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音楽を仕事にするという事

先日見に行ったスピッツのライブはそれはそれは素晴らしかった。客席のソーシャルディスタンスを保ちつつ発声禁止ではあったが波打つような拍手や手拍子などから会場の異様な程の熱気を肌で感じられた。

同時期に開催されているフェスなどもあらかじめ空席を設けて距離を取りながら声を出さずに楽しむという近い方法でライブやコンサートが行われている。

数々のバンド、ミュージシャンが様々な方法を模索しながらライブ活動を継続している。このような形はずっと続けれられないと重々承知しながらも。

お客さんの入り方は50%程度が限界で今まで通りのチケット収入、グッズ収入などが見込めない上にコロナ対策でスタッフは増え人件費などもかさんでいるだろう。

ライブ産業が厳しい状況を迎えて一年以上、ワクチンの効果を期待するほか無いもどかしい状況の中で必死に一筋の光を模索してるバンドのライブが見られるというだけでこれほど感慨深いものは無い。


さて一方で僕は音楽を仕事にして生活をしている。このような状況で限られてはいるもののできる事は沢山ある。生配信で自分の曲を弾き語るというのも今年初めあたりから積極的に行っている。自宅で演奏しているので生ライブとは違うものではあるが、逆にアットホームな雰囲気を楽しんでもらえてるのではないかと思っている。

ミュージシャンの矜持とは何だろうか。その事を考えて昨日も夜中眠れなくなってしまった。僕はもともと路上ライブで一年間ほど投げ銭を稼ぎ生活していた事がある。お客さんにテーマをいただいて即興で曲をプレゼントしていた。自分の作る曲でお客さんに喜んでもらい、チップをいただくというのは作曲家の本質では無いかとその時は考えていたからだ。その時の経験は今になって活きてくる場面が沢山ある。

だが、今は即興ソングを作ってプレゼントするという事をほとんどしなくなった。それは一芸ではあるが誰にでもできない事では無いからだ。僕の知ってる限りでも虹色侍さん、眉村ちあきさんなどがやっている。僕はエンターテイメントに振り切る事はできなかった。今の僕を知ってる人からしたら信じられないかもしれないが昔僕は赤いフンドシをつけてほぼ裸でギターで弾き語りをしていた事もある。

俺は音楽で商売をしたい、その気持ちは前からずっと変わっていない。俺を応援してくれている人からの投げ銭や、カンパや贈り物、本当に感謝してもしきれない。

ただ俺がやりたい事って「ずっと頭の中で鳴っている音楽を外に出して聴いてもらう事」、それだけなのだ。俺の頭の中で鳴ってる曲、本当に良い曲だから。その軸は多分今後も変わらない。だから裸で歌うことも即興で曲を作る事もやめた。良い経験になったのは間違いない。カッコつけたバンドが沢山いる中で一人フンドシで出て行ってお客さんの心を鷲掴みにできた瞬間、たまらなかった。目の前にいるお客さんに喜んでもらい、何ならその場でお金も飛んでくる。それは素晴らしいことじゃないか、と思っている、なぜなら俺は音楽で商売がしたいから。

でも今はやってない。一番やりたいのは頭で鳴ってる音楽を聴いてもらう事だから。職人のように曲を作り、最近は絵を描いたり文を書いたりもしてる。何か作り出したいのだ。頭で思い描いたイメージを共有したい、その思いは僕の根底にずっとあるものだ。

音楽を仕事にするという事、そしてコロナ禍、お金は切っても切り離せない、切り離したくもない。生き残る術を模索している。できる事はなんでもやる。作品を作っては発信する、反応をもらう、それを元に試行錯誤してまた作品を作る。この繰り返ししかない。音楽に限らず良い商品を作るには全部このサイクルを回していくしかないのだ。

これからも模索していく、だが魂を売り渡しなんかしない。自分の宝物を軽々と他の人にやるもんかよ。今日も自分の矜持に則って粛々ともの作りに励む。

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