場する上、主人公視点では紋章があろうがなかろうが目をかけた人物が強く育つため、紋章はゲームとしてもそこまで特別なものではないと言えます。

しかしながらフォドラでは人々の信頼を集め、その価値観の物差しとなる重要なファクターとして機能しています。

言い換えるとそれは「信仰」に等しく、厳しい環境を耐え抜くために頼ることも、それによって歪められた価値観を異を唱えることも、信仰そのものに頼らないことも全て是として扱われます。第一部では、それに翻弄されながらも前に進む仲間たちの様子が描かれます。

○ ○ ○

そして、忘れてはならないのが第二部。

5年という時を経て、主人公が再びガルグ=マク大修道院を訪れるところから、新たな物語がスタートします。

緻密に描かれていた建築美術や宗教、あらゆるそれまでの価値観の象徴が崩れており、人々の心も荒み切っています。その中で、再び立ち上がった主人公が特に苦しむ級長たちを支え、癒し、共に歩んでフォドラの地の平穏を生み出すのがすべてのルートに共通する考え方です。

物悲しいメインテーマとともに、かつての自分が受け持った級長と再会した瞬間、そこまで入り込んでたプレイヤーは泣いてしまうかもしれません。この次の戦闘マップと合わせてちょっと泣きました。(一つのルートだけムービーじゃなくて会話で済ませたのはとても惜しい…。)

二部になってから楽しめることの一つが、育てていた仲間たちが五年後の成長した姿を見せてくれることです。プレイヤーは育てる側の人間なので、こういった変化もキャラクターへの愛着を生む一つの要素だと言えます。

しっかり戦争に対して仲間たちも向き合ってくれるのが丁寧。

この時点ですでにハイカロリーなのに、これがプレイヤーの選択で4つのルートに分かれているのでとってもボリューミー。やるためにはそれなりの時間を確保してからではないと十二分には楽しめないかもしれないです。


キャラクター

『風花雪月』は特にこの要素が深く作られており、上にも書いていますが、やはりそのキャラを好きになる仕掛けが作品全体にちりばめられています。

まず、教師という立場から受け持つ学級を選ぶことで、その学級の生徒たちが編成の中心となるので育てるキャラクターを絞ることができます。しかも周回をすればするほどそれぞれのキャラクターがわかるようになり、育成方針も前もって決めていくことができます。(エーデルガルトとヒューベルトだけ育てない人や、途中加入のフレンに一切経験値を与えない人も当然いるのです。)

そして何よりも、このキャラクター達は喋ります。いえ、ゲームだし当然なので何を言っているのかと思われるかもしれないですが、あらゆるシーンでみんな会話に参加してきます。

これまでのFEであればストーリーシナリオの進行中は、主要キャラのみだけが言葉を発しそのほかのキャラクターは画面に登場すらしないということが当たり前でしたが、自分が受け持つ学級の生徒たちはガンガン発言します。しかも誰かが戦死してかけたりしていた場合はそれに合わせた会話に変化します。

○ ○ ○

また、シリーズおなじみの支援会話。これらのボリュームも相当です。体感でいつもの三倍ぐらいしっかりと会話をします。これは主人公に対してだけではなく、仲間に対しても同等の長さ。世界観をベースに、そのキャラクターの考え方、価値観がぶつかり合ったり、似た者同士でも小さな文化の差で会話が広がったり、単に面白リアクションをしてくれたり。

うっかり地雷を踏み反撃されるシルヴァン。
うっかり地雷を踏み睨まれるシルヴァン。
うっかり燃やされる(かもしれない)シルヴァン。

C~Aまでの支援にストーリー性もあり、とにかく、あらゆる面で支援会話をどんどん読み込みたくなる面白さがあります。こだわりを感じられるのは、ほかの支援会話で出た話題が、別のキャラクターとの会話に反映されていることです。(その差分も含めてフルボイスとかなんという贅沢…

