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稲川淳二さん語りの上手さ

稲川淳二さんの怪談を聞いている。彼の話は独特でひきつけられる。アナウンサーのようなはっきりとわかりやすいわけではなく、早口で聞き取れない言葉もある。しかし、それがあるからこそ真剣に聞いてしまう。

不思議だ。滑舌が良くてわかりやすい人が良いというわけではないのだ。この話術はどうだ。面白い。

たぶん生で聞いていると怖いだろうと思う。シーンと静まり返った舞台、暗くした照明。場の雰囲気に恐怖を煽られるだろう。想像できる。

私は映像がなく、ただ聞いているだけなので、それほど怖くはない。自分が体験したならきっと恐ろしさに身が震えるであろうが、他人の話である。もっとも、稲川さんご本人の体験談である「生き人形」は怖かった。

ともかく、稲川さんの語りには説得力がある。そして、語り方の声が優しいのだ。冷たさとか、怖がらせようとか、そういう声の響きではないのだ。どう説明したら良いのかわからないが、怖い話なのだが愛情を感じさせる声なのである。

声の良し悪しは大事である。冷たい声、うっとうしい声、デカいだけの声、デリカシーがない声、薄い響きの声もある。しかし、暖かさを感じる声を持つ人は少ない。ただ良い声というだけではない、暖かさを持つ人は凄いと思う。人柄まで良いように感じる。

したがって、稲川淳二さんは良い人のように思えるのだ。怪談を聞きながら、「きっとこの人は良い人だろうなあ」と感じられる。実際どんな人なのかは、お会いしたことがないのでわからない。


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