序章 はじめに:人口減少問題に関する調査報告書 人口減少社会の展望と対策
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序章 はじめに:人口減少問題に関する調査報告書 人口減少社会の展望と対策

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人口減少問題に関する調査報告書 「人口減少社会の展望と対策」は公的データをベースとして、人口減少に伴う社会の変化をさまざまな角度から可視化することを第一の目的とする。また、コロナ禍による新たな変化の分析も加える。その上で、人口減少社会に耐え得る社会を築いていくための提言を行うものである。

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序章 はじめに

■本格的な人口減少社会に突入

  少子高齢化が続いてきた日本は、本格的な人口減少社会に突入した。厚生労働省の人口動態統計で初めて人口減少が確認されたのは、2005年のことだ。以来15年以上の歳月が流れたが、日本社会の未来図を正しく理解している人は多くはない。

 現状において、日本はかなり深刻な状況に追い込まれている。人口動態統計によれば、新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年の出生数は過去最少の86万5239人となった。一方、増加を続ける死亡数は138万1093人となり、戦後最多を更新した。差し引きすれば51万5854人の人口減少である。50万人台に達したのは初めてのことだ。

 国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の「日本の将来推計人口」の中位推計によれば、人口減少幅は年々拡大を続ける。年を重ねるにつれてどんどん悪化し、今後40年ほどで総人口は3割ほど減り、100年もしないうちに半分ほどとなる【図:序-1】。

序-1①総人口の将来推計

 日本は総人口1億2570万8000人を数える世界第11位の人口大国である。国連の世界人口推計によれば、人口減少が進んでいる国は少なからず存在するが、日本の減り方は深刻である。

 しかも、新型コロナウイルス感染症の蔓延で、2020年は婚姻数や妊娠件数が顕著に減った。2021年以降も出生数の減少スピードが加速する可能性は大きく、さらに厳しい未来が待っていそうである。

 社人研の推計通りに推移したならば、今後1000年ほどで日本人は地球上からほぼ姿を消す。少子高齢化とそれに伴う人口減少とは、国の存立さえも危うくする危機なのである。ほぼ姿を消すところまでに至らなくとも、総人口が3割近くも減った時点で、国の在り方は大きく変質することだろう。

 国家を作る国民そのものが、いなくなるのだ。短期間に次々と起こる幾多の社会課題とは比べようもない「国難」であることをまずは認識する必要がある。

 多くの政治課題には解決の道がある。世界を震撼させた新型コロナウイルスの感染拡大もワクチンや特効薬によって、いつか完全終息の日を迎える。国際紛争や自然災害だって人類の知恵が解決に向かわせる。

 しかしながら、少子高齢化に伴う人口減少は国民個々の価値観に基づいた人々の営みがもたらした結果であり、妊娠や出産といったセンシティブな問題については政府の意向は働かず、他人の干渉が入り込む余地はない。

 仮に、社会のムードや人々の価値観が変わり出生率が上昇に転じることになったとしても、人口減少に歯止めがかかるようになるまでには気の遠くなるような長い年月を要する。

■変えられない未来

 人口が減っていくことが分かっているのに、思うように対策が進まない背景には、変化の分かりづらさがある。毎年じわじわと進んでいくため、この数年で日本社会ががらりと変わってしまうようなことにはならない。多くの人はその変化に気付かず、危機感が醸成されづらいのだ。

 もう一つは、その動きの複雑さにある。社人研によれば、高齢者数のピークは2042年である。この先20年以上にわたって、総人口が減りながらも高齢者数は増大する時期が続く。2043年以降になると高齢者数も減少に転じるが、それ以上の規模で若い世代が少なくなっていくので、日本全体としての人口は激減期に突入する。

 若い年齢の人口ほど減っていくので働き手が不足し、マーケットが縮小する。税収は落ち込み、防衛や治安のための予算も確保しづらくなる。世代間の支え合いの仕組みとなっている社会保障制度も行き詰まりを見せるだろう。

 人口に関する未来予測は、すでにこの世に生まれ落ちた人々が毎年年齢を重ねることに伴う変化であり、大きくは外れない。日本社会における出生数の減少も、高齢者の増加も、人口の減少も、かなり遠い将来まで大きくは動かし得ない「変えられない未来」なのである。

 すなわち、人口が減少することを前提として未来を考えざるを得ないということだ。21世紀の日本人は、「前例なき時代」を歩むことになる。

 「前例なき時代」を生き抜いていく以上、その対応は手探りにならざるを得ない。こうした場合、最も重要となるのは変化の先を正しく見通すことである。

 幸いにして、「変えられない未来」であるがゆえに、先読みはしやすい。人口が減るにつれて、さまざまな課題が浮上する。例えば、2022年には団塊の世代が、大病にかかりやすくなる「75歳以上」となり始めるので医療費や介護費の急増が見込まれる。認知症を患う高齢者や一人暮らしの高齢者の増加は介護離職を招き、企業活動に少なからぬ影響を与えるだろう。

 本調査報告書は、一般社団法人オープンイノベーション政策プラットフォームの委託に基づくものである。社人研の中位推計や政府などによる公的データをベースとして、人口減少に伴う社会の変化をさまざまな角度から可視化することを第一の目的とする。また、新型コロナウイルスの感染拡大によってもたらされる新たな変化の分析も加える。その上で、人口減少社会に耐え得る社会を築いていくための提言を行う。

 本調査報告書が、政策立案に携わる多くの人の参考とならんことを願う。

                           2021年3月31日

                 一般社団法人人口減少対策総合研究所
                          理事長 河合雅司

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むかしむかし民主党が政権交代したときに「プラトン」公共政策プラットフォームというシンクタンクがありました。 令和時代に「ゼロからオープンな政策プラットフォームをつくる。」を目的にゼロプラをはじめました。