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事務所・アトリエつくるのっていくらかかるの?って聞かれた時に見せるnote(デザイン・クリエイティブ系の人以外には参考にならないかも)

アラレグミ ヤマグチタクト(山口大空翔)です。
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先に断っておきますが、以下の文章はなるべく30代未満の社会人から学生に向けて書いています。例えば、会社を辞めて独立しようと思っている人や就職せずに自分でビジネスをしたいと思っている人の判断材料の一助になれば幸いです。

アラレグミと事務所の概略

2020年の2月。コロナ大流行の目前に株式会社アラレグミ を設立しました。何をやっているのかは、下記の記事に少しずつクロニクル式で追記しています。事業内容を一言で言うと、アカデミック特化型のクリエイティブ・エージェンシーです。
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2020年12月。若いチームなので、デジタル化やオンライン化にはすっかり順応して、当分はバーチャルな会社として運営して行こうかなと話していたにもかかわらず、逆張りで事務所兼ギャラリーを契約しました。
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はっきりいって、事務所でできることの大半はオンラインでもできます。正直そのほうが楽で、効率的で、経費も抑えられるのでお勧めです。なのに敢えて、しかもコロナ禍が続く今場所を持つことにした理由は、自分たちが手を動かすことでモノゴトを考えるタイプの人間だったからです。なので、タイトルにある通り、デザイン・クリエイティブ系の人以外には特に役に立たないメモだと思いますので悪しからず。

事務所を借りるまでのプロセス

基本的に普通に賃貸と変わりませんが、決めた理由と判断基準のメモを残しておきます。
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アラレグミ浅草事務所の立地についてはこちらからご確認ください。

<浅草事務所の賃貸物件>
場所: 浅草(正確には入谷)
賃料: 20万(税込)
面積: 60平米
間取り: ワンルーム(手前が土間、奥がフローリングの小上がり、キッチン、ユニットバス)
階数: 一階

【立地】
①よく資材を調達するお店へのアクセスがいいこと

秋葉原の電子パーツ街が近い。自転車で15分、電車でも15分。大型のホームセンター(豊洲スーパービバホーム、北千住ロイヤルホームセンター)まで車での移動時間が30分未満なこと。資材調達はどうしても1回で終わらないため、高頻度で行き来しても時間のロスが少ないことが最優先だった。とにかく買い物は何度も行くし、大変だったと言う教訓。

②メンバーのアクセスが最大限に効率的なこと
駅から徒歩15分を超えると夏は汗だく、冬はガタぶる、雨の日はやる気が0になると言う教訓から、駅からなるべく近いこと。中央線、山手線からの乗り換え効率が良い事が必須だった。それまでは新宿線西大島駅の最寄りを拠点にしていたため、絶妙にアクセスが悪かった。

③取引先とのフットワークを考慮すること
これはアラレグミ特有の問題だが、筑波大学やつくば市内の研究所との関わりが多いため、つくばエクスプレス沿線か、秋葉原駅への乗り換えが良いことが非常に大事だった。事務所に来てもらうことは現在の社会情勢的に全くないのだが、こちらからアクセスしやすいことは条件として盛り込んでいた。当初はリモートワーク的に考えて、つくば市内でも検討していたが、本業のために毎日東京に来ることになってしまうと本末転倒だったために泣くなく断念した。

④誰に話しても伝わる地名が良かった
町屋にアトリエを構えていた時も、西大島に拠点を構えていた時も、誰かに説明する際に、伝わりづらいことを機会損失だと感じていた。東京の人でさえぱっとわからない地名は地方の人にはもっとわからない。だから、浅草は非常に好適所で、日本中の人がなんとなくイメージできる上に外国の人でさえ聞いたことのあると言うインセンティブもある。伝わりやすいからなんなのかといえばそれまでなのだが、アラレグミの短い営業時間を最大化するためには少しでも情報を削減して、伝わりやすく好意的に覚えてもらえることは超超大事だと僕は考えていた。

