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定年制を止めるって簡単なこと?

「経団連会長「定年の概念」なくなるとの考え」
(日テレNEWS24: http://www.news24.jp/articles/2019/11/11/06542719.html)

詳しくは上記の記事を見ていただきたいのですが、
経団連の会長である中西宏明氏が「いわゆる定年とか、そういうコンセプトってこれからなくなると思います。『働く意欲のある方が働く場』を提供していくという意味では、経済界の責任が重いんだろうと思います」と述べたとのことです。

記事では高齢者が働きやすくなると記載されていますが、実際にそうなのかどうかは疑問の残るところです。
定年制をやめるということは、当然に年功序列もやめるということになります。でなければ人件費が高くなりすぎて、多くの企業では雇用の維持ができなくなります。
しかし、今までの日本企業の賃金・生産性と年齢の関係は、若いうちは生産性が高くても賃金が低く、高齢になってくると実際の生産性より賃金が高いという形で設定されてきました。年功序列はこの前提のもとに作られてきたものです。実は、今でも日本企業は完全な成果賃金にはなっていません。それは、全ての職種に成果賃金を取り入れるのは無理があるためです。そして、長期間の雇用をするのであれば高齢となった時の余禄分を減らさざるを得なくなる、つまり高齢者の給与額を低くせざるを得なくなります。会長のコメントでは「意欲があれば」という話にはなっていますが、欲しい金額と実際の給与額とに差があれば意欲にも陰りが生じるのは当然のことでしょう。
若い頃、実際の働きに比べて低い賃金だった人が、やっとその分を取り返せる…となった時に「定年を止めましたので、賃金カーブを低く抑えます」と言って納得されるでしょうか?

もちろん、今までの定年年齢だった時点で一旦雇用を切って、新しい賃金体系で働いていただくことも不可能ではないでしょう。しかし、60歳なら60歳で退職していただくための大義名分がなければ解雇はできません。その大義名分であった定年を廃止すれば、本人が辞めると言うか解雇に該当しうる問題が生じない限りは解雇することはできなくなります。
日本においては解雇が非常に難しい現状を考えると、現実的なのかどうか疑問が残ります。

また、定年を廃止した結果、高齢者が沢山社内に残られたら、当然に新しい方を雇用することが難しくなってくるでしょう。そうなれば、組織の若返りも望めなくなり組織全体としての維持が難しくなってくることとなります。これは今現在でも多くの中小企業で生じている事態ではないかと思いますが、この事態が全ての企業で加速していく可能性も十分にあります。

定年制の廃止は、単に定年をやめるかどうかだけではなく様々な問題も絡んできます。人事制度の見直しをされる場合には、きちんと法律や過去の経緯、社会全体の労働市場の状況も踏まえたうえで御検討いただく必要があります。報道があったからと安易に同調なさることのないように御注意ください。

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