フィンランド流スローライフのすすめ「かもめ食堂(2006)」


かもめ食堂とは?



北欧フィンランドの首都ヘルシンキで小さな食堂「かもめ食堂」をオープンした日本人サチエ。個性的な人々との出会いと、サチエのフィンランドでのスローライフが描かれている。

主人公は小林聡美、片桐はいり、もたいまさこという、日本を代表する個性派・実力派のキャストである。

「世界一幸福度が高い国」と言われているフィンランドが舞台のこの作品は、「癒し系映画」として知られている。

フィンランド流スローライフとは



前述した通り、「世界一幸福度が高い国」であるフィンランド。
なぜ、フィンランドの暮らしは幸福度が高いのか。フィンランドの国民性には以下のような特徴があるそうだ。

1.生き方に決まった形がない


日本では、結婚、就職、子育ては「必ずすべきものである」という思想がまだまだ強い。
しかし、フィンランドでは結婚するかしないか、働くのか働かないか、子供を産むか産まないか、は個人の自由であるという風潮がある。

フィンランドでは、「幸せの形」はひとりひとり違って当たり前なのだ。

2.お金への不安がない


金銭面の不安は、私たちにとってかなりのストレスとなる。お金の不安は即ち人生への不安を意味し、私たちの生活から切っても切れないものである。
日本では近年「老後2000万円問題」が話題になり、お金の悩みは年々深刻化している。

フィンランドでは、学費、医療費、老後資金などの社会福祉制度がとても充実している。
そのため、教育のための費用や病気、老後のお金について心配しなくても良い。
将来の不安を解消するために貯金や節約をしたり、急いで投資を始める必要はないのだ。

3.ブランドものにこだわらない


日本では、ブランドバッグのサブスクリプションサービスがあるように、ブランドものの需要は非常に高い。

フィンランドではブランドのアイテムを使用している人は非常に少ないそうだ。
時間や経験を重視しているフィンランド人にとって、ブランドものを持って着飾ることはあまり意味のあることではないのだ。

4.仕事が一番ではない


フィンランドの生活では「家族」の優先順位が最も高い。フィンランドでは多くの場合7時間労働で残業はほとんどないと言われてる。コロナ禍前から在宅勤務や、長い夏期休暇など、ワークライフバランスを重視した働き方を採用している企業がほとんどだそう。

「お客様第一」思想ではなく、「顧客も労働者も人間でありそれぞれの生活がある」というのがフィンランドの仕事に対する理念である。

サチエ流のスローライフ


かもめ食堂の舞台はフィンランドだが、もちろん日本で製作された日本映画だ。
そのため、かもめ食堂にフィンランドの国民性や文化がどれほど反映されているかは私には分からない。
しかし、主人公のサチエの生き方は、とても心地が良いものだと思った。
サチエは出会う人々の肩書きやフィンランドに来た経緯について、一切探りを入れたりしない。もちろんパートナーや子供の有無についても。ただ今ここにある感情を共有する。来る者は気持ち良く受け入れ、旅に出る人は気持ち良く送り出す。このサチエの「来るもの拒まず、去るもの追わず」な人との関わりには、カラリとした天気のような心地よさがある。
「来るもの拒まず、去るもの追わず」と聞くと、冷たい印象を受けることもあるが、決して非人情的なものではないのだ。「変わりゆく全てのもの」と生きていくためにはごく自然なやり方なのかもしれない。



また、かもめ食堂にはスマートフォンやPCなどの電子機器類(ガラケーは少し登場するが)が一切登場しない。
映画を見ている時に俳優がスマートフォンを使ったり、PCで作業をする姿を見て現実に引き戻された経験は今まで何度もある。
スマートフォンの中には、刺激的で楽しいこともたくさんあるが、一方で私たちの心を蝕む情報もたくさんある。かもめ食堂はありがたいことに電子機器の登場でゲンナリする心配はない。まさに癒し系映画である。


まとめ


「かもめ食堂」鑑賞後、単純な私は、フィンランドでのスローライフにとてつもない憧れを抱いた。


しかし、その一方で、作中で描かれるフィンランドでのシンプルな生活に、どこか物寂しさというか、物足りなさを感じる自分もいた。
それは、もしかしたら私がまだ20代で、人生に冒険や刺激を求めているからかもしれない。

フィンランドでのスローライフには非常に憧れるが、毎日だと飽きてしまいそうな気もするのだ。
現代人は多忙を嘆く一方で、その多忙さと共存し、スマートフォンと共に生きる忙しない生活でなければ物足りなくなっている。これは良いことなのか悪いことなのか。私もまだまだ東京のど真ん中で忙しなく生きていたいようだ。


スマートフォンを捨てて、穏やかに暮らしたい。そう心から思う日はいつ来るかしら。きっとそれは遠い未来の話かもしれない。
だが、その時までにフィンランドには行っておきたい。いつかフィンランドでスローライフを送るためには、下見が必要だ。

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