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Jo Maloneの感想1

香水沼に入り浸るきっかけとなったJo Malone LONDON。ボトルよし、名前よし、世界観よし! 値段はうんまあ…… 30mlの四角柱のボトルがとにかく好きで、分厚いガラスのずっしりとした瓶を手のひらで転がしていると、都電もなかが食べたくなってくる。

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わかりますかこの感じ? わからない? あっそう… というわけで、自分が持っているやつの感想を忘れないうちにメモしておこうと思います。持ってたけど手放したやつも含めるとJMは24 本(2021年11月時点)買ったことがあり、今回は手元に30mlボトルがある9点に絞って書きました。

いやちょっとまて、30mlの定価が8800円(税込)ということは、9本買えば家賃じゃん!! お前臓器2,3個失ってるんとちゃうんか? と気付いたあなたはとても鋭い。ところが現代にはメルカリという令和の羅生門があり、プレゼントで頂きましたが使わないので出品します→こちら(メルカリ)でお譲りいただきましたが出品します→こちらで買いましたが使わないので出品します→以下繰り返しの輪廻転生を経てもはや液体色すら変わってしまったサステナブル香水たちが定価という概念の崩壊した世界で売られているのです。

おっしオラもサステナで世界を救うぞ! と思った方に、わずかながら経験から得たアドバイスを申し上げると、中古で買う時は必ず裏の品質ラベルが日本語で、なおかつ<使用上の注意>の文言が入ったものを購入することをオススメします。

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↑左のやつね。今直営店で買うとおおむねこのラベルになっている。

ちょっと古いやつは右のように注意書きがなくて、全体的に余白多め。英字ラベルはバージョンが多すぎて、並行輸入品か偽物か素人には区別がつかないのでオススメしない。間違っても評価0の人や、評価に「偽物でした」というコメントがある人、日本語が怪しいアカウントからはマジで買わないでください。っていうかそもそも直営店で買ったほうがサンプルと巾着がもらえてお得なんだよね。

それでは買った順に思い出を書いていきます。香りのレビューですらない場合もあるけど大目に見てください。

ポピー&バーリー

初めてJo Malone LONDONでお買い物をするにあたり、下調べ無しで突撃するのはあまりにも無謀。膨大な種類の香りを前に「ワァ…」とちいかわ並みの知能になることは確定的に明らか。そこであらかじめwebのラインナップを眺めておき、アットコスメのレビューも丹念に読み、気になる香りに目星をつけておいた。「あたたかい麦の香り」と評判がいいポピーアンドバーリーと「電車でいい香りのお姉さんに香水を聞いてみたらこれだった」と行動派のレビューが光るレッドローズ。この2本にしよう。ポピーはともかく明らかにローズはアタイのガラじゃないけど… 電車で見知らぬ人に使ってる香水を確認するって相当じゃない? 香水ってその人自身が目指すイメージみたいなものというか、とてもパーソナルな部分だし、重さ的には下着の色を聞くみたいなもんだよね。昭和みたいに人間同士の距離が近かった頃ならともかく、令和の冷凍都市でここまで言わせるほど人を突き動かす香りってどんなんだろうと思ってこの2つに絞りました。

とりあえず入手。自分、たなか麦のペンネームでやらせてもらってるんで! と麦の香りに期待してシュッしたら、良家の令嬢のような、濃ゆい石鹸風の上品ポピーが数時間続く。ラストに麦わら帽子のような薄甘い香りとコットンのポワポワ感が多少出てきて、最初からこの部分だけ欲しいッと思った。しかし、学園一のお金持ちで才色兼備のお嬢様がいきなりドレスも靴も脱ぎ捨てて木綿の下着のまま麦畑に走っていくかのようなこの急展開は一体何なのか。思うに、これは一人の人物の香りじゃなくて、一つの物語を表しているんじゃないかな。

