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「消費税は消費者が納めている」というウソの目的

大野

前回、消費税における「二つの大ウソ」として、

  • 消費税は社会保障のために使われている

  • 消費税を納めているのは消費者である

の二つについて書きました。
前者については、消費税増税とあわせて、社会保障が削減されている、という現実があるので、多くの方が気づかれていると思います。
しかし、「消費税を納めるのは消費者である」というのは、政府やマスコミが強力に刷り込んでいる上に、そう錯覚させるための制度が充実しています。
そのため、実際に消費税を納税している業者でもそう思わされている人がいます。ましてや、会社員など、消費税を納税していない人はほぼ100%がそう信じ込んでいるでしょう。
前回、書いたように、それが事実でないのは、裁判の確定判決から見ても明らかです。
いったい、なぜ、そのような嘘を政府やマスコミが流布しているのか、それについて書いてみます。

理由1・「益税」という虚構を作るため

消費税に関する報道でよく出てくるものに「益税」というものがあります。
現在、大きな問題になっているインボイス制度についても、これに反対すると、「これまで、免税業者は『益税』で儲けていたんだ。インボイスはそれを適切に課税するためのものだ」という「反論」が来ます。
この「益税」なる理論は、「あらゆる物品を購入する際に、消費者は10%(食料品なら8%)の消費税を払っている。業者にとっては「預り金」だ。だから、受け取った消費税を納税しない免税業者は不当な利益を得ている」というものです。
それを、マスコミが広めた結果、年商1,000万円以下の免税業者に対し、誤った偏見を持ち、インボイス反対を冷笑する人がいるわけです。
前回も書きましたが、「預かり金」でない事は法的にも確定しています。
したがって、「物品を購入する際に、消費者は10%(食料品なら8%)の消費税を払っている」が事実ではありません・「益税」などというものは存在しえないのです。

課税業者であるデパートで11,000円の物を買っても、免税業者である街のピアノ教室で11,000円の月謝を納めても、非課税である医療機関で11,000円の治療費を払っても、我々が支払ったのは物品やサービスの対価です。そこから1円たりとも消費税など納めてなどいないのです。
しかし、それだと、消費税増税に対する庶民の不満を、本来は弱者である免税業者に向けさせる事ができません。
「消費税は消費者が納めている」という嘘を広めている原因の一つがここにあります。

理由2・「消費税還付金」を正当化するため

「消費税は消費者が納めている」という嘘を政府やマスコミが広める理由の一つとして、「益税」なるものをデッチ上げるためであるという事を書きました。
ただ、それだけではありません。消費税の重大な目的の一つである、「消費税還付金」を正当化する、というのがもう一つの理由です。
「消費税還付金」というのは、輸出をしている企業に還付される消費税の事です。
「益税」については執拗に報道する商業マスコミも、こちらについてはまず報道することはありません。たまに報じるとすれば、零細輸出業者が還付金を不正取得した、という事件が発生した時くらいです。
この消費税還付金というのは、
「販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます。これは、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。輸出の場合には、課税仕入れに含まれる消費税および地方消費税の額は申告の際に仕入税額の控除をすることができます。」(国税庁サイトより)というものです。

消費税納税額の計算の基本は、「売上の10%ー仕入額の10%」です。
たとえば、年間売上が10兆円で、仕入額が5兆円だとすると、「1兆円-5,000億円」で、5,000億円の消費税を払うのが原則です(※国内売上に加算する固定資産の譲渡など、他にもいろいろなルールがあるので、実際の納税額は異なります)。
ところが、この企業の売上10兆円がすべて輸出だった場合は、計算式が「0円-5,000億円」となり、納税額は「マイナス5,000億円」となります。
その結果、消費税を1円も納税しないどころか、税務署から5,000億円の還付金を受け取れてしまうのです。
このような情報は、読売にも朝日にも載りません。多額な広告費を出してくれる輸出大企業にとって不利な情報だからです。
一方で、中小業者の団体である全商連が発行している、全国商工新聞には、毎年、湖東京至税理士による、還付金の推計額が掲載されます。

