ほっこり

学生の頃、母校の勉強会の集まりで、地方の大学に職を得た30過ぎの先輩が久しぶりに参加して、終わってから、みなで、近くのとんかつ屋で食事を済まし、ちょっと飲みに出ようかとなり、当の先輩が、人に会いに行くと席を立ったが、なかなか戻ってこない。

「先に出て、後で連絡しようか」と思い始めたとき、いそいそと戻ってきた。綺麗なおねぇーさんとでもあってきたのかと問い詰め始めた時、「女性だけど、下宿のおばさんだよ。ちょっと話し込んでしまった。学部から院まで世話になったから、十年近く過ごしたかな。久しぶりだから、顔を出したかった。

帰り際に、これを持っていけと言って、1万円を出されたけど、いやいや、もう就職してますよ。とんでもない。押し問答のあった末、断って、出てきた」ということであった。下宿のおばさんの目には、くたびれた。冴えないおっさんが、大学生の頃の先輩の姿が写っていたのであろう。