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昔の意思か、現在の意思か

任意後見契約において、契約の発効後に本人が契約内容と異なる希望を示すことがある。
例えば、契約締結時には所有不動産を絶対に手放さないと決めており、処分にかかる代理権も付与していなかったが、本人が認知症を発症して契約が発効した後、本人が売却や贈与を希望する場合である。

任意後見制度の元々の趣旨からすれば、契約内容、契約時の意思が優先されるようにも思える。判断能力を失っているからと切り捨てることもあるかもしれない。

一方、全ての人に意思決定能力があると考える意思決定支援の考え方を重視するのであれば、現在の意思を実現すべく努力しなければならないことになる。
ただ実現するとして、具体的な実現方法についても課題がある。任意後見人の代理権では対応できない。取りうる手段としては、本人自身で契約手続をとる(この場合「意思決定能力」と「意思能力」の差異が問題となりうる)か、法定後見に移行して任意後見契約を終了させるか、ということになりそうである。どちらも色々と論ずべき問題がある。

そうなってくると、そもそも任意後見契約の締結時にあれこれと定める意義がどこまであるのかという問題が出てくる。任意後見制度のあり方として議論する必要があるかもしれない。

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