【賃料と空間】
①グランドレベルであること

道路から一歩でアクセスができることで、気軽に立ち寄ってもらえる場所が良かった。これは自分たちにとっても大切だと考えている。道路を歩いてくると中で誰かが作業をしているのが見えるようにすることで週末にしか集まらない場所でも活気を作ることができる。浅草事務所の物件はおきな窓があることも最高の条件で、入り口土間部は普段は作業空間だが、一時的なギャラリーにしたり、簡易的なイベントもできるようにしている。この点はとにかく運とタイミングが良かった。

②木工など大きなものも作れること
3DプリンタやNCルーターなどデスクに乗るサイズの加工であれば一般的な住宅でも問題ないのだが、木材は2mや3x6サイズを取りまわせる空間がないとなかなか加工がしずらかったり、粉塵がまうので、片付けやすい空間であることが大切だった。木工と言われてもイメージがしづらいかもしれないが、令和においても、加工性と言う点で木は最強のマテリアルである。僕らは、紙やスタイロフォーム、段ボールもプロトタイプの試作にもまだまだ使う。もちろん最新のファブリケーション設備も使うが。どちらかではなく両方使うのが一番効率的だと考えている。

③機材を一望できる形で収納できること
当然のことだが、工具を一括で管理したり、機材を棚に収納できるだけで効率が非常に良い。とはいえまだまだ整理はできていないのだが、、、

④10人が一気に作業ができる広さ
西大島の拠点は普通の民家だったので、11畳の空間に机を2つ並べると限界だった。一度に5人も集まってしまうと窮屈で、ダイニングと、2階を使っても10人ではカオスの状態だった。今は900x1800の机を3台出して作業ができる。ただしカオスなのは変わらなかった。


ほんとうは、、
当初は100平米以上が最低条件だった。理由は西大島の拠点(一戸建ての民家)が90平米くらいで結構手狭だったから。リモートワークが一般化したこともあって、もはや横浜とか千葉とか郊外でもいいし、なんならつくばでもよかったんだけど、あらゆる不動産に問い合わせては条件を厳しくしていった。
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そして、たまたま見つけた浅草の60平米のワンルーム1Fの物件。正直希望寄りは狭いし、思ったよりも賃料が高いしと納得はしていなかったけどとりあえず下見にいった。
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下見に行った感想は「全くよくわからん」だった。荷物収まるのかな?とか本当にアクセスいいのか?とか実際はかなりやってみなきゃわからなかったし、初期費用もどんぶり勘定のままだったけど、こんなに面白い物件はなさそうだから目をつむって半ば勢いで決めた。



【初期費用】
・不動産契約初期費用: 20万x6=120万くらい
事務所として借りる場合は賃貸にも税金がかかるのと、5ヶ月くらいは敷金礼金が発生し、初月の家賃がかかる。

・不動産保証会社料金: 20万
賃料のひと月分。これはどうしようもない年貢。

・駐車場契約初期費用: 12万
搬入出用の軽バンを持っていたので、駐車場を移籍するのに再契約の費用がかかった。月3万円に敷金礼金が4か月。

・荷物用の棚製作費: 15万
棚は自作も検討したが、ありものを注文した。ナイス判断だったと今でも思う。

・電気工事: 15万
ライトレールを4本設置した。もともとの物件が照明がすべて間接照明で4辺にしかないという攻めた内装だったので、ギャラリー部だけでなく、事務所部にもライトレールの取り付けがマストだった。契約の際に図面を起こして大家さんに申請したので、退去時もそのままでよいということになった。なんでも大家さんには相談しておくべきである。

・インターネット回線の契約: 14万
nuro bizの工事と、工事期間中にFLET'sを契約して、ルーターなどを買ったら想像以上に高かった。高速回線が必要なければマンションタイプの光回線でも十分だったかもと反省している。ルーターの位置もいまいちなので改善したい。

