日本美術が一気に分かる!「日本美術の底力」

山下裕二『日本美術の底力』NHK出版、2020年。(1200円+税)


日本美術の見方を知る
私は西洋美術はかなり好きで本もたくさん読んでいるのですが、日本美術はどうしても眠くなるというか、ピンとこないなあという印象でした。
正直パッと出てくる日本絵画といえば、北斎の富士山のやつ(富嶽三十六景 神奈川沖浪裏)というくらいの知識でした。しかしこの本を読んで、一つの対立軸を持つことで格段に理解できるようになりました。
それは「縄文」と「弥生」です。

縄文的な美は「動的」「有機的」「怪奇的」「装飾性」、弥生的な美は「静的」「無機的」「優美」「機能性」です(50頁)。
ざっくりと、派手なのが縄文、渋いのが弥生くらいに思っておいていいと思います。

「縄文」と「弥生」
第3章では「縄文」を徹底的に語っています。この本は全編を通して図版が多く使われているので、とても見やすいです。
中でも特に面白いと思ったのが、褐釉蟹貼付台付鉢です。
なんじゃこりゃ!!

それまではオーソドックスに、こんな作品があるんだ、こんな画家がいたんだ、なるほどなーと、それなりに楽しく読んでいたのですが、この蟹にはびっくりしました。後で実際に東京国立博物館に観に行って、実際に観て興奮が止まりませんでした。

弥生の方でも一つ紹介しますと、松林図屏風です。これはこれでなんだこりゃです。あまりにも渋すぎて、でもこれはこれでいいなぁという感じです。

美術本の中でも異彩を放つ本
この本はただ作品を紹介しているだけではなく、二つの軸をガイドラインにして、日本美術史を再構成している点に魅力があります。日本史で聞いたことあるなぁくらいの作品、絵師達が、この軸によって自分の中で生き生きとしてくるのです。
そして自分は果たしてどちら側に偏っているのか、などと考えてみるきっかけにもなります。是非読んでみてください。

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