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赤く可憐なポピーは憧れの赤毛の女の子。一緒にダンスするタイミングを伺って伺って伺って、触れられないままその姿だけ目に焼き付いて、結局最後にチャーリーと踊るのは外見も中身も飾らない、麦わらとコットンシャツが似合うような素朴な友達ペパーミントパティ。でも最後までポピーの香り、赤毛の女の子への憧れは強く残り続ける。そういうことなんじゃないですか!? もうこれはPEANUTSのダンスパーティーをイメージした香水ってことでいいよ。

PEANUTSやスヌーピーの香水は今まで色々あったっぽいんだけど、それって本当にPEANUTSでやる必要ある? ZARAなんか「フルーティシトラス系オーデコロン。ネロリ、ジャスミン、ムスクのノート」ってお前どの場面のどのキャラのどの部分を表現してんねん。

そういうパッケージにスヌーピーがいるだけの商品にはもううんざりなので、PEANUTS大好きマークジェイコブスあたりが世界観に基づいたいい感じの香水を作ってくれないかな… 1万円のラバーキーホルダーとか出してる場合じゃないよ。

ワイルドブルーベル

そういうわけで、カウンターで店員さんにいきなり「ポピー&バーリーとレッドローズを買いたいのですが…」と言うと、流石に「こいつレッドローズってガラじゃないだろ」と思ったのか、まあまあ焦らずまずはいろんな香りを試していけやとフローラル系の優しい香りをいくつか並べてくれました。当時は今よりも更に嗅覚の解像度が低く、出してもらったほとんどの香りの区別がつかない中で、このワイルドブルーベルだけは「なんか他と違う!」と思うことができた。馴染みのない花の名前だが、香りはなんと我々もよく知っているあのスイカそのものだったのである。そこで、身の丈に合わないレッドローズは今後のお楽しみにして、残りの夏をこの香りと過ごすことにした。(シャクシャク)

レッドローズ

ところが、店を後にしてからも、やはり生花のようなみずみずしいレッドローズの香りが忘れられない。かといってカウンターに戻り「レッドローズもください」と言う勇気もなく、俺はコソコソとメルカリの門を叩いた… 4000円で新品同様の30mlッッ… 購入!! こうして手元の電車モナカは3本になった。かむかむレモンのような甘酸っぱ味のあるローズの香りを吹きかけると、PCディスプレイが煌々と光る深夜のオタクの六畳間が、暖かい日の光差すお花屋さんに早変わりする。あまりにも嬉しいのでPCの前に飾り、作業中もずっとボトルを眺めていた。なお、後に香水は光と温度差で劣化することを知り、今はクローゼットに閉じ込めている。次の夏までにコスメ冷蔵庫買いたい…

ブラックシダーウッド&ジュニパー

雨のロンドンまたは高級ホテルの香りと聞いて、ロンドンにも高級ホテルにも行ったことがない自分は何としてでも嗅いでみたいと思った。あわよくば、この手にまた新しいボトルを握りしめ、ロンドンの高級ホテルを自分のものにしたいと思った。ところが公式サイトを何回みても「ブラックシダーウッド」のブの字もない。は、廃盤…!? そしてまたメルカリの門を叩き、新品同様を4000円で… 買った。

一体どんな未知の世界が飛び出すのかと思ったら、こ、これはサンジェルマン34!!

サンジェルマン34

トップノート:シナモン、クローブ、カシス、ピンクペッパー、柑橘類
ミドルノート:アイリス、ヴァイオレット、ゼラニウム、ローズ、チューベローズ
ラストノート:サンダルウッド、アンバー、バニラ

ブラックシダーウッド&ジュニパー

トップノート:クミン、チリペッパー
ミドルノート:ジュニパー
ラストノート:ブラック・シダーウッド、モス

別に頭のペッパー以外被ってないな。解像度72dpiの鼻はこれだから… いや本当に! サンジェルマン34が見えたんだって!

