自社養成パイロット試験を受けた
航空大学校の試験を受けている同時期に、自社養成を受けていました。僕が大学生の時は就職活動は秋からでした。3年の秋から大手航空会社の自社養成パイロットの採用試験が始まりました。確か当時の自社養成パイロットの採用は日本航空のみで、書類審査を通過して面接に行きました。就職面接なので普通は黒い革靴がセオリーなのですが、その時は黒の革靴は持っていなくて、夜遊び用のワイン色の革靴しかありませんでした。くつ下を何にするかで迷って親に電話で聞いたら「くつ下の色は靴と合わせるのが良い」と聞いて、ピンクのくつ下を選んだ時点で終わっていたと思います。初めての就職面接で面接用のスーツも靴も用意していない僕にも非がありますが、初めて就職面接に望む世間知らずの息子にピンクのくつ下を提案する親もどうかと思います。僕もなんでそんな格好で面接に行ってしまったのか。JALだから?ワイン色の革靴なら色が会社のロゴの色に近いとでも思ったのでしょうか。今思うと、当時の世間知らずの僕をぶん殴ってやりたい気持ちです。
そんな格好の僕にも、JALの採用担当は優しかったです。面接官たちは暖かく対応してくれました。僕は自分の格好が壊滅的におかしい事に気がつかないで、なんちゃってテニスサークルで初心者でもテニスが上達する方法を見つけましたとペラペラとしゃべって、挙句のはてに「内定の通知は、航空大学校の合格通知の前ですか、後ですか」などと、JALと航空大学校を天秤にかけるような事まで質問する有様でした。
面接が終わって控室に戻ると、他の受験生はは緊張した面持ちで、きちんとしたリクルートスーツに黒い革靴で大人しく座っていて誰もしゃべりません。「みんな元気ないな、面白くないな」と思ってしまいました。それで控室を担当していた女性職員に「面接をしてくただいた機長が大地康夫に似てますね」と言って彼女の笑いをとって、ちょっと点数稼いだかなと思っていました。まるで空気の読めない振る舞いです。それほど浮かれていました。
世間知らずな僕は、羽田空港でお土産を買って大学に戻り、当時の彼女と大学で待ち合わせしました。かっこいいスーツ姿を見せようとしたのかもしれません。会って渡そうとしたら
「何その靴?何その靴下?」と絶句されて、初めて自分の格好がおかしいことに気がつきました。
「え?おかしい?」
「え?おかしくないの?」
ワイン色の革靴にピンクの靴下で紺のスーツを着て、ワイン色の皮の鞄から(カバンと靴は同じ色でと、セオリーは守ったつもりでした)、羽田空港のお土産なのに何故か福岡のピンク色の明太子プリッツを出した時の光景を、彼女は今でも鮮明に覚えているそうです。
当たり前ですが、その時はあっさり落ちました。
でも、まるで何とも思いませんでした。2次試験を合格した僕は、航空大学に受かる事しか考えてなかった。
次回は初めて飛行機を操縦した3次試験について書きます。