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「公園でチェロ無伴奏」

公園でチェロを弾くようになったのは、
直接のきっかけはコロナ禍だったか。
学校が休校となり、家族が家にいるようになると、「チェロうるさい」「ミュートして」という声が。
仕方なく晴れている日は近所の公園にチェロを持ちだして弾く、というのが一つの日課となった。公園も人が少なかった。

外だから当然音は響かない、下手さ加減が丸出し。
夏は暑いし、冬は寒い。
暑さも寒さも直射日光ももちろん楽器には良くない。
音は人によっては本当に迷惑なものになりうるので、近くに人がいるところではやれない。
いろいろめんどくさいので楽譜は持って行かないので、暗譜は大前提。
6月から11月は蚊との闘いにもなるので、携帯用ベープマットは必需品。
たまに毛虫がチェロに近寄ってきたりもする。
風が強い日には、あとで録音を聴き返すと風の音ばかりでがっかりする。100円ショップの三脚はちょっとの風でもあまりにあっけなく倒れる。
夏はどんなに頑張っても蝉の声にかき消される。

でも、
澄み切った青空の下でバッハを弾く喜び、
野鳥のさえずりと一緒に音を出す楽しさ、
たまに通りすがりの人に「良い音ですね」と褒められたり、オケやバッハの話でもりあがったり、
遠くから拍手が聞こえたり、
保育園児のお散歩の列に向かってトトロを弾いたら喜ばれたり、

いや、やめられないわ(笑)。

大人になってから始めた下手くそなチェロだけど、
こんな楽しみ方もありではないかと。

演奏の下手さはともかく、バッハの無伴奏チェロ組曲の全曲を公園で弾いたプレイリストは世界広しといえどもなかなかないだろう(笑)、という自負もあり、しかし、下手くそには変わりないので、練習をつみかさねて少しでもまともなものが録れれば、すこしづつリストを更新しつつ、
のんびりと、死ぬまでそんな調子で楽しみたい。

独りぼっちででも、チェロ無伴奏だったらいくらでも楽しめる。
こんな素晴らしい曲をまとめて作曲してくれていたバッハに改めて感謝しつつ。

2024年3月31日 バッハ生誕の日に


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