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カスタマーサクセス「テックタッチ」入門~失敗しないテックタッチの始め方

カスタマーサクセスを始めたばかりの方から、「テックタッチってどうやればいいんですか・・・」と率直な相談を頂きましたので、この記事では”はじめてのテックタッチ記事”としてテックタッチの始め方について解説します

テックタッチ:3つの分類

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まず、テックタッチにおける「テック」の部分を独自に整理しました。
テックとは「ITツールやデジタルの接点」を指しており、こちらの3つに分けられます。

・プロダクトが自動的にタッチする「①プロダクトタッチ」
・人がITツール操作しながらタッチする「②ツールで人がタッチ」
・デジタル上のコンテンツでタッチする「③コンテンツタッチ」

どちらも「デジタルで顧客と接点を持つ」という点では共通です。

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ですが、私の解釈では③のコンテンツタッチこそ、カスタマーサクセスにおけるテックタッチだと考えております。
①②は広い意味で言えばたしかに、テックタッチなのですが、どちらかと言えばカスタマーサポートの領域のほうが近いでしょう。

「カスタマーサポート」と「カスタマーサクセス」を整理させてください。

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カスタマーサクセスとは、ITツールの「設定」「利用」を超えた、顧客の「成功」にあります。単に設定や利用をサポートするだけでは、カスタマーサクセスとは言えず、カスタマーサポートのほうが意味合いは近いでしょう。
言い換えれば、カスタマーサポートが土台にあってこそ、カスタマーサクセスが可能になるとも言えます。

どちらかが上という話ではありませんが「カスタマーサクセス」のほうが到達点としては深く、より長い伴走が必要となるでしょう。

ラーニングピラミッド:人はいかに学習していくのか

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カスタマーサクセスに至る長い道のりにおいて念頭に置きたいのは、学習理論で有名なラーニングピラミッドです。
すでにご存知の方も多いと思います。講義や読書による学習よりも、人に教えるような学習のほうが定着がしやすいという理論です。

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この理論、ポイントとしては何もインプットがない中で、いきなり人に教えることは出来ません。
たとえ人に教える立場の教師や学者であっても、土台にインプットとなる学習があってこそアウトプットが出せるのです。
つまり、上から順番にたどってこそ、人に教えられるだけの知識と経験を身につけることが出来るのです。

カスタマーサクセスにおいても同様に、成功するアウトプットを出すためには、どのようなインプットが必要なのか?の観点で提供コンテンツを組み立てていくべきです。

カスタマーサクセス版ラーニングピラミッド

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カスタマーサクセスに置き直した際のラーニングピラミッド「カスタマーサクセス版ラーニングピラミッド」なるものを作成しました。
こうして整理すると、顧客が成功に至るまでにカスタマージャーニーもイメージしやすいはずです。

このラーニングピラミッドに沿ったカスタマーサクセスのストーリーは下記のようなものになります。

まず「導入マニュアル」で操作や設定を学ぶ。次に「ウェブ記事」「ウェビナー(ウェブ動画)」で自社の課題ややりたいことに合わせて学びを深める。他社の「操作事例」やベンダーが提供する操作のTipsなどを吸収し製品の理解度を高めていく。
そのうえで同じツールを導入しているユーザー同士の「コミュニティ」イベントに参加し、意見交換の中で利用方法を掴んでいく。
そうした努力が実を結び、期待どおりの成功「カスタマーサクセス」が実現される。自らの成功事例を「ユーザー会」など企業主催のイベントで発表する。

ユーザー様が順番を追ってツールの理解を深めていき、教えられる側から教える側へ成長していく姿がイメージできると思います。

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では、これらのコンテンツの置き場所(利用するデジタルチャネル)はどこになるのかというと、「メール」「CMS(既存顧客向けサイト)」「コミュニティ」に大きく分けられます。
メール、WEBサイト、コミュニティサイト(SNS)のデジタル接点を築けるようツールを活用することになるでしょう。

テックタッチ事例:Sansan様

ツールの利用においては、Sansan様のお取り組みが具体的なツール名も挙げていらっしゃったため、参考事例としてわかりやすいです。
Sansan様はデジタルの接点をすべて「Sansan Innovation Navi」というサイトに集約し、このサイト上でSansanのカスタマーサクセスを目的とした記事・動画が閲覧でき、コミュニティにも参加ができます。

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図はSansan山田ひさのり様「カスタマーサクセスの戦略と戦術を考える」より

※上記の図とHTMLのソースコードから解釈する限り、Sansan様はCMSはWordPressをメインとして利用しており、動画の管理はBrightcove Video Cloud、メール配信はMarketo、コミュニティ管理はSalesforceコミュニティクラウドを導入されています。
データ可視化(BI)はTableauにこれらのデータを集約してCSM担当が一元でチェックできるような体制を構築しています。

テックタッチ:気になるお値段

Sansan様のようにデータの連携を意識した体系的なテックタッチの設計はお金と工数はかかるのですが、基本的なテックタッチのツール導入であれば安価で済ますことも可能です。

■安価なテックタッチ設計の費用
メール:安価MAを使えば月5,000~2万円程度
CMS:ブログを使えば無料
コミュニティ:Facebookを使えば無料

■具体ツール例
メール:BowNow
CMS:はてなブログ
コミュニティ:Facebook

しかし、データの連携、リッチな配信、優れたUX、セキュリティなどを考える、Sansan様のようなARRが高い企業様であれば、これくらいお金をかけているのでは?と想定されます。

■成長企業のテックタッチ設計の費用
メール:月15万円~
CMS:月10万円~ ないし 制作費用300万円~
コミュニティ:月10~25万円
データ整備:専任の担当者を採用≒人件費発生

■具体ツール例
メール:Marketo、Pardot
CMS:WordPress、ブルーモンキー
コミュニティ:coorum、commmune、Salesforceコミュニティクラウド
※SmartHR様は、Thinkfic、Skilljarといった海外製LMSを使っているのを拝見しました。

テックタッチのROI、効果、目標設定、KPI(ここからは中級レベル)

では、これらテックタッチを導入する際の社内稟議で説明する導入効果や、実際の導入後の目標数値はどのようなものとなるのでしょうか。
カスタマーサクセスベンダー各社(HICustomer、coorum、commmune、pottos等)のLPの訴求効果から考えても、LTV(チャーン)ないし人件費の観点での効果判定になるでしょう。

①LTV(チャーン)ベース:
このツールの導入によりヘルススコア・稼働率が○%上げることを目標とする。これにより月次チャーンレートが○%下がる。そうすると社当たりの想定LTVが○円に高まる。社当たりLTV増加 - ツール費用を考えてもプラスになるため、このツールを導入したい。
※導入後はツールによるヘルススコアや稼働率の増減を見る

②人件費ベース:
現在、カスタマーサクセスの人数は○名で人件費が○円発生している。今の取引社数増加のペースを考えると、20XX年には○名のカスタマーサクセスが必要で人件費が○円に膨れ上がる。
ツールを導入すれば業務効率が20%上がり必要な人数も○名でよくなる。人件費換算で○円が浮く。削減できうる人件費-ツール費用を考えてもプラスになるため、このツールを導入したい。
※導入後はツールによる1人あたり担当可能社数、ないしツールのみでフォロー可能な社数を見る

後半、少し難易度が上がりましたが、テックタッチに用いるツールや、提供コンテンツのイメージ、テックタッチによるカスタマージャーニー、テックタッチの費用、テックタッチの期待効果などをお伝え出来たと思います。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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