同じ内容だし主旨は変わらないのに驚くほどの幅があり、聞くタイミングによって変化する楽しみもあるので、今作の支援会話はどんどん埋めていくのがオススメです。ただし、先ほども言った通り一つの支援会話が長ぇ~のでまとまった時間に楽しみましょう。

シルヴァン、好きなのでいじってしいました…。イケメンキャプで中和。

学園内の生活でも会話する機会は多いので、どんどん話しかけてどんどん新事実や造詣が深められて行けることかと思います。お陰様で、風花雪月のキャラクターは全員好きという節操ないことを言ってしまう領域に達しています。

○ ○ ○

さて、仲間としての頼もしさ、心地よさ、それによる愛着については嫌というほど語ったかと思います。それに対するスパイス、時によっては劇毒―—学級にいなかった生徒の半数は敵側に回るという要素が最大の特徴です。

一周目はそれほど、キャラクターについての知識はなく、たとえアミッド大河にその命を散らせようとも、ほとんど気にならないかもしれません。しかし、二周…三周…と、その人となりや仲間であった時の活躍具合がプレイヤーの記憶に残り、どうしても討たなくてはいけないのに、そのことに対して強いためらいを覚えてしまうようになっていきます。

ローレンツ君のこと、最初は「ごめん」ぐらいしか思ってなかったよ…。

前周のお気に入りキャラを引き抜かないままにしておくと、強い後悔を産むことになります…。(3週目までは一切、他クラスから引き抜かない縛りをやっていましたが4周目で折れました。)

引き抜く条件を満たすと、国も思考もマッチしていないのに問答無用で仲間にできます。それをきっかけに、周回を重ねるごとにだんだんと感覚がマヒしてきたプレイヤーたちに対してある悪魔がささやき始めます。

「彼を引き抜いて彼女にぶつけたらどういう反応するかな??」

ゲームとしての必要性は全くありません。しかし、あまりにも会話のバリエーションが多く、かつそれぞれの思いというのが見えてきたとき、魔が差すといいますか、ついやってしまう人はいるわけです。

「フェリクスあたりなら祖国に弓を引いてもまだ自然では?」と自分の中の認知を微妙にゆがませてその選択を正当化しながら、たった数行の会話を見たいがために修羅の道を進ませる人が出てきます。

それぐらい魅力的な、仲間同士の敵対台詞。より強く深く暗く、キャラクターを知りたい方にオススメです。

○ ○ ○

ちらっと「認知」というワードを出しました。これはこのフォドラの人々を語る上でもちょっとしたキーワードとなっています。上記のような、業の深い行動をとれるのはプレイヤーがいくつものルートで多角的にキャラクターに対する情報を得ているからこそ行うことができます。

各ルートをそれぞれ独立して遊んだだけでは、実は判明していない謎や解決すべきことが、あるルートでは取り上げられてあるルートでは投げっぱなしで終わったりします。

4つのルートそれぞれで主眼に置かれているものが違うため起こることだとは思いますが、風花雪月では巧みに、その「誰が何を知っているか」がコントロールされていると思います。

この場合の「正しさ」とは何ですか!!

発端となるエーデルガルトと、彼女と組み合うレアについてはきっちりこの情報の組み分け整理が行われています。だから互いがわからず、互いの歩み寄る機会が存在しない。

すべての国と人々が足をそろえられることがベストなのですが、二つのトップは何か知っていても相反する内容だったり、秘匿すべき事柄が膨大だったり。その潤滑油になれる可能性があったディミトリやクロードもそれぞれ、国の次期トップたる苦悩と胸の奥にしまい込んでいるどデカイものがあります。

どうしても一つにまとめたくないという強い意志を感じました。
(主人公が3クラス全部見られればなあ…!)


あまりにも長く語りすぎました。しかも今回は良いトコ編です。悪いトコ編もそのうち書きますが、基本的にドはまりしたタイトルなうえ、ファンメイドの考察本やグッズを買うぐらいに語りたい作品なので悪いトコも過剰なほど言いすぎてしまうかもしれません。

悪いトコ編でもよろしくお願いします。

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