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ことばあそびで笑っちゃえ、歌っちゃえ。ちょっとだけ泣いちゃえ。

「まどさんとさかたさんのことばあそび」(まどみちお・さかたひろお/文 かみやしん/絵 小峰書房)

こんにちは。
いつもお越しいただきありがとうございます。

言葉あそびやダジャレって、昭和の遺物みたいに思っていらっしゃる方も少なくないと思います。

IT技術の発展とともに、子どもたちにとって「遊び」の種類が昔よりぐんと増えたとおもうし、今や「AIは小説をかけるか?」…なんてことまで話題になる時代(詩も書けるんじゃないかっていう話も読みました😢)。

対して、芸人のダチョウ倶楽部さんの「押すなよ、押すなよ」のネタの意味と、意味が逆転するタイミングというものがAIに理解できるのか?っていう記事も読んだばかり。

わたし個人としては、人を心から喜ばせたり楽しませたりするのは、やっぱり人にしかできないんじゃないか…って思うんですが、みなさんはいかがでしょうか?

まどさんとさかたさんのことばあそび表紙

前置きが長くなりましたが、今日は昭和が誇る(?)言葉遊びの二大巨頭、まどみちおさんと阪田寛夫さんの共著である『まどさんとさかたさんのことばあそび』をご紹介したいと思います。

お二人の生年はそれぞれ、まどさんが1909年、さかたさんが1925年です。
かれこれ約100年前よぉ~。
そのセンスが今も子どもたちを笑顔にしている。
小学校の教室で、その愉快な光景を何度も見てきたわたしとしては、この本は古典として時代を超えてゆくんじゃないかと思えます。

「きまりことば」 阪田寛夫
ぽかぽか おひさま
そよそよ はるかぜ
てくてく あるけば
るんるん たのしい
えっちらおっちら さかみち
たらたら いいあせ
ごくごく みずのむ
へとへと おつかれ
ぺこぺこ おなか
やれやれ きゅうけい
ぎらぎら ゆうひだ
よたよた もどって
ぴんぽーん ただいま
むしゃむしゃ ごはん
じゃぶじゃぶ おふろ
ばたんきゅう おやすみ

まどさんとさかたさんのことばあそび②

「カケスのかけっこ」 まどみちお
かっけの カケスと
かっけに かんけいない カケスが
かけっこで
がけの かげ
かけに かけた けっか
けっこう けが ぬけかけた
おかげで かっけの カケスが
かっけに かんけいない カケスに
けんか しかけて
ケガニの けいかんが
かけつけたが
ひが くれかけて
よが あけかけて
けがの かけらも みかけなかった
かぜけ かげんの カが いっぴき
カキクケ コンコン してたっけ

まどさんとさかたさんのことばあそび③

この詩はどちらもヘビロテで小学校の読み聞かせで使わせて頂いたのですが、「かっけ」とか「カケス」とか「かぜけ かげんの カ(風邪っけ加減の蚊)」のほんとうの意味や姿がわからなくても、音の面白さで笑いがこみ上げてくる。
職人技だと感じます。

さかたさんの「きまりことば」も、特に小学校低学年には大ウケします。
日本語のオノマトペ(擬態・擬音語)の楽しさ、それらが引き出す意味の面白さに子どもたちは体を揺らして喜びます。
ラップのように魂が喜ぶんだろうなー。


まどさんは、戦争中、台北で船舶工兵隊に入隊。シンガポールで終戦を迎えました。
でもそれ以前の昭和9年、絵雑誌『コドモノクニ』の北原白秋選に詩を投稿。特選に選ばれています。当時、まどさんは20歳。
戦争に隔てられても、まどさんの童謡への愛は変わらなかった。2014年104歳で亡くなるまで、まどさんは子どもたちへ詩を贈り続けた。
この一貫性。百年の人生を貫いているひとつの想いに、ただただ畏敬の念を抱きます。

阪田寛夫さんは、敬虔なクリスチャンの裕福な家庭で育ち、東京帝国大学文学部を卒業。『土の器』という小説で芥川賞を受賞した小説家でもあります。
阪田さんといえば童謡「さっちゃん」のイメージが強いと思いますが、すぐれた児童文学や小説で数々の受賞歴があります。
阪田さんもまた、戦時中は17歳で学徒動員により中国の戦地へ出征しています。
阪田さんはクリスチャンでありながら、陰では「不良」であったと阪田さんの娘さんである内藤啓子さん(エッセイスト)が著書で語られています。

まどさんとさかたさん。
お二人に共通するのは、この戦争体験。
おかしみの中に、かなしみが隠れているような作品が多く、それゆえに日本人の心を強く掴むのでしょうね。

今回ご紹介した『まどさんとさかたさんのことばあそび』は、その評判の高さからシリーズ化され、現在では全5冊となっております。


「ほうちょうと まないた」 まどみちお
ほうちょうは
ちょうほうされて
とんとん とことこ
なんでも きざむ

だが それは
まないたが
まあ ないたんだ
じぶんの こえと
ほうちょうの こえと
はんぶんずつで

きりきざまれ
なきつぶれる いのちたちを
とむらいながらに

まどさんとさかたさんのことばあそび④


「ひねくれ ひにくる」 阪田寛夫
三重丸もらった作文を
ひねくれおばさんに みせびらかした
傑作でしょうと じまんしたら
第一等の作品を佳作(かさく)という
よみもしないで おばさんがいった
第二等は「傑作?」
二等はキサク
気さく?
奇ばつな作文
そのつぎは?
苦心の苦作
それから?
びりっけつの尻作(けっさく)よ
そんならぼくのは?
お前のは姑息(こそく)
カカカ、とおばさんはわらい
キクキク歯ぐきをむいたっケ
ところでおばさん コソクってなあに?




様々な切り口で表現される、めくるめく(?)ことばあそびの世界。

子どもだけでなく、大人だって口ずさみたくなるような作品ばかり。

コロナ渦で(人と話す機会がめっきり減って)衰え気味になったお口まわりの筋トレにも、こちらのシリーズ、いかがでしょうか?

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