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学科試験と実技試験、どちらが緊張するかという議論を見て

日曜日は司法書士試験(筆記)でした。受験された皆様、お疲れさまでした。

さて、司法書士試験に関して、先日Twitterでの某氏の投稿が波紋を呼んだ。
司法書士試験よりも保育士の実技試験のほうが緊張度が高いという趣旨のツイートがなされ、これに対して一部の司法書士と受験関係者が反応してちょっとした炎上となったのである。

Twitterのタイムラインを見て、これはなかなか難しい議論だと思った。もっとも、事の正否よりお気持ちが問題になっている可能性もあるが、そちらはひとまず置いておき、緊張度の問題について考えてみたい。

試験の難易度比較は一概には言えないが、一応合格率という尺度がある(これをもって単純に比較してよいかどうかは議論があろう)。一方で「緊張のしやすさ」となると、なかなか定量的に測れるものではないので、議論は難しい(ので、比較すること自体がけしからんという議論もあるようであるが)。
このため、これから述べる話は、あくまで個人の見解、与太話の類としてご笑読いただければ幸いである。


実技試験には学科試験にない難しさがある。

私も試験を経験したので、司法書士試験の難しさや緊張感も一応わかっているつもりである。自分のときは極度の集中のため、午前の部終了後に嘔吐したくらいである(胃の中は空っぽだったが)。
それでも、やはり実技試験の緊張感は特筆すべきものがあると思う。

実技試験の場合、瞬間瞬間の勝負であって、直前にやってしまったことに対して取り返しがつかない。
直後にリカバリーがきく性質のものもあるが、先に挙げた保育士試験を例に挙げれば、演奏でのミスタッチなどはやってしまえばどうしようもない。
※あえて補足しておくと、保育士試験においてミスタッチの一つや二つ程度では全く致命的ではないので、動揺せず最後まで歌いきることが重要だと思う。

また、着手する順番も受験生側が選べないことがほとんどである。

このため、もちろん個人差は大きいが、実技試験に特有の緊張というものがある。実技試験と緊張対策は切っても切り離せないのではないかと思う。

あえて司法書士試験の例に寄せて考えると、司法書士試験では、一次試験が筆記、二次試験が口述である。口述は一種の実技試験といえるかもしれない。司法書士の口述試験は落ちたら伝説になると言われるほど合格率が高いが、それでも筆記試験を通過した受験生がことごとく緊張するものである。

そうは言っても、定量的な分析があるわけでもなく、個人差も大きいため、議論を深めるのは難しいかもしれない。
「俺は人生を賭けて学科試験に臨んでいるのだ」と言われると返す言葉もないし、先のツイートも議論そのものよりお気持ちを害したかどうかが問題となったように見える。
一方で、実技の緊張感というのも舞台の場数を踏んだ者でないとわからないかもしれない。

そんな感じで結局何が言いたいのかという話になってしまうのだが、せっかくなので、次の2つのことを述べて終わりたい。

一つは、もしこの記事をお読みになっている司法書士試験の受験生がいらっしゃればお伝えしておきたいが、学科試験のアドバンテージを活かした戦い方があるということだ。
例えば演奏の試験であれば、協奏曲でカデンツァの部分から先に弾くようなことは許されない。
対して司法書士試験の場合、午前と午後の科目はさすがに取り替えられないが、各問がベルトコンベアーで運ばれてくるわけではないので、どこから解き始めてもよい。問題がわからないからといって、途中で試験官に「帰れ」と言われることもない。長考すべき問題を後回しにするのも戦略の一つだ。開始直後に時間を取り、マントラを唱えて精神統一を図ってもかまわない(声に出すのはやめておいたほうがよいが)。
学科試験においては、試験時間は自分が支配しているのである。このことを頭のどこかに入れて挑戦していただけるとよいかと思う。

もう一つは、実務における登記・法律相談などは、ある種実技試験と共通の要素があるように思える。
これは自戒も込めて言うが、口から出た言葉は容易には取り消せない。単に法律的・手続的に誤ったことをうっかり言ったのであれば直後に取り消せばよいが、思わぬ一言で相談者の方を傷つけることもある。
寄り添う姿勢などを失わないようにしつつ、「実技的な緊張感」を忘れず対応したいと思う。

ご清聴ありがとうございました。

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