成年後見と納税管理人

成年後見人・保佐人・補助人が税務に関する手続を行ったり、関係書類の送付先を変更したりする場合、税務当局に納税管理人の届出をするのが通例になっている。
これは、税務に関する法律や条令等において成年後見人等に関する定めがないため、やむを得ず代用されているものである。

ただ法令によると、納税管理人は、納税義務者本人の意思で「定める」こととなっている。

国税通則法
(納税管理人)
第百十七条
 個人である納税者がこの法律の施行地に住所及び居所(事務所及び事業所を除く。)を有せず、若しくは有しないこととなる場合又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人である納税者がこの法律の施行地にその事務所及び事業所を有せず、若しくは有しないこととなる場合において、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、その者は、当該事項を処理させるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を定めなければならない。

保佐人・補助人で代理権を有する場合は、(代理権の付与は本人の同意を要するため)本人が定めたといえなくもないが、成年後見人はちょっと解釈上無理がありそうである。

まあ、納税管理人にさしたる権利義務は発生しない(はず)ので、実務上さしたる支障はないのだが、本人が税務当局に「そんなものを定めた覚えはない!」と言ったらどうなるのだろう、という心配はある。
納税管理人として届出をする慣行が定着したため近年はあまり議論を聞かなくなったが、いま国が利用促進関係で色々と整備している中で、改めて考えても良いのではと思う。

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