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東京オリンピック ボランティアドライバー体験記23

武道館で車内で待機していたら、小一時間でキューバ人が帰ってきたので、選手村に戻ることにした。戻ったら今日の任務は終わりだ。早めに帰りたい用事もあったのでちょうどいい。

ナビは事前にセットしてあったので、発車すればすぐに案内が開始される。しかし私はここで油断した。来た時のことを忘れていたのだ。

ここに来た時は、高速の料金所を降りてすぐだった。だから帰りもすぐ高速に乗るであろうことを予測しておくべきだったのだ。油断していた私は、あっさりと代官町の入口を通り過ぎた。だって武道館からあまりに近いのだ。遠く離れていく入口をむなしく後ろに見送り、私はやれやれと思いながら車を進める。するとナビは高速を諦めたようで、下の道を使うルートを探索した。

それからが大変だった。私はよくわからない下の道を、ナビの言う通りひたすら走行した。言う通りに走行したなら、まだよい。さっき高速を乗り損ねたように、ナビの指示がよくわからないことがあるのだ。銀座の辺りで道がよくわからず、ナビに従って入ったつもりの道が通行止めであったらしく、係員に止められてUターンした結果、またぐるっと回って同じ場所に戻ると言う、今日国立競技場でやった悪夢の再現のようなことが繰り広げられた。もう同じところをぐるぐる回るのは避けたい。

そこのポイントをようやく抜けて、いよいよ選手村が近い、という段になっても、選手村にたどり着けない事件が起こった。なにせ私が選手村まで運転して帰るのはこれで二回めだ。一昨日幕張メッセに行った時は、違う道だったし、昨日のジョージア人送迎の帰りは、舞浜から田中さんに運転してもらった。だから銀座方面から選手村に戻るのは初めてだ。右折レーンに入るのが早すぎて、一本前で曲がろうとした。よくよく考えたら、そこを曲がって直進すれば、ナビの指示通りではないが選手村に着いたのだ。でもナビが例によって大会専用ルート優先で道を再探索するものだから、ものすごく遠くまで迂回しないと元に戻れなかった。

キューバ人は、あとほんのちょっとでゴール、と言うところまで漕ぎ着けて、また迂回しだした私にズッコケたことだろう。私だって、あとちょっとでゴール、と言うところでたどり着けない悲劇に、泣きたくなった。

ようやく選手村に戻ったこの日、キューバ人にお礼を言われることはなかった。まあ向こうにしてみても、とんだ災難に遭った、くらいに思っていたことだろう。

でもまあ、一人で外国人を乗せたのは、今日が初めてなんだから仕方ないや、と私は気を取り直すことにした。選手村でチェックアウトして私は帰路についた。今日は国立競技場に行けたんだから、それでよしとしよう。そして明日は明日の風が吹く。

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