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【 壮年A 】 前編
暑くも寒くもない秋の夜。どこか物悲しい気分にさせる、そんな季節であった。
その日は晴れていたが、途中から雨が降り出した。壮年Aと対面した瞬間はまだ、地面は濡れていなかった。
この日というのは、私にとってマッチングアプリでマッチングした者と初めて会った記念すべき日である。マッチングしたのは当日の夜中で、会う事になるまで最速ナンバーワンだった壮年A。
私のアポ歴から抹消したゼロ地点ともいうべきアポである。
対面する少し前、壮年Aから「こんな格好してます!」と画像が送られてきた。それを見た自分「おっと。思ったより若けぇな、、」という印象の年下男性。
待ち合わせの場所へ向かい、無事合流。ほう、画像より落ち着いているように見える。
近場の適当な居酒屋へ入り、挨拶もそこそこに、直近の経歴やらハマりごとの話をしていたかと思う。壮年Aの経歴は少し特殊で、中々興味深いものであった。
彼は最近日本へ帰ってきたんだって。語学留学をしていたとか。過去には読モをしていたという。容姿は程よい身長で中性的な顔をしており、ほう?なるほどな?と少し納得した。
壮年Aは物事を突き詰める努力家であり、その様はとても知的で痴的な…ある種の変態性を帯びたストイックさを感じる。
この壮年Aにより、自分の嗜好を認識した。突き詰めるレベルがとても深い人間というのは、私の嗜好をかなり刺激するという事。
良いかも。(何が)
私は特に深い意味もなく、アプリ上で壮年Aに「漫画喫茶で〇〇を読みたい」などと言っていた。〇〇の話で少し盛り上がったから。
居酒屋でそこそこ話したところで壮年Aが
「そろそろ漫画喫茶移動しますか?」
と持ちかけてきた。お?!本当に行くんや?!みたいな反応を返す私。壮年Aは
「どちらでも良いですよ」みたいな反応。
自分で漫画喫茶で〇〇読みたいと言っておいてなんだが、私はここでまさかの「カラオケに行きたい」と言い出す。(まて、それも密室やん)
いや…何というか、単純に歌いたかったから。純粋にそれだけ。
壮年Aは、えぇ、漫画喫茶ちゃうんかいしゃあねーなみたいな事を思ったかもしれぬが御構いなし。
カラオケに移動し、何曲かかましていると壮年Aが
「距離があって寂しい」
などと言い出す。座る位置をなるべく近すぎない所に座っていたから。
あーこれはしまった。というか初めからあかん奴やんと、我ながら自分のアホさに気付く。
密室でこのようなセリフを吐かれると、たどり着くところは一つである。
しまったなー。やっちまったなー。うーん。。ていうか、こちとらおねいさんやぞ、性の対象広くね??
観念して取り敢えず隣へ座る事にしたら、肩に手を回され、いよいよか…(何が)と思いながらも全く乗り気じゃない自分、この状況をどう打開するか。思わず顔を手で覆い、項垂れてしまうのであった。
To Be Continued
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