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山にもらったこと 「生きているから行ける天国がある」 〜五色ヶ原・薬師岳縦走編〜

「天空の楽園」に向かうか、「最後の秘境」を選ぶか。
いずれも標高2500メートル越えに広がる、想像では超えられない大地、
「五色ヶ原」と「雲の平」。迷ったあげくその夏の私は、山友の“立山から五色・スゴ・薬師を経て折立へ抜けよう”という素敵な誘いに乗って「天空の楽園」を選択。その前月は嵐に見舞われた「薬師岳」のリベンジを含む、3泊4日の旅が始まりました。

1日目は山友と室堂で落ち合い、雄山だけ登って一ノ越山荘に泊まる、ゆるっとスタート。

思えば初めての立山の時も嵐で、三山縦走のつもりが雄山だけでギブ。
今回は風景のある雄山を体験し、頂上神社で旅の無事を祈願することも
できました。

翌日は、チングルマの綿毛に見送られながら、さあ「天空の楽園」へ。

ザラ峠、とはよく言ったもので、まさにザラザラの砂利道、しかも急登!
いつズルっと滑るかヒヤヒヤと一歩一歩、慎重に登り下りすると、やがて、
五色ヶ原を一望できる頂きに。遠く薬師岳、笠ヶ岳までくっきりと・・!

ぽつんと小さく五色ヶ原山荘が、早くおいでと手を振ってくれているようで、なんだかもう、だーっと駆け降りて行けるような気になってしまう、
危険すぎる美しさ。落ち着け、と逸る気持ちをなだめ、また一歩一歩。
やがて高原にたどり着くと、目前に雷鳥出現。なにキミ、道案内してくれるてるの?と信じちゃうくらい、ずっと私たちの前を歩いてくれて・・・

テント泊好きの聖地(らしい)五色ヶ原キャンプ場を横目で見ながら、これぞ五色ヶ原!のど真ん中へ。

草紅葉の走りがまるでお花のように見えて。花の季節はどれほどの美しさなのだろと、想像を超えて実感、感動。言葉では言い尽くせない風景に抱かれながらも、俗世からきた私たちは、やがて食欲を満たすことにモードチェンジ・・けれどいつものメニューが、ここでは別格の味になって(^^)

ああ、憧れの五色ヶ原!を体験・堪能したのですが・・実は
楽園はここだけでなかったんです。
翌日はアップダウンのキツさで名高い越中沢岳を経て、ちょっと風変わりな風貌のスゴ乗越小屋泊。計画的にここではかなり時間をとっていたので、
小屋名物の本格インドカレーなどいただきながら、のんびりと・・。

核心は翌日、下山する最終日。スゴ乗越小屋から北薬師岳、薬師岳を越え、太郎平を経て折立まで下る、11時間の行程。スゴ乗越小屋での時間が有りすぎたけれど、薬師岳山頂に朝、居たかったから、この時間割しかなかった。
早朝5時スタート、歩く歩く歩く。

そして北薬師岳頂上から薬師岳への稜線を見た時。ヤられました。ああ、
ここにもあったよ天国が。五色ヶ原とはまた違う、魂を魅了する稜線!!

左手山頂に小さく見える祠を目指して、慎重に、高揚していく私たち。
そして・・・

遠く儚く見えた祠に優しく迎えられ、言葉が出ない歓喜のひととき。

振り返れば、今歩いてきた稜線とその向こうに立山、剱岳。

行く先の彼方には、槍・穂を中心に悠然と広がる北アルプスの山々。

いつまでも、いつまでも、離れられない。

あの世の天国は、徳を積んだ人が行けるのだというけれど、
この世の天国は、生きていれば、誰もが行くことができる。

やがて心残しながら、頂上を離れ歩き出すと、
天使まで、姿を見せてくれたのでした。

(オコジョくん。こんなに可愛いのに、すごく獰猛らしい。笑)

@2020/09/11-14

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