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パイロットはむきムキムキ?


 大学2年間で卒業に必要な単位の9割近くをとって、3年生になると大学へはほとんど行く必要がなくなりました。これからは勉強シフトです。数学が試験科目ですが、高校時代は理科系選択なのでなんとかなりました。英語も大学受験の時の問題集を引っ張り出して勉強しました。航空大の筆記試験はそんなに難しくはありません。大学受験レベルで良い。最近は物理とかあるみたいですが、理系ならばほとんど勉強しなくても受かるのではないかと思います。でも何が大変かというと、一度遊ぶことを憶えた大学生がまた勉強するには、強い意志が必要でした。僕はマンガは古書店に売り、TVのコンセントを抜いて勉強を開始しました。途中でそれでは気が緩むと見てしまうの事に気がついて、さらにガムテープで画面を覆って部屋の隅に反対向きに置いて、絶対見れないようにして勉強しました。一次試験の倍率は4〜5倍くらいだったでしょうか。無事、通過しました。

 2次試験は身体検査です。パイロットになるためには、航空身体検査の基準に合格しないといけない。目の機能とかバランス感覚とかもあるけど、運動機能を見ているものでは無いので、スポーツをしていれば有利とか、そういうものではない。航空大学校の同期でも、ラグビーをやって筋肉バリバリの人もいたけど、普通の人がほとんどでした。業界のことをよく知らないと、パイロットはさも体を鍛えてムキムキになっているといった間違ったイメージを持ちやすい。
 そういえば、僕もそうでした。僕は旅客機よりは戦闘機が好きで、映画「トップガン」のトムクルーズに憧れた時期もありました。映画「トップガン」では、戦闘機乗りのトムクルーズがムキムキの上半身を露わにしながらビーチバレーをするシーンが有名でした。とある航空身体検査に行った時、その時の問診医が自衛隊のパイロットの検査もしていた人でした。それで「戦闘機のパイロットとかは、みんなトップガンのトムクルーズのようにムキムキしているんですか」とワクワクして質問をしたら、「そんな事ないよ、ヒョロいのもいるし」というそっけない回答でした。後に職場で元戦闘機乗りの人達と仕事をしますが、確かに普通の体だし、顔もトムクルーズには似てない普通のおじさんでした。
 
 航空大学校の2次試験では、だいたい半分くらいの受験生が落とされていたと記憶しています。筆記試験の一次試験はともかく、二次試験の身体検査はどうにも対策がとれないし、頑張ってどうにかなるものではない。だから、そこで落ちた方はよほど悔しい思いをされていると思います。この先もそうですが、パイロットはなりたいからといって誰でもなれるわけではなく、身体的にパイロットになれないとか、それ以外の理由でもなりたいのになれない方が出てきます。志半ばで諦めざるを得なかった方たちのことは、常々心に残っています。

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