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24人目

【24人目】Sさん 30代、歳上(pairs)

Sさんとは全部で4回デートを重ねた。

背が高くて、見た目もきりっとした奥二重でかっこいい。
都内で弁護士をしていて、婚活中の女子にはかなり人気がありそうなステータスを持っていた。

なのになぜかいいねの数が少ない。
正直チャンスだと思った。

会う前のメッセージは、レスポンスは早いもののなんとなく冷たい印象だったが、この平凡オブ平凡な私が弁護士という職業の人と話す機会なんてそうそうない。
気が早いが玉の輿もちらついた。
浮ついた気分で食事の約束を取り付け、緊張と楽しみな気持ちでその日が来るのを待った。

・・・

当日待ち合わせ場所に到着すると
「少し遅れるので先にお店に入ってて」
と連絡が。

彼の名前でお店に入るとカウンター席に通される。
1人で店内で待つ経験がなかったので、まさかこのまま来ないんじゃ…と不安に苛まれたが、数十分後、彼はちゃんと来てくれた。

メッセージの印象よりも明るく話すタイプだったし、歳上だからなのか、本人に余裕があるからなのか、とても居心地が良かった。

・・・

その後も相変わらず冷たい印象の連絡ではあったけど、連絡を取り合った。お互い映画が好きだったこともあり、次回彼の気になっている映画を一緒に見に行くことが決まった。

映画当日、仕事を早めに切り上げ待ち合わせに到着すると、彼の姿はまだない。手元で簡単に仕事をしながら待つ。数十分ほど遅れてやってきたので、仕事が忙しいんだなと思うようにして映画へ向かった。

チケットを取ってくれていたのでなんとか始まる前に座席につくことができたのはとてもありがたかった。映画自体はかなりマイナーで難しい作品だったが、頭のいい人はこういう映画を観るんだな、と自分の知らない世界を知る彼に惹かれている自分がいたのだった。

・・・

会っているときは感じないけれど、やはりメッセージの印象は冷たい。手応えを感じきれず困惑することも多かった。

なんだかんだしてやっと取り付けた3回目のデートは、休日お昼から待ち合わせて1日一緒に過ごす予定だったが、運の悪いことに大型台風の直撃と重なってしまったので、彼のいきつけのお店でランチだけすることとなった。

このお店、どうやら彼の自宅近所らしい。
都心のど真ん中、駅近の1LDKで一人暮らし。家賃相場をみても私の月給1か月分くらいなので、プロフィールにあった年収は本当なんだと思うと、急に遠い存在に感じた。

そしてこの日も彼は遅刻。
気になってはいたが、毎回遅刻してもあまり悪びれた感じがない…。待たされるのが嫌いな私。軽いモヤモヤを感じる。

さらに3回目となると彼の本性的な部分も見えてきた。エリートな彼はプライドがやや高いためか、人を見下すような発言がみられた。徐々に沈黙も増えはじめてダラダラとしてしまったので、この日は電車が完全に止まる前に、と数時間で解散となった。 

・・・

後日ラストとなる4回目のデートのお誘いをもらった。前回のモヤモヤを思い出し迷ったが、もう一回だけ、もしかしたら何か変わるかも。そう思って美術館デートが決まった。

当日、彼は案の定30分ほど遅刻。心が狭いと思われるかもしれないけど、4回目となるとさすがにしんどかった。
なぜか遅刻してきた側の彼がイライラしているように見える。デート自体は楽しもうと思っていたので引きずらないよう努めたが、出だしから嫌な気持ちになったのは否めなかった。

・・・

美術館を周り終え、夜の食事も終盤にさしかかる頃、彼が口を開いた。

「よかったらお付き合いしませんか」

私といて居心地がいいと思ったと真剣に話してくれた。素直にうれしかった。

しかし話は続く。

「実は来年留学に行くつもり。それでもよければだけど」

初耳だった。全然よくない。

ちゃんと聞いてみると、年齢的に結婚したいけど留学もしたいので、帰国後すぐに結婚できる相手を探していたとのこと。筋は通ってる。
さすがだなと思ったけど、付き合ってすぐに遠距離して帰国後すぐ結婚というのは現実的ではないと思ってしまった。

ところが4回もデートしたので、ここでお別れかと思うと急に情がわいた。すっぱり断ることができなかった。

「帰国後もしお互いに相手がいなかったら、その時また考えたい」

なんだかとても綺麗ごとでズルいと思う。

もともと淡白な彼だったので、その後はそれとなくフェードアウトしていった。

・・・

正直玉の輿に憧れた気持ちもあったけど、いつでも会いに行ける距離にいてくれるということのほうが私にとっては大事だった。そして、4回の遅刻のモヤモヤも拭い切れない。

その一年半後、懲りずにアプリを続けていたところ、おそらく私と気づかずまたいいねをくれた彼。懐かしい気持ちと共に、スッとスキップしたのだった。
留学へは本当に行ったのだろうか…。

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