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※桜の木の下に、奇妙は老人が立っていた。

たそがれ時であった。
桜の木の下に、老人が立っていた。
老人は曲がった腰に両手をあてて、腰をのばしながら桜をふりあおいだ。
その時、「ゴリッ!」と、骨が泣いた・・・
が、異常はなかった。
見上げた老人の視界いっぱいに、桜花が飛び込んでいることだろう。
白い色と海老色が入りまじり、モザイクのように光っているはず。
数片の花びらが落ちてきて老人の肩にとまった。
夕陽の色がいちだんと濃くなった。
「老人よ、帰る家はわかっているのか?」
ふと、問いかけてみたくなった。

その老人は、どことなく自分と似ているような気がする。
もしかしたら、10年後、いや5年後の自分かも・・・。
5年という時空をワープして、自分が自分を見ているのかも?