ライムバジル&マンダリン

上記のブラックシダーウッドを買ったときについてきた。大学時代に付き合い始めて早○年、真面目でいい人なんだけど結婚するには決め手に欠ける…そんなパッとしない青年のような香り。柑橘もバジルも身近なので、全然心躍るところがない。けどそんな彼にもいいところはあって、まず食事の邪魔をしない。朝ハンカチに吹いておくと、お昼休み膝に広げたとき、ライムバジルがふわっと香ってお弁当を美味しくしてくれる。他の香水ではこうはいかない。帰宅時、はー疲れたと額のテカリを拭うとき、またハンカチから香るまったりした柑橘が癒やしてくれる。オシャレしたい時、夜にいい夢見たい時にあえてこの香りを選ぶことはない。それでも、人生の大半を占める平凡な会社員としての生活を影でそっと支えてくれる、そんな香り。

ホワイトジャスミン&ミント

web限定で100mlボトルのみという高いハードルが、余計に「どんな香りなんだろう?」と思わせるコケティッシュな存在。近所の高島屋でも試香テスターがなく、レビューやネットフリマ羅生門を覗いたりして所有と非所有の間を揺れ動いていた。そんなある日、なんとホワイトジャスミン&ミントの中古30mlボトルが3500円で出品されており、脳が指先へ「add to cart」の命令を出すよりも早く反射的に購入していた。

ところで、この香りの30mlボトルは2018年頃に廃盤になっており、つまりどんなに新しくても3年以上前のものということになる。まあ香水の劣化とか普段感じたことないし、色も無色透明だしで特に気にしていなかったのだが、いざ届いたボトルをプッシュしてみると。

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くっさ!!!!!

皆様は、セロハンテープを舐めたことがあるだろうか? 常にお腹をすかせていた小学生時代、一度は出来心で口に入れたことがあると思うが、最初の一瞬は甘く、あとから吐き気をもよおす苦味がドッと押し寄せてくる。今回手にしたホワイトジャスミン&ミントは、まさにそのような香りだった。上から最強戦士ドソンを重ねてもこの耐え難い臭みを殺すことが出来ず、混乱のうちにゴミ箱に葬ることとなった。一体何が起きたというのか? 何回洗っても取れないセロテープ臭にむせび泣きながら、脳内で3つの可能性を検証した。

1.もとからこういう香りである

2.偽物

3.劣化している

1について。これだけ癖の強い匂いだと、アットコスメで袋叩きにあうか、少なくとも1件は「臭すぎて死にます」みたいなレビューが投稿されているはずだが、そのような発言は一つも見当たらない。それどころか、「ずっと使い続けたい」「ミントの清涼感」「廃盤にならないでほしい名香」と賞賛の嵐。やはり本来の香りは別物と考えるべきだろう。

2について。一応品質ラベルが日本語で、英語ラベルの上から無理矢理貼られているわけでもない。スプレーは簡単には開けられない構造になっているから、中身だけ偽物ということも考えにくい。

ところで先日、サロンドパルファン2021に行ったときのこと。伊勢丹新宿のJo Maloneでクリスマス限定の香りを色々嗅がせていただき、そういえばと思って「web限定のホワイトジャスミンって試せますか?」と聞いてみた。すると、で、出てきた~~!!!!???? あるのか! 店員さんの手にはホワイトジャスミン&ミントの100mlボトル。「いまお出ししますね」とプラチナ色に輝く霧を吹き付け、差し出されたムエット… 果たしてその香りは?

「ずっと使い続けたい」「ミントの清涼感」「廃盤にならないでほしい名香」

な、なるほどお〜…! まさに納得の評価。マジで店頭で「なるほど〜」と言ってしまった。クリーミーで柔らかいジャスミンの中にきらりと光るミントの冷たさ。液体は透明だが、香りのイメージは乳白色の中に青や緑が輝くオパールだ。セロハンテープはどこに? と探してみると、ジャスミンのかすかな甘さとミントのほろ苦みになんとなくその原型を感じることができる。だが、本来はこんなにも美しい世界がこの小さなボトルに収められていたのだ。そして、どんぐりをこっそりしまった宝箱のごとく、時間とともに想像だにしなかった地獄へと変貌していく。そう、答えは皆さんもお分かりの通り 3.劣化 だった。

是非とも手に入れたい香りだが、果たして100mlの巨大サイズの地獄を抱え落ちする覚悟があるか? それとも3年間他の香水に目もくれずこれだけを一途に纏い続け使い切るか? これってもしかしてコスメ冷蔵庫を買えば解決する話??

