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【黒尾鉄朗.꒰ঌ夢小説】君と描くバレーストーリー 第1話 「新たなスタートライン」

【黒尾鉄朗.꒰ঌ夢小説】君と描くバレーストーリー

第1話 「新たなスタートライン」


朝の冷たい空気が頬をかすめる中、鈴木鈴は通学路を急ぎ足で進んでいた。新学期が始まり、学校生活にも少しずつ慣れ始めてきたものの、まだ知らないことばかりだ。鈴木は何か新しいことが始まる予感に胸を躍らせながらも、不安と期待が入り混じった複雑な気持ちを抱えていた。

学校に着くと、教室はまだ静かで、早めに登校した生徒たちがそれぞれの席で談笑している。窓から差し込む朝日が教室を柔らかく照らし出し、温かい光が床に反射している。鈴木は自分の席に荷物を置き、今日の授業の準備を始めた。

その時、教室のドアが開き、黒尾鉄朗が現れた。彼の存在感は一際大きく、教室内の空気が一瞬変わったように感じられた。黒尾はゆっくりと鈴木の方に歩み寄り、彼女の目の前で立ち止まった。その表情にはいつものような冗談めいた笑みが浮かんでいるが、その奥には何か真剣な意図が感じられた。

鈴木は一瞬戸惑いながらも、黒尾の視線に引き寄せられるようにして彼の話を聞いた。何が始まるのか、これから自分がどんな役割を果たすことになるのか、鈴木の心はドキドキと高鳴っていた。

黒尾「あー…音駒バレー部にマネいないんだよねー……練習の合間にでもいいから入ってくんね?……クダサイ」

鈴木「ぇええ!?」

黒尾の唐突な申し出に、鈴木は驚きの声を上げた。音駒バレー部のキャプテンとして知られる黒尾が、真剣な表情で頭を下げる姿に、鈴木は一瞬、自分が夢を見ているのではないかと疑った。

鈴木はその場で固まり、心の中で考えが渦巻いた。自分が音駒バレー部のマネージャーになるなんて、全く想像していなかった。女子バレー部のエースとしての立場と、自分が果たして男子部員たちをサポートできるのかという不安が頭をよぎる。

しかし、黒尾の頼み方から彼が本気であることが伝わってきた。彼の目には決意が宿っており、その頼みが単なる冗談や気まぐれではないことがわかった。鈴木は深呼吸をし、心を落ち着けた。

「やるしかない」と心の中で決意を固め、鈴木はゆっくりと頷いた。音駒バレー部のために自分ができることを全力でやろうと心に決めたのだ。これから始まる新しい挑戦に、鈴木の胸は高鳴っていた。

研磨(なんで、そんなにオドロく……?)

鈴木「音駒の男子バレー部って、”そこそこ”強いって聞くから、ドベ感覚なアタシなんかが入っていいのかな……って!」
研磨(”そこそこ”……)
黒尾「ドベなの!?キミ!……うーん、そーだね。」

「「強いよ、”俺ら”」」

鈴木の言葉に、一瞬、静寂が訪れた。研磨は心の中で鈴木の「そこそこ」という評価に引っかかりつつも、彼女の正直さに感心した。黒尾は一瞬考え込んだが、すぐに笑顔を見せた。

「まぁ、そんなことは気にしないで」と黒尾は軽やかに言い放った。「音駒はチームワークが大事だから、誰か一人のスキルだけで決まるわけじゃないし。君がドベだろうと、やる気があれば大歓迎だよ。」

鈴木はその言葉に少し安心し、しかしまだ不安を完全に拭い去ることはできなかった。彼女はバレーの経験が豊富で、女子バレー部での実績もあるが、男子部でのサポートが果たしてできるのかと自問していた。

研磨はその様子をじっと見ていた。彼の鋭い観察眼は、鈴木がただの「ドベ」ではないことを感じ取っていた。彼女の内に秘めた情熱と献身が、音駒バレー部にとって大きな力になるかもしれないと、研磨は心の中で予感していた。

「それに、君が入ってくれたら、もっと面白くなるかもしれないしね」と黒尾は続けた。「練習の合間にでもいいから、ぜひ力を貸してほしい。」

鈴木は再び深呼吸をし、小さく微笑んだ。

鈴木「……ヨーシ!やるからには、やりまーす!」

鈴木は大声で叫んだ。

黒尾「ウオ!?」
研磨「ウルサッ……」

黒尾が突然驚いた声を上げたことで、その場の空気が一変した。周囲の生徒たちが一斉に振り向き、何が起こったのかと興味津々に見守る中、黒尾は慌てて何かを拾い上げた。研磨はその騒動に対していつもの冷静な態度で、わずかに眉をひそめる。教室のざわめきが徐々に収まり、再び日常の時間が流れ始めた。

黒尾「……いい粋じゃねーの。今日から宜しくな!”すずりん”!」

鈴木「すずっ……!?」

研磨「鈴木鈴だから、でしょ……」

鈴木「あはは!うん、よろしく!」

黒尾と研磨が鈴木にあだ名をつけたことで、教室の雰囲気が一瞬和んだ。新しいニックネームをもらった鈴木は少し照れた様子で笑顔を浮かべた。教室内の他の生徒たちも、このやり取りに微笑みを浮かべ、緊張感が解けていくのが感じられた。

窓から差し込む朝の陽射しが、教室の中を柔らかく照らしていた。黒尾は、鈴木とのやり取りに満足げな表情を見せながら、自分の席に戻った。研磨はその横でスマホをいじりながらも、黒尾の楽しそうな様子に静かに微笑んでいた。

鈴木は、新しいあだ名に慣れるために、何度も「すずりん」と口の中で繰り返していた。そんな姿を見て、周りの生徒たちも温かい目で彼女を見守っていた。新しい一日が始まり、クラスメイトたちは新しい仲間との日常を楽しみにしているようだった。

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