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「うつ病」の再発を防ぐ安全装置

コマツはうつ病エピソードを社会人になってからでも3回繰り返したし、高校時代の不登校(高校1年の3学期は全休→高校2年の4月から何とか再度登校できるようになった)の際も抑うつ状態だったのは確かなので、筋金入りのうつ病体験者です。
で、『「薬だけ」ではうつ病は治らない』(23/07/03)にも書いたけれど、移住して働き方を変えることで、寛解に持っていくことができた。今は、抗うつ薬も睡眠薬も内服せずに、まずまず仕事も趣味も楽しめる生活ができている。
なんですが、つらつらと振り返ると、環境を変えるだけでは充分ではないのではないか、と思う。再発しないですむようになった秘訣の2つ目は「自分の中に安全装置が確立したこと」じゃないか、と思うのです。

ほら、湯沸かしポットとかで過熱しすぎたりすると、自動的にスイッチが切れるように設定されているのってあるじゃないですか。サーモスタットとかって言いますね。ああいう類の安全装置が、実は何重にも人間の中にも備わっています。さまざまな外界の変化とそれに伴う内界の変化をある一定限度内に収めて「生命が存続できるよう維持する」仕組みね。そういう仕組みを勉強するのが生理学という分野だ、と言ってもいいかもしれない。
けれど、たいていの人間は社会生活の中でそういう安全装置の限度をちょっとだけ越えて生活するすべを身につけてしまっている。たいていの動物は、体の中の信号にすなおに従って生活しているのだろうが。
そして、中には「安全装置の限度をいつも相当に越える生活」を続ける人間がでてくる。「安全装置の限度をいつも相当に越える生活」を続ける訳は人それぞれで、そこには色んな要因が絡まっている。で、ともかくそういう生活を続ける中で同時に起きているのは、体内のサーモスタット的なセンサーが壊れて働かなくなることです。

特に、昔は「AC=アダルト・チルドレン」、昨今では「毒親育ち」と呼ばれる人達は、小さいころからこのサーモスタット的なセンサーが壊れたままで生活していることが非常に多い。そりゃあそうです、常に緊急事態なんだから。生き延びるためには、とりあえずサーモスタット的なセンサーを働かせないで、目の前に次々と起きてくる事態に対応するしかない。
AC概念の産みの親で、自身もACでアルコール・薬物依存症者の子ども達の支援をしていたクラウディア・ブラックは『私は親のようにならない』(日本語訳のタイトル 原版のタイトルは”It will never happen to me”です)の中でACの特徴として以下の3点を挙げていますが、コマツも「そうそう、そうなのよ!」って思います。 
① 感じない   まともに辛い感情を感じていたら自分が壊れてしまうので感情センサーを切る
② 信じない   親をはじめ誰かを信用すると ロクな目に合わないから信用しない
③ 話さない   家庭の外でそういう話をするのは「恥」だし親が許さないから話さない

以前のコマツの抑うつエピソード再発パターンというのは、ちょうど「ゼンマイ仕掛けの人形がエネルギー切れでパタッと動かなくなる感じ」の精神運動抑制から始まっていた。実は、その前から睡眠の質が悪くなり、作業能率がすこ~しずつ落ち、食欲もなくなってきていたのだろうが、そういう自分の変化をキャッチするセンサーが壊れていたので、自覚的には「ある朝、どうにも身体が動かず、アタマも全く働かなくなっている」状態で始まる感じだったのだ。 これ、今思うと相当重症ですね・・・。

で、センサーが作動するようになって「あ、まずい。だいぶ疲れてる」「辛いなぁ」と自覚できるようになっても、それを周囲にSOSとして出せなければ意味がない。というか、「自分の内部信号を感じること」と「それをSOS・弱音として出せること」はほぼ連動しているように思います。
そして「SOS・弱音を出せる」というのは、環境との相互作用の結果です。 本人がいくらSOSを出しても、周囲がそれを受け止めて、適切に対応してくれなかったら、安心してSOS・弱音を出せるようにはなりません。
「うつ病」の回復には、いろんな要素が絡んでいます。

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