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カスタマーサクセスの青本を要約する~原則①正しい顧客に販売しよう

カスタマーサクセスを勉強しようと思ったときに、最も有名でおすすめされる本は「カスタマーサクセスの青本」だと思います。

しかし、このカスタマーサクセスの青本、翻訳のせいなのか少し内容がわかりにくいです。
実際のカスタマーサクセス業務を行っている方に向けて、本の内容を要約・解釈しわかりやすく表現する必要があります。
そこで、「カスタマーサクセス10の原則」の主要なものを取り上げ、カスタマーサクセスの現場で役に立つノウハウをお届けします。

▼カスタマーサクセス10の原則:解説記事をリンクでまとめております

カスタマーサクセス原則① 正しい顧客に販売しよう

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まず、カスタマーサクセス原則の一番始めに出るものは、「正しい顧客に販売しよう」です。
献身的なカスタマーサクセスの方であれば、おそらくこのようなことを考えるのではないでしょうか。

・お客様に正しいも正しくないもないんじゃないか?
・正しく顧客の定義ってなんだ?
・取引した顧客はすべて正しい顧客なんじゃないのか?

どんなお客様に対してもサービスを平等に提供し、ご満足いただくよう取り組むのがビジネスの正しいあり方です。

しかし、ここでの観点は、「そもそも私たちの製品は、顧客にニーズに合っているのか?」「顧客に間違ったものを提供しているのではないか?」というものです。
お客様が正しくないというよりは、自分たちのソリューションが正しくなかったのでは?という考え方です。正しくないにも関わらず、間違って販売してしまっていたとしたら…?

正しい顧客とは何か?プロダクトと顧客の合致

1カスタマーサクセス青本

上記の図は、書籍になかったので私のオリジナルです。
正しい顧客と、そうではない顧客を図で表してみました。
「ビジネスは課題解決だ」とはよく言われますが、特に法人のBtoBビジネスにおいては何らかの課題に対し、それを解決するために製品を購入します。
マーケティング、営業、人事、会計…企業には様々な業務領域があり、それぞれに対し「もっとこうなりたい」「ここを改善したい」といった願望や悩みがあります。
ニーズが大きく、そのニーズにバッチリなソリューションを提供している状態。これをProduct Market Fit(PMF/製品と市場の合致)といいます。
正しい顧客は、PMFが出来ているんです。しかし、正しくない顧客はPMFが出来ていません。

なので、正確には「正しくない顧客」の表現はあまりよろしくなくて、「弊社のソリューションに実力がなく、満足させられていない顧客がいる」くらいの表現をしたほうが良いかもしれません。

そして、そもそも全くニーズのない顧客に対しては、どんなに磨いた素敵なソリューションを提供しても、そもそも刺さりません。これはわかりやすく「正しくない顧客」だと言えるでしょう。

正しい顧客に販売しなければどうなるか?

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上記はあくまで仮の数字ですが、当然ながら正しい顧客(ニーズに対して合致している製品が提供できている顧客)の月次の解約率は低いはずです。
ニーズが強く、それにベストなソリューションが提供されて困りごとが解決されているわけですから、解約はされないでしょう。
しかし、ニーズが全くなく、ソリューションもずれている顧客に販売したらどうなるか。その先にあるのは、「そもそも困ってないしな…」「優先度は低いんだよな」と製品の利用率がどんどん下がってゆき、その結果としての解約です。

そもそも論をお話すると、ニーズが全くない、ソリューションがずれているにも関わらず、販売してカスタマーサクセスをしてしまっているという状態は、顧客にとって幸せでしょうか?どんなにベンダー側が努力しても、これは無駄な時間だったのではないのでしょうか?

そのため、まず第一の原則として「正しい顧客に販売しよう」と説いたのだと思います。どんなにカスタマーサクセスとしてのサポートや体験向上のノウハウを磨いたとしても、そもそも相手が間違っていたなら意味がないからです。

しかし、悲しいことにカスタマーサクセスの目標数値は「解約率」であることが多いため、「解約しやすい顧客からフォローをしよう」とアクションをとりがちです。その結果、そもそもサポートすべき対象として間違ってる(相手もニーズはないためさほど求めていない)顧客に対して、一生懸命にフォローをするというトンチンカンなことが起こりがちです。
すべての顧客に平等にサービスを提供するのはあるべき姿だと思いますが、解約しそうな顧客に過剰サービスをするのはカスタマーサクセスの原則ではありません。

「正しい顧客」を広げる努力

3カスタマーサクセス青本

しかし、企業は成長して売上を高め続けなければなりません。
特にカスタマーサクセスを組織として有するSaaS企業はベンチャー企業が中心のため、投資家からの高い成長期待に応えなければならないでしょう。

そこでするべき発想は、「正しい顧客を拡大していこう」という考え方です。
正しい顧客を広げていくためには、どうすれば良いのか。
これには、カスタマーサクセスのサポート力だけで取り組む話ではなく、製品機能の拡張やマーケティングメッセージの変更、価格プランの改善など、企業全社としての総合力が必要となります。

例えば超大手企業を「正しい顧客」にするためには、製品としてのカスタマイズ性やセキュリティ、コンサルティングや業務代行など手厚い人的サポート、他大手企業の安心できる取り組み事例などが必要になるでしょう。
書籍の中では、「業界」「企業規模」「事業」などの拡張について触れられていました。

業界や企業規模が変われば抱える課題も変わりますし、求められる製品・サポート・マーケティングも変わります。
次に、対象とし得る顧客を拡張しつづける、どのような顧客も「正しい顧客」として適切なソリューションを提供できる企業こそが強い企業だという話をします。

実はマスの顧客にサービス提供ができる会社こそが強い

カスタマーサクセスは既存の顧客をフォローアップするという業務の特性から、ロイヤリティを高めてファンの顧客を作ろうという考え方をしがちです。
しかし、書籍「ブランディングの科学」によれば、あらゆる顧客に提供できる商品を持っている(≒正しい顧客の範囲が広い)企業ほど、購買や利用の頻度が上がるというデータが出ています。

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ここから導き出される考えは、狭いファン顧客(正しい顧客ドンピシャ)の解約率を下げることより、広い顧客に対して価値を提供できる製品サービスを作る(「マス・カスタマーサクセス」とでも言いましょう)のほうが重要だということです。

そのため、ファン顧客を大切にして解約率を下げる、というアクションだけではなく・・・

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より広い顧客セグメントに対し、それぞれの顧客に対し受け入れる製品・サービスを作っていくという発想も必要なのです。それが、大勢の人に受け入れられ、認められる会社というものです。

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矛盾していることを承知の上で、お伝えすると、「正しい顧客に販売しよう。でも正しい顧客が狭く小さいのは恥じることかもしれない。正しい顧客を広げる努力もしていこう」が、カスタマーサクセスというよりは企業として正しい姿だと思います。
「正しい顧客に販売しよう」の原則はとても奥が深く、これを第一の原則としたことにはきっと何か意味があるのだと考えさせられました。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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