見出し画像

2020年センター試験生物基礎 解説と所感


― おことわり ―

 問題は適当にダウンロードしてくださいね。

― 全体的な所感 ―

 難易度は平年並みでしょう。問われている知識は概ね平易。実験問題も,読めば分かる。しかし,魚類の浸透圧調節の問題は教科書では参考扱いですし,躓いた受験生も少なくなかったように感じます。

***

― 個々の問題への所感とちょっとした解説 ―

第1問 A

問1 葉緑体に含まれる主な色素は,アントシアンではなく,クロロフィルaなどの緑色色素です。アントシアンは青色色素で,ナスの実の紫色などを発色します。

問2
 接眼ミクロメーター20目盛りで50μmなので,2目盛りで5μmです。

問3
 「動物細胞」というキーワードを見落とさないようにしましょう。動物細胞で水に次いで多いのは,筋肉を構成するタンパク質です。植物細胞でしたら,細胞壁やアミロプラストがある分,構成成分は炭水化物が水についで多くなります。

B

問4 「セントラルドグマの3つの過程と,それらに関わる主な酵素・装置の名前を答えよ」という問いに,答えられますか?複製・転写・翻訳。DNAポリメラーゼ・RNAポリメラーゼ・リボソーム。これに答えられるなら,解説は不要でしょう。

問5
 DNAではAとT,GとCが相補的に結合し、RNAではAとU,GとCが相補的に結合します。

問6
 まず,「病原性のS型菌」というキーワードを確認します。ネズミは発症しているので,体内からS型菌が得られることは容易に想像がつきます。「分化」は細胞ごとに役割分担がある多細胞生物の話で,肺炎球菌には使いません。形質転換の原因…つまり遺伝情報の本体と目される物質はDNAです。タンパク質を分解させた抽出液の中には,DNAは残っていますから,形質転換が起こると考えられます。


第2問 A

問1 淡水魚は体外が真水なので,体外から体内へ水が侵入します。そのままではむくんでしまうので,尿として水分を排出します。このとき,体内の塩分は大事なので,濃い尿を出すわけにはいきません。淡水魚は,薄い尿を大量に排出します。一方の海水魚は,体外が海水なので,体内から体外へ水が出ていきます。そのため,海水を飲んで塩分を排出する必要がありますが,あいにくと魚の腎臓は哺乳類の腎臓に比べると“性能”が低く,せいぜい自分の体液と同じくらいの濃さの尿しか作ることができません(魚類にとってはその性能で十分なのです)。このことと,問題文中にある「淡水魚の尿の塩類濃度≒海水魚の体液の塩類濃度」という条件から考えます。

問2
 ミトコンドリアが合成しているのはATPとしていいでしょう。続く問題文の中で「そのエネルギーを~」ともあるので,ATPで決まりです。淡水に包まれている淡水魚は,体内の塩分をなるべく保持しなければならず,塩類細胞は体内に少しでも塩類を取り込む向きに機能します。

問3
 まず,コイが淡水魚,カレイが海水魚であることを確認しておきましょう。海水魚であるカレイが沼で釣れたということは,その場の外界の塩類濃度(横軸)はコイもカレイも生存できる塩類濃度であるはずです。グラフを見て,コイもカレイも生存しているのは0.9%のところですね。で,どうやらカレイは海水も,淡水でも生存できるようです。それはつまり,長期間生存できる外界の塩類濃度のレンジが広いということです。ケがカレイですね。

B

問4 図を見た瞬間にPが樹状細胞,QがヘルパーT細胞,RがキラーT細胞と答えられて欲しいものです。自然免疫の担い手である樹状細胞は,記憶細胞にはなりませんね。

問5
 ①:誤文。一番上のグラフから,抗原を加えていないと抗体産生細胞の数は増加していないことが分かる。②:誤文。上から二番目と三番目のグラフから,B細胞以外のリンパ球がある方が,抗体産生細胞の数が多いことが分かる。③:誤文。上から三番目のグラフから自明。一番上のグラフとの若干の差が気になるが,除去できなかったB細胞だろうか。④:正文。「B細胞を抗体産生細胞に分化させる細胞」は,ヘルパーT細胞。⑤:誤文。理由は②が誤文である理由と同じ(…なお,教科書レベルの知識で,グラフを読まずに④を選ぶことも,可能といえば可能です)。


第3問

問1
 各バイオームの代表樹種は覚えておきましょう。Googleの画像検索も利用して,写真と一緒に覚えておくとよいです。自分の住むところのバイオームが何なのかも考えてみたりすると,より知識が定着してきます。

問2
 脱窒作用(含窒素化合物→気体窒素)は分解者しかできないので,一次消費者から矢印の伸びているエは窒素ではなく二酸化炭素ですね。それさえ決まれば,二酸化炭素の排出と吸収の両方を行うオと,二酸化炭素の排出しか行わないカが何であるかが決まるはず。

問3
 ごくごく基本的なことなので,②を積極的に選びたいところ。ちなみに,ザゼンソウという植物をご存知ですか?発熱器官(ミトコンドリアが多い)をもっていて,雪を溶かして花を地面から咲かせるという超面白い生態をもつ植物です。

B

問4
 温室効果ガスは二酸化炭素,メタン,フロン。ウシのゲップには,ウシの消化管にいるメタン菌が作ったメタンが多く含まれているんだとか。

問5
 グラフを素直に読みましょう。サはグラフの平均変化率を,シは極大値と極小値の差を読みます。光合成が行われると大気中の二酸化炭素が減って酸素が増えるので,光合成が長く行われるほど,二酸化炭素が減り続けるということをイメージしてみましょう。

生物基礎 以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?