ブラックベリー&ベイ

BBBっていう略称があるのかっこいいよね。「ロンブルダンローに似てる」というレビューを見て、ディプティックの中で一番ロンブルダンローが好きな私はさっそくゲットしてみた。っっって全然ロンブルダンローじゃないじゃん!(キレ)確かに強めの草とベリーなんだけど、こちらはベースにあるトニック臭が「俺はメンズだぜ」という主張をずーっとしてくる。10回に1回くらいメンズが留守にする日があって、そういうときはキレイな香り方をするのでかなり好き。

アールグレー&キューカンバー

サロンドパルファン2021で買った。その時の感想で「香りが即飛ぶので6プッシュもしちゃったミャハ☆ミ」みたいなことを書いたが、次の日吹いてみたら1プッシュでも6時間くらいは紅茶の香りがしていました。やっぱり鼻がバカだったんじゃん!! サロパの夜は早く寝ろ。ジョーマローンで一番好きかも… と書きましたが、下のネクタリンブロッサムと組み合わせると神になります。フルーツ系と重ねると無限の可能性があると思う。

ネクタリンブロッサム&ハニー

アールグレー&キューカンバーを買うときに「ネクタリンブロッサムと迷ってて…」と言ったら店員さんがサンプルをつけてくれた。施しの英雄! アールグレー&キューカンバーがとてもいい香りなのだけれど、少し茶葉の香りが物足りない時がある。そんなとき「そいやーコンバイニング(笑)とかあったな」と思ってこちらをシュッしてみた。

これは… この世のすべての食べ物の香りがする!!!

陽の光が穏やかな午後、芝の上でのティータイム。白いテーブルクロスと、淹れたての紅茶、きゅうりのサンドイッチ。そこにさらに運ばれてくるのは桃のタルト、チーズケーキ、ピザ、スパゲッティ、いいんですかこんなに? いやピザとスパゲッティは流石に無理あるやろと思うかもしれませんが、多分これはチーズ的な旨味感、それぞれの香りの間を埋めるような芳醇さがそう感じさせるんだと思う。

香水じゃないけどこれと同じ感想を抱いたことが一度あって、それはイタリア土産に貰ったコーヒーをビアレッティで初めて淹れたときのことだった。地獄のように濃いエスプレッソを牛乳で割り、一口。「この世のすべての味がする!!!」それはコーヒーとかカフェラテとかそういう既知のものではなく、フレッシュなサンドイッチ、フルーツケーキ、ピザパスタワイン大盛りごはん、そういった全ての美味しさが一瞬のうちに鼻孔を通り抜けていく感じ。

これまで全然コンバイニングとかしたことなかったけど、(フレデリックマルが「重ね付けとかありえないんですけど」って激おこしてたし…)ようやくジョーマローンの真髄と言われる意味がわかりました。素材&素材のちょっとゴツゴツして荒削りとも言える香り同士を重ねると、それぞれの個性がその隙間を補うようにして豊かさが生まれていく。セル画を重ねたアニメーションのように活き活きするというわけなんですね。ネクタリンブロッサムに関しては、単体でも酸味と葉っぱが桃を写実的に描いていて、そこらの中学生から香る安い消しゴム的な桃とは全く違う、大人の女性がつけても違和感のない1本だと思います。

というわけで、9本も感想を書いたら超長くなっちゃった。コンバイニングは全然したことなかったけど、アールグレーのせいでまた沼の深みが増したような気がします(ゴボゴボ)まだ他にも感想を言いたい香りがたくさんあるので、また書きたいと思います。

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