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ごきぶりポーカーレビュー

本作は6人までのプレイに対応した、
ゴキブリやネズミなど8種類の嫌な動物を押し付け合うことを題材とした、ブラフゲームである。
64枚の山札から4枚ほど除外し全てのプレイヤーに配り切り、スタートプレイヤーが8種類の内1種の動物の名前を宣言しつつ、手札から1枚を伏せて他のプレイヤーに渡すところからゲームが始まり、カードを渡されたプレイヤーは“勝負“と“押し付け“の何れかを行い、伏せられたカードを引き取る(ゲーム終了まで手元に表向きで置いておく)ことになったプレイヤーが次のスタートプレイヤーとなり────
これを敗者が現れるまで繰り返すというもの。

8種類の動物を全種引き取るか、1種類の動物を4枚引き取ると敗北し、ゲームが終了する。

“勝負“
自分にカードを渡したプレイヤーの宣言に対してそれが嘘か本当かを予想&宣言し、伏せられたカードを公開する。
予想が当たっていれば自分にカードを渡したプレイヤーに伏せられたカードを引き取らせることができ、外れてしまった場合は自分がそのカードを引き取ることになる。

“押し付け“
自分以外にまだそのカードを渡されていないプレイヤーがいれば行える。
渡されたカードを自分だけ確認し、改めてそのカードを動物の名前を宣言しつつ他のプレイヤーに伏せて渡す。
無難な選択肢ながらも、スタートプレイヤーに対してダメージを与えられなくなることには注意が必要だ。

──批評
人を選ぶようなタイトルでありながら、その実イラストはキャッチーでポーカーのように役を覚える必要も無く、経験者も初心者も、正直者も嘘吐きも、破天荒なプレイも堅実なプレイも許容し、プレイヤーに予め何枚か動物を引き取らせることでハンデやゲームスピードなどの調整も行い易く、心理戦を主としたアナログゲームの良さを全て詰め込んだ内容となっている。
筆者はこのゲームが大好きであるため絶賛するが、人によって評価が揺れる作品であるとも考える。
その理由としてプレイヤーの意思がゲームを大きく構成するという点が挙げられる。
特定のプレイヤーにばかりカードが渡されたり、心理戦というある種のコミュニケーションに重きが置かれているため、参加者同士の性格やプレイスタイルの相性によっては若干楽しくないものになってしまうかもしれない。(ゲームはプレイヤーを許容するが、プレイヤーがプレイヤーを許容するかは別問題)
筆者はここまでプレイヤーに進行を委ねながら破綻しないこのゲームルールを讃えたいが、このような点においてこのゲームは“体験のパッケージ“としては不十分だと言える。
だがそう言ってゲームが面白くなる訳では無いため、取りまずは参加者を募りゲームを進行する主催者の手腕を問うゲームとでもしておこう。
総じて、ボードゲームをやり込んでいる主催者が人にボードゲームを勧めるのに適したゲーム……と落ち着かせたいのだが、文頭に戻ろう。
このゲームは人を選ぶようなタイトルなのだ。

改めて総評を述べると、ごきぶりポーカーというものはゲームとして洗練されていると同時に、プレイヤーというゲームにおいて切り離せない存在(心理戦においては特に重要)を加味すると途端に支離滅裂な具合になってしまう、なんとも不思議な、正にゴキブリのような奇妙さを持つ作品である。

──頻発するプレイシーン
・相手の宣言を思い切って肯定してみる。
筆者がなかなか勝てない人の特徴に、筆者の宣言をあっさり肯定する人が挙げられる。
本作初心者の場合、相手の宣言を否定すれば8種類の内7種類の可能性を網羅できると考えてしまう場合があるが、それは些か早計である。
ゲームが進んで場が成熟している状況で8種類の内から1種類を選んで宣言するのだから、その宣言には否が応でも意図が込もるものだ。
相手が疑われることを前提にカードを出しているのなら、貴方は逆に相手を信じることで勝つことができるのだ。
何が言いたいかと言うと、嘘を吐いたり疑い抜くだけがブラフゲームでは無いのだ……
・スタートプレイヤーになった時、自分の弱点(これあと1枚引き取ると負ける!)となる動物の名前を宣言しながら他のプレイヤーにカードを渡すことで相手の判断に強く干渉することができる。
(自分の手札にそういった弱点となる動物が多くいるために無理をして出さざるを得ない場合に多く見られる)
だが相手にとって他のプレッシャーが無ければ容易く見破られてしまうため、場や自分の手札にある把握可能な情報を念頭に置いて上手に仕掛けたい戦術である。
・自分が既に3枚引き取っている動物の名前を宣言しながらカードを渡された時、その宣言を肯定することでその動物による敗北は避けることができる。
だが脆弱性もあり、それを見越して挑まれると別途墓穴を掘ることにもなる。
・同じ動物をひたすらに宣言し続け、相手が判断を誤るのを待つ。
相手に看破されることを前提とした根気と狂気が必要なこの戦術は多くの場合自分の首を締め上げる結果になるものの戦局を立て直す可能性もある為になかなか侮り難い戦術である。

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