上記の記事による、トヨタに還付される金額の計算式です。
それによると、2021年度にのトヨタへの還付金額は6,003億円になります。

全国商工新聞2022年10月21日付より

これを裏付けるのが、税務署の「収支決算」です。税金を受け取るのが税務署の仕事のはずです。したがって、収支が「黒字」になるのは当然のはずです。
ところが、トヨタの本社がある豊田税務署は、年間で4,044億円の「赤字」なのです。

全国商工新聞2022年10月21日付より

中小業者は赤字でも消費税を納税させられ、多額の延滞金を払ったり、場合によっては借金までして、苦労して納税しています。
一方で、大儲けしている輸出大企業には、消費税を納税するどころか、還付されているのです。
その理由については、先程も書きましたが、国税庁サイトにある「販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます。これは、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。」です。

ここで注意すべきなのは「課税しないという考え」という部分です。別にそんな国際ルールがあるわけではありません。あくまでも、日本政府がそうやって「考えた」結果として、還付金制度を作った、というだけの話なのです。
政府がこのような主張が堂々とできるのも、「消費税というのは、購入時に消費者が支払っている」という嘘が浸透しているからです。
それを前提にすれば、「我々は日本で商品を買う時に1割の消費税を払っている。一方、アメリカでは消費税は取れないから、トヨタが自動車をアメリカに輸出すると消費税分損をする。だから還付は当然だ」と思わされてしまうわけです。
しかし、実際は違います。
たとえば、トヨタの新車が日本で330万円で売られていたとします。では、1ドル150円として、この車をアメリカで売るときは、消費税である30万円は取れないから、2万ドル(300万円)で売らなければならないのでしょうか。
もちろん、そのような事はありません。2万2千ドル(330万円)で売ろうと、2万1千ドル(315万円)で売ろうと、何ら問題にはなりません。あまりにも安く売ればダンピングで貿易摩擦が発生しますが、そうでない限りは、トヨタが自由に値段をつけることができます。
もちろん、これは他の外国でも同じことです。
消費税還付金を定めたのは、「国際的な消費税のルール」によるものではありません。単に、日本政府がそのような設定をしただけなのです。
もともと、ヨーロッパの付加価値税も同様の設定があり、「輸出企業への補助金」という批判がありました。日本でも同じなのです。
そして、消費税率を上げれば上がるほど、還付金は増えます。さらに、その増税された消費税を「財源」にして法人税を減税することができます。
だからこそ、財界やその意を受けた政府税調などは、執拗に消費税増税を主張するのです。
その理由は日本の財政でも社会保障でもありません。単に自分たちが儲けたいからだけです。

補足・消費税率と物価の関係

ここまで、政府やマスコミが流している「消費税は消費者が納めている」というのが事実でないこと、また、そのような虚構を宣伝する理由について書いてきました。
ただ、これを読んだ方で「なるほど。我々消費者が消費税を納めていない事はわかった。では、物価高対策で消費税率を下げても、物価は下がらないのではないだろうか」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、消費税率が下がれば、物価は下がります。
なぜならば、これまで、多くの企業は、消費税増税にあわせて価格を上げてきたからです。
ここまで書いてきたように、それはただの値上げでしかありません。
しかし、2019年も含め、消費税増税を理由に値上げをした以上、消費税が減税されれば値下げをせざるを得ません。
なお一方で、免税業者をはじめ、多くの中小業者は14年や19年の消費税増税時も値上げを行いませんでした。
したがって、そういう業者は消費税が減税されても値下げをしないかもしれません。しかし、それが「益税」でないことは、「理由1」で述べたとおりです。
いずれにせよ、「消費税は消費者が納めたものでない」という事実と、「消費税を減税すれば物価は下がる」はどちらも正しいのです。

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