弱い風景
慶應義塾大学SFCを2020年の春に卒業する、とものあやです。
私は「弱い風景」という卒業プロジェクトを行いました。
日常的に都市を歩いていて、ふと目に留まる「ゴミ」がありました。用がなくなって廃棄されたゴミのある場面に、不思議と惹かれました。ゴミでありながら単に捨てられているだけでなく、周りの環境と関係を結び、置いた人の行為や気配が感じられる。そうした、ゴミという一言で片付けることのできない「ゴミ」を「オキザリブツ」と呼び、探究することにしました。
まず、「オキザリブツ」を観察しました。そして、「立っている」「とるにたらない」「はかない」「うっかりある」「やましい」という5つの特徴をから「オキザリブツ」を説明しました。
「オキザリブツ」は「立っている」
物体が持つ構造を用いて、環境が持つ基盤と関係が結んでいる様子を「オキザリブツ」は「立っている」と呼びます。
「オキザリブツ」は「とるにたらない」
商品が消費され、ゴミになっていく途中である様子を「オキザリブツ」は「とるにたらない」と呼びます。
「オキザリブツ」は「はかない」
物体のライフサイクルの中で一瞬だけまちに現れる様子を「オキザリブツ」は「はかない」と呼びます。
「オキザリブツ」は「うっかりある」
計画されたものではありませんがあらゆるところで見られる様子を「オキザリブツ」は「うっかりある」と呼びます。
「オキザリブツ」は「やましい」
不法投棄にあたり禁止されているにも関わらず置かれている様子を「オキザリブツ」は「やましい」と呼びます。
これらの特徴は置き去りにされることで発生する相対的なものです。そこで「オキザリブツ」が作り出しているような風景を、計画的に建設された「強い風景」に対して「弱い風景」と名付けました。
そして、風景に対してどのような態度をとるか、色々な実践を行いました。まずは、「オキザリブツ」への介入を試みました。
配置を変える
花を生ける
氷を置く
以上の実践を行いましたが、1つだけ、自分で「オキザリブツ」を置くことだけは出来ませんでした。なぜなら「オキザリブツ」は不法投棄されたゴミであり、真面目な私は法を犯すことができなかったからです。
そこで、置き去りにする代わりに回収をしました。
そして、「オキザリブツ」の鑑賞や参加を他者と共有できる形にするため、ガイドブックを作成しました。表紙は回収した「オキザリブツ」を使って制作しました。
ガイドブックでは、弱い風景の見方を提示するために集めた風景を写真集の様に見せるパート、置き去り方を提示するために図面に起こしたパートを設けました。
本プロジェクトは、見出した風景を愛でるだけでなく、自分が参加できるか、他人に共有できるか「弱い風景」への態度を模索する、自分自身に対する実験でした。
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