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ベンチャー経営フェーズごとのカスタマーサクセスまとめ (シリーズA、シリーズB〜、IPO直前)

先日、カスタマーサクセスに関する下記のTwitter投稿をしたところ、カスタマーサクセスの方だけでなく、SaaSのビジネス・プロダクト職の方や企業経営者の方にも多くの「いいね」を頂きました。

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そこでこの記事では、ベンチャー企業の経営フェーズ別に考えるべきカスタマーサクセスの体制・やるべきことについて解説したいと思います。

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ベンチャー企業の異なる企業フェーズからカスタマーサクセスを考える

まず、前提として皆さんご存知であると承知のうえで説明をしますと、ベンチャー企業は会社によって「企業規模」と「時間軸」が異なります。
企業の規模が大きくなれば、カスタマーサクセスの人数も大きな組織になりますし、企業の経営期間が長ければその分カスタマーサクセスも成熟します。

企業フェーズから考えるカスタマーサクセスの体制づくり

ベンチャー企業の一般的な経営フェーズ

経営フェーズを理解するうえで、私もopenpageというベンチャー企業を経営しているなかで、非常に参考にしているのは、ProtoStar栗島さんのこちらの記事の下記の図です。

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ベンチャー企業は、エンジェルラウンド→シードラウンド→プレシリーズA→シリーズB、C、D…→プレIPO→上場と順を追って成長するもので、こちらの図はその資金調達タイミングごとでどのような状態になっているべきかの指針を与えるものです。後半に向かうほど売上(ARR)・資金調達額・企業人数が増えていきます。

SaaSのカスタマーサクセスに勤める人は、おそらくシリーズA、シリーズB~D、IPO前後の会社に在籍しているはずです。

2021年10月段階で企業名例で挙げるなら、シリーズAはログラス、シリーズB~Dはキャディ、プレIPOはアンドパット、IPO後はSansanといった企業群のイメージです。

当然ながらどの会社のフェーズに在籍しているかでカスタマーサクセスの状況も異なりますので、「今のフェーズであればこれくらいのCSの体制に整えるべき」「次のフェーズに備えてこんなCSの施策準備もしておこう」といった考え方でカスタマーサクセスに取り組むことになります。

ベンチャー企業フェーズごとのカスタマーサクセス体制まとめ

そして、私がいろいろな規模のカスタマーサクセス部門にヒアリングする限り、企業フェーズごとにカスタマーサクセスの体制を分析し、ProtoStar栗島さんの図に付け加えると、下記のような整理ができます。
(カスタマーサクセスで働く多くの方はシリーズA~プレIPOフェーズだと思いますので青囲みをしました)

企業フェーズから考えるカスタマーサクセスの体制づくり2

次に一つひとつの主要なベンチャー経営フェーズごとにカスタマーサクセスの体制がどのように整備されていくかを説明します。

シリーズAのカスタマーサクセス解説

シリーズAはPMFを果たして事業を拡大していく、というフェーズです。
この段階では、「カスタマーサクセス主体」としては経営陣が行っていたカスタマーサクセスを、一担当者が専任で担えるような体制を作っていくことになります。いわゆる一人目カスタマーサクセスです。
「CS用データ」としては、資金調達をするSaaSのベンチャー企業であれば投資家報告のためにプロダクトの利用状況についてレポーティングする必要がありますので、それに+αして現場のカスタマーサクセスの行動目標として使える指標を作っていくのがこのフェーズです。
また「タッチモデル」はテックタッチの導入はまだ難しく、人によるハイタッチが中心で、拡大過程の中でハイタッチの業務モデルを整備していくことになります。人件費を多く積むため、「CRC(カスタマーリテンションコスト:カスタマーサクセスに使うコスト)」はARRの20%程度となるでしょう。

シリーズB~Dのカスタマーサクセス解説

シリーズB以降は、ユニットエコノミクスが周りだし、上場へ向かって主力製品のオペレーションや計測体制を整えていく時期です。次なるマネタイズのため新規事業の構築も模索するタイミングです。

「カスタマーサクセス主体」は、最低でも4~5名のチーム体制になっていきます。ハイタッチ4名+Ops/テックタッチ1名、のような体制です。
カスタマーサクセスが10名くらいに膨らめばチームの中で役割分担もされ始める時期です。

役割分担例:カスタマーサクセス10名弱の場合…
ハイタッチ/オンボーディング4名、ハイタッチ/運用4名、ハイタッチ/地方1名、ハイタッチ/大手1名、テックタッチ1名、Ops兼務1名、編集兼務1名

この時期は顧客数もチーム人数も増え続けるため、顧客対応の効率化の一環で「CS用データ」としてのヘルススコアの実装を考え始めるタイミングです。(SFA、チャットサポート、動画などツール導入が進むのもこの時期のため、複数のツールを1つの分析基盤に整理して管理するということを意識しだします)
「タッチモデル」はハイタッチのみから、テックタッチを織り交ぜられないか考え出す時期です。WEBサイトの整備、メール配信環境作り、動画制作などデジタルのタッチポイントを取り組むリソースが組織内に出来始めます。「CRC」はいたずらにハイタッチのカスタマーサクセスをしていた時期から、業務整備、効率化、IT化、Ops対応、テックタッチ導入、顧客認知拡大、ドキュメント整備などの効果でARRの15%程度となります。

プレIPOのカスタマーサクセス

有名な企業ではSmartHRや、数年前のSansan、マネーフォワード、freeeのような大型のSaaSベンダーのフェーズです。業界内の知名度は高く、大型の資金調達をし、優秀な人材が集まっていると定評が出るような会社になっていきます。

「カスタマーサクセス主体」はチームのフェーズを抜け出し、30名~程度の”部門”となります。私が過去に在籍していたビズリーチも、50名~近くのカスタマーサクセス職が従事しており、部として大きな組織になっていました。上場間近になってくるとIRのための経営数値報告や大人数の組織運営のため、経営企画機能が強化されます。ゆえに、Opsや企画職系の人材がカスタマーサクセス組織に増え始めます。
下記の2020年段階のSmartHRの組織ですと、オペレーション、サクセスコンテンツ、データアナリスト、イネーブルメントといった役割の方がCSOpsユニットとして加わっているのがわかります。

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「CS用データ」に関しては、この時期になるとデータアナリスト/データサイエンティストが社内に在籍しており、社内システムにも強い人材が組織に加わるため、複雑なヘルススコア設計への取り組みが可能になります。また新規事業立ち上げなどで商材が増えることで、ヘルススコアを解約防止だけではなくクロスセルで活用するシーンが増えてきます。

「タッチモデル」としては、ハイタッチの人数が膨らむことで専門化とマネジメント(業種別、規模別、フェーズ別、エリア別等に区分されたチーム体制)の強化が図られるようになっていきます。
加えてサービス強化としてのテックタッチの領域も増え、WEBサイト・メディア・コミュニティ・メールマガジン・動画・ウェビナーなど広範囲にわたったデジタルコンテンツが充実し始めます。
このように主力事業で既にカスタマーサクセスが立ち上がっているため、既存リソースを活用して新規事業のカスタマーサクセスを早く立ち上げることも同時に求められます。

「CRC」は顧客の認知度が抜群に上昇し、カスタマーサクセスを行うためのオペレーションや体制が相当充実することでARR比率が下がり始め、ARRの10%程度となっていきます。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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