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中学入試の現場から 立体の切断は計算力ではなく眼力である

巣鴨中学で算数選抜の入試が始まりました。(2019年より) 1科目だけの一芸入試というのは昔からありました。しかし、学校によっては長く続かなかったりして評価は定まっていないようです。今後の推移を注目していきたいところです。

もともと巣鴨中学は解答に答えだけではなく、式の記述を①の(1)から全問要求するので有名な学校でした。答えだけ合っていれば良いとするのではなくプロセスの正当性を要求してきたのです。

その意味で巣鴨中という学校は高い見識のある学校だといえます。しかしながら最近は状況は変化してきているようです。

巣鴨中学の算数の問題は①で計算問題を出さないので有名でした。①は規則性や、場合の数・数列といったいわゆる数論分野を出題してきたのです。

ところが算数選抜の問題では①で計算問題を4問も出題しており、この学校としては極めて異例といえます。2019年の一般試験も①は一般的な一行問題に変わってきています。

算数選抜の問題では⑤の問題で先生と生徒対話形式での出題があるということが注目されます。対話形式でこの部分は何を問題にしているかと言う文脈理解が算数で問われているのです。

面白いのは2020年度の問題で立方体の切断をしていた残りの立体の体積を求める問題でどうやったら立体の体積を出せるか、言葉で論述させる問題のあることです。

一見、体積の出せそうにない立体でも立方体と言う立体の特殊性から簡単に求積可能なケースがあります。それはニ度、三度切断した後の目に見えない立体の規則性をどう読み取るか、という点にかかっていると言えるでしょう。

この問題においては、中点の切断から底面が直角二等辺三角形の合同な三角錐が2つあることを見抜けるか、という点にかかっています。この合同な三角錐を2つ全体から引いたら残った立体は、いびつな立体でもすぐ体積が出せると言う問題はよく目にするものと言えます。目に見えない立体が見えるか、と言う点が問われているのです。

立体の切断の問題は、見えたら勝ち、見えないと負けと言う要素が多分にあります。見えたら1分以内に答えが出るのに、見えないからどうやっても答えが出ないと言うことも多いのです。ある意味見抜く力「眼力」というものが試されています。

計算力では無く、何を計算するかというのが全てです。計算の複雑さを試しているのではないのは明らかです。計算力と全く違う脳の働きが求められています。算数は計算力であると思い込んで計算練習ばかりでは手も足も出ません。今日は計算力は左脳、図形問題の明示からは脳の思考といえます。使う脳が違うのです。

立体図形のできる生徒は算数の学力の高い子供です。立体図形の切断の問題をやらせてみればその子の算数の実力はほとんどわかります。単純な計算力の積み重ねでは到底到達できない学力だからです。算数は計算力だけではありません。計算力を含んだ総合力なのです。

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