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2021年米国カスタマーサクセスの投資トレンド(ARR投資比率、CSOps、テックタッチ)

Gainsightが2021年にSaaS業界のリーダー企業を対象に、カスタマーサクセスの投資についてどのように考えているのか調査したアンケートの記事を公開しました。SaaS経営者やカスタマーサクセス責任者にとっては大変参考になる内容でしたので一部を抜粋してご紹介できればと思います。

①ARRの増加とともにカスタマーサクセス機能は効率化。ARRに対するカスタマーサクセスコスト比率は下がっている。

We found that companies with below $250M in ARR on average, spend 8-10% on CS, while companies above that $250M threshold spend an average of 3-5%, relative to ARR. Obviously, that percentage is going to go down as the amount of impactable revenue goes up. However, we also see efficiency gains as companies grow ARR with more mature CS functions that also accounts for that ratio going down.

日本語訳:
ARRが2億5000万ドル以下の企業では、CSに平均8~10%を費やしているのに対し、2億5000万ドル以上の企業では、ARRに対して平均3~5%を費やしていることがわかりました。 もちろん、影響力のある収益が増えれば、この割合は下がるでしょう。しかし、ARRが増加してCS機能が成熟した企業では、効率化が図られており、このことも比率の低下につながっています。

日本でも、ARRが高い会社ほどカスタマーサクセスの組織やITシステムは成熟しており、確かに人件費やプログラムコストが最適化されて下がってきているのかもしれません。
カスタマーサクセスのコストの大半は、カスタマーサクセス担当の人件費ですが、後述されるCS Opsやテックタッチへの投資が加速するにつれてコストの最適化が図られていくのだと思われます。

②ARR成長率30%以上の企業は平均8%のカスタマーサクセス投資をしている。成長率30%未満の企業は5%程度に留まっている。

Another interesting variable to consider when determining your optimal CS Spend: Revenue ratio is your growth rate. When comparing CS costs to ARR, companies projecting a 30%+ growth rate year-over-year are spending on average 8%. Companies experiencing less than 30% growth are spending closer to 5%.

日本語訳:
最適なCS投資比率を決定する際に考慮すべきもう一つの興味深い変数があります。企業の成長率です。 CSコストをARRと比較すると、前年比30%以上の成長率を予測している企業は、平均8%のコストをかけています。 一方、成長率が30%未満の企業では、5%程度の支出にとどまっています。

この記事の解説にはありませんでしたが、海外VCの記事では、優れたSaaS企業はカスタマーサクセスコストをARR対比15~20%投資から始め、徐々に効率化していき10%前後に落ち着かせるようにアドバイスしていると読んだことがあります。
そこから考えるとCSコストがARR比5%は少し小さすぎる。顧客体験・サービス体験に十分に投資が出来ておらず、成長を防いでしまっているという論理はわからないこともありません。

③CSオペレーション(CS Ops)機能への投資がトレンドになっている

One of the most consistent growth and investment areas that we see companies make is their CS Operations function. Organizations that historically had just a resource or two supporting extensive CSM teams are now focused on scaling these functions so that their CS team can continue to evolve as their business evolves.

日本語訳:
企業が最も一貫して成長し、投資を行っている分野の一つが、CSオペレーション(CS Ops)機能です。 これまで1、2人のリソースで大規模なCSMチームをサポートしていた企業は、ビジネスの発展に合わせてCSチームが進化し続けられるよう、これらの機能を拡大することに注力しています。

日本でもSmartHR様やクラウドサイン様などのSaaS先端企業では、CS Opsの投資の取り組みをよく聞くようになりました。
セールス領域では、営業企画・セールスイネーブルメントなどのポジションでSFA導入や組織専門化の支援をしていることがありますが、これに近い動きがカスタマーサクセス分野でもなされてきています。

④オンボーディングプロセス最適化(テックタッチ投資)とカスタマーサクセスチームの能力向上に予算投資

The last thing we asked was, “so how are you going to spend your CS money next year in terms of specific initiatives?” Analyzing the responses highlighted two big themes: 1) 82% are focused on optimizing the onboarding process for their customers to start driving value and achieving outcomes sooner, and 2) 75% are focused on the enablement of the CS team – in particular, performing more strategic activities and managing their portfolios more effectively.

"具体的な取り組みとして、来年のCS予算をどのように使いますか?" という質問をしました。 回答を分析すると、2つの大きなテーマが浮かび上がってきました。
1)顧客のオンボーディングプロセスを最適化して、価値の創出と成果の達成を早期に開始することに注力していること。
2)CSチームの能力向上に注力していること、特に、より戦略的な活動を行い、ポートフォリオをより効果的に管理することに注力していること。

元記事のグラフからは、1)に関してはテックタッチも織り交ぜたオンボーディングプロセスの自動化が進められているのではとイメージが出来ます。
海外ではSalesforce様の「トレイルヘッド」、日本ではSansan様の「Sansan Innovation Navi」、SmartHR様の「SmartHRスクール」などデジタルなテックタッチ基盤への投資が見られます。
また2)に関しては先述したCSオペレーション(CS Ops)機能の投資を指しています。
国内のSaaSベンダーはまだ若い会社が多いですが、シリーズBあたりでヘッドカウント(従業員人数)の事業計画を立てる際に、カスタマーサクセスの人数が膨らんでいることが経営者やVCの中で課題になっているケースが多いと聞いたことがあります。
本記事の①に記載しましたが、PMFを図る前後までは手厚いCSコストをかけながら、PMF実現後はCS Opsやテックタッチ含むCS合理化に進んでいく、といった動きは今後日本でも起きる動きとなるでしょう。

おわりに

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藤島 誓也:Twitterアカウント
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