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自ら楽しみ、伝え、支えてこそ「大人」ー劇場版「ゆるキャン△」レビュー

令和のキャンプブームの火付け役の一つになった、キャンプ好き女子高生たちが主人公のアニメ「ゆるキャン△」。その主人公たちが大人になったという設定の劇場版「ゆるキャン△」を、おっさんが仕事ズル休みして一人で鑑賞してきました(同じおっさん友達誘ったらフラれたでござんす、ぴえん🥺)。ただ、一人でも「大人になること」を深く考えさせられる作品で、とても充実した時間になりました(ってかおっさん、仕事さぼんなよ…)。

作品の概要

アニメ「ゆるキャン△」は、2018年に放送され、今のキャンプブームの火付け役となった作品の一つ。実際、筆者の勤務する会社でも「ゆるキャン△」をきっかけにキャンプにハマったという同僚がいます。

一人でキャンプする「ソロキャン」が趣味の女子高生が、同じ学校の友達たちにキャンプの魅力を伝えながら、キャンプを通じて友情を深めていくというストーリーです。可愛い女子高生たちが主人公のストーリーに加えて、分かりやすく実用的で具体的なキャンプ知識が満載なところが、ヒットの要因になったのでしょうか。

そして今回、劇場版では彼女たちが社会人になり、職場は離れ離れで皆忙しく、予定も合わないことから、昔のようにキャンプができなくなってしまったというところから物語は始まります。そんなある日、県の職員になった仲間の一人から、休日の時間を活用しながらキャンプ場を作らないか、という提案がされます。忙しいながらも時間を作り、またしてもキャンプを通じて徐々に昔のように友情を深めていくのですが、キャンプ場完成が見えてきたところで、ある事件が起こります。。

大人でもできないこと、大人だからできること


本作で最も注目すべきポイントは、主人公たちが「大人になってどう変わったか」だと、個人的には思っています。

これについて本作はタイトル通り、「ゆるく」はありながらも、明確なメッセージを発してくれていました。

まず感じたのは、いきなり逆説的ではありますが、「何も変わっていない」ということ。つまり「キャンプと仲間たちが大好き」という根幹の部分は変わっていないということです。

前作から「ゆるキャン△」の魅力の一つは、キャンプを心から楽しみ、それを共有し合える仲間がいるということです。本作の魅力の軸とも言える部分が、「みんな大人になったから失われてしまった」ということであれば、作品の魅力が半減してしまいます。ただ、そんな不安を一掃するように主人公たちは皆、大人になっても変わらず、いつでも好きなことに全力投球で、周りを見失ってしまうほどに必死です。

だからと言って大人になっても熱い想いは変わらないという主張を暑苦しくはせず、大人になったら何かが変わってしまうという一般的な見方も否定せず、非常に絶妙な「ゆるさ」で、「大人になっても変わらないこと」と「大人になったら変わっていくこと」を表現しています。その象徴的なセリフがこれです(メモらなかったので、正確ではないです。こんな内容のセリフだったとお考えください)。

「大人になったら色んなことができると思っていたけれど、そうじゃなかったんだよね(中略)でも、大人になったからこそできることがあるということも分かったんだ」

肩肘張らず、本質を忘れず、自分らしく


大人になって変わったところは、自分たちが夢中になれることを次の世代へどう伝え、見守り、サポートしていくということ。本作ではこのことをテーマにした大人たちの振る舞いが、何度となく描かれます。それは同じキャンプに興味を持った人たちへの対応だけではなく、大人になった主人公たちの職場や家族の風景としても描かれています。新入社員を先輩社員がどのように見ているのか、社会に出たばかりの主人公たちを家族がどのように支えているのか。そして、こうして大人になったばかりの彼女たちに注がれる優しさと期待を、彼女たちは次の世代へどのようにして伝えようと努力しているのかーー。

そんな変わらずキャンプと仲間を大切にする姿と、その良さを損なわずに少しずつ大人になっていく姿を、力まず、「ゆるく」伝えきったところに、本作の見どころがあると、個人的には感じました。世間の荒波に揉まれながらも、適度なゆるさを持つことは、自らが楽しみ、それを伝え、サポートできる真の大人に必要なことなのかなと、本作を通じて感じた次第です。

まあ、自分は本作を観たいばかりに、体調不良と嘘ついて半休とって映画館に行ってしまったんですけどね。何事も「ゆるゆる」はアレですが、「ゆる」くらいならちょうどいいのかもしれませんね。

とはいえ、次回作が「ゆるゆるキャン△」だったら、それはそれでまた仕事ズル休みして観に行きたいですけどね、全く期待はしないですが。。

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