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拉麺、襲来

42日目(11月18日)

朝から全力の走りを見せた。最後の信号が変わるやいなや私は駆け出し、三階の教室まで息をつかなかった。体中が熱を帯び、肺は今にも焼き切れそうだった。出席確認に息絶え絶えで返事をした後、キットカットを乾いた口に放り込む。冬に冷やされたチョコレートは軽やかな音を立てて、私にカロリーを供給する。これが今日の朝ごはんだ。
部活は6時半ごろに終わった。教室には私と、友達2人が最後まで残っていた。作業がきりの良い所まで終わり、どことなく高揚感に包まれていた。1人が口を開く。

「ラーメンを食べに行こう」
そこからは流れ作業のように単純だった。ひとつのムーブとして渋る動作はするが、各々が目的地までの時間や経路を調べ、財布の中身を確認する。もはや「いや俺どうしようかな…」の言葉までもが同意の意味にもとれてしまう。高校生はこれだから怖い。流れに身を任せてどこまでも行ってしまう。私はその流れが悪い方向に進まないことを祈っている。将来警察官になった私の引き金を、彼等に向けることは出来ればしたくない。
ラーメン屋に到着した。そこは前から友達から勧められていたラーメン屋で、今回ようやく訪れることができた。ちなみにその友達は今回同行している。
外観は「ラーメン屋」という感じだった。表現力が乏しくて済まないが、各々が想像するラーメン屋の平均をとったら丁度このラーメン屋になると思う。座席はカウンター席のみで、30代半ばくらいに見える男性2人がその向こうに立っている。店内にはスープの濃い匂いが充満し、“臭さ”と“濃厚さ”がせめぎ合っていた。ラーメンマンのオーラって多分あんな感じだと思う。食券を買い、席に座ると店主らしき人から麺の硬さ、スープの濃さなどの指定を聞かれたがよく分からなかったので、その前に注文を済ませていた友達を指差して「同じで」と言った。友達と来といて良かった。
ここまでで気づいたこと。そういうものなのかもしれないが、店員が全然笑わない。というかそういう雰囲気も出さない。確実に私1人で来てたら失禁していただろう。まあ、こういう所が結局一番美味いんだよな、と自分を納得させた。名店あるある、店主が無骨。
結論「めちゃくちゃウマウマデリシャス」。空腹だったのもあり、人生で初めてスープまで飲み干してしまった。濃ゆいスープが体の芯まで染み渡り、塩分&糖分が余すところなく吸収されていく。完全な背徳。ラーメンシンクロ率、300%。ミサトさん、もう戻れません。ATフィールドは完全に破壊されました。ロンギヌスの槍(固め濃いめ)。ファースト・インパクトは、駅前のラーメン屋で。

(この大空に 翼を広げ)

(飛んでゆきたいよ)

(悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ)

(ゆきたい)






#日記 #ラーメン #新世紀エヴァンゲリヲン

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