・Qrio Lock+Hub: 3万
合鍵をつくらずに電子ロックにしている。誰が来たのかの履歴も残るし、遠隔でも開閉できる仕様にしたことで、完全オンライン対応の展示開催にも大活躍。カギを紛失して、全交換などのリスクも避けられるし、防犯にもなる。

・暖房: 8万
中古のアラジンストーブ3万とリンナイのガスファンヒーター5万を買った。12月に契約したときはそこまで寒くないかと油断したが、さすがに暖房は必要だった。。。暖房は光熱費ランニング、平米数で検討した結果ガスファンヒータ―が一番効率的と判断。薄いので収納スペースも食わずに非常に優秀。アラジンは上で餅を焼けたりしてエモい。プロダクトとしてかわいい。

・冷房: 30万
FUJITSUの一年型落ちをヨドバシで買いました。そもそもついていたエアコンが動かなかったので、切り替えたのですが、めちゃくちゃよく冷えるし、新しいから光熱費がめちゃ安い。暖房のタイミングでエアコン買えばよかったかもという説もある。

・机、椅子: 15万
3x6の天板三枚とソースホーを3組、椅子はIKEAで5脚とスツールを5脚購入。ソースホーは高さ固定、高さ可変、折り畳み式と3種類バラバラにして、撮影の時や搬入・展示でも使えることを考慮しました。

・雑費:10万~20万
収納用のボックス、カーテン、食器関係、掃除道具関係などなど、数え始めたらきりがないくらい事務所を作ってからあらゆるモノが必要に駆られます。


上からそのまま計算すると270万くらいになりますが、駐車場がなくていいとか、ネットは普通のでいいとか、暖房はエアコンでいいとか、電気工事がいらないとか、ショートカットできれば同じ規模でも200万弱の予算で足りると思います。

【ランニングコスト】
・家賃: 20万
・駐車場: 3万
・インターネット: 2万
・電気ガス: 2万5千
・水道: 5千
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・合計 28万

このランニングコストは最低限という意味でしかなく、何か新しいことをしたりモノをつくろうと思うと必ず予算が必要です。個人が個人の家に持つ必要がないものはなるべく経費で買うこととしています。
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例えば下記のような。

【機材】
・電動丸のこ
・トリマー
・インパクトドライバー
・集塵機
・ボール盤
・サンダー
・レーザー水準器
・電子ろくろ
・電子窯
・電動裁断機
・プリンター
・一眼レフカメラ
・カメラ用防湿庫
・照明/ストロボ
・スピーカー
・NCルーター
・3Dプリンタ
・カッティングマシン
・真空脱泡器
・サンドブラスター
・リフロー炉
・Oculus Quest

他にも、電子パーツや工作工具、プロジェクトに必要な書籍などが毎月経費として必要です。


事務所必要?

リモートワークを主流にしましょうと社会が動いている現代に、事務所は必要やアトリエは必要か?
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コロナ直前に設立したアラレグミとしては、オンライン化できることが最優先だったし当然だった。モノづくりも決して場所がなければできないわけではない。デザインやエンジニアリングは割とPCの中で完結できる。zoomやmiroのようにオンラインでも共同で進行ができるし、google meet、google slideとgoogle driveをつかって夜中にオンラインで資料作成をするのが常だ。
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なのに敢えて、事務所兼ギャラリーを作りました。
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机の大きさと空間の大きさが作れるものの規模を決めてしまうかも?はっきりとした理由よりも、自分たちはもっといろんなことできるんだけどなーという漠然とした憤りを解消するためには、自由に実験ができる基地が必要だったということ。

以上。

なぜ事務所で海外のクラフトビールを売っているのかについては、後日気が向いたらまとめたい。

広告代理店 アートディレクター(新規事業、ビジネスモデルの開発もやってます!)/ 株式会社アラレグミ 代表取締役社長(アカデミックを表現でサポートする会社を作りました!)/ デザインが民主化されることを目指して「ノラデザイナー」としてnote書き始めました!27歳。