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新型コロナで再認識した都会暮らしの危うさ

6月20日現在、新型コロナウイルス感染者数が少ない県は、岩手(0人)、鳥取(3人)、徳島(5人)、鹿児島(10人)、秋田(16人)。すべてが県土の大半を過疎地域が占める。岩手県は本州で最も面積が広い。1㎢あたり人口密度は80.29人で、本州で最も少ない。だから、「三密」にはなりにくい。これは、農業現場でも同様だ。田畑での農作業のみならず、農村社会で「三密」になるケースはほとんどない。農民作家の山下惣一が言う。

「過疎こそが最大の感染症予防。新型コロナでわかった都会暮らしの危うさ/新型コロナでわかった田舎暮らしの強さ確かさ」(『新型コロナ19氏の意見』)農山漁村文化協会、2020年)

これらの県は食料自給率が高い。岩手県は101%/6位、鳥取県が63%/17位、鹿児島県が82%/8位、秋田県が188%/2位である。危機に瀕したとき、本当に大切なのはカネではない。モノと人間関係だ。カネはなくてもモノと人間関係があれば生きていける。私は改めて思う。ストックと開かれた自給システムの重要さを。東日本大震災のときと同様に、今回も都会のスーパーでは食料品の買い占めが起きたではないか。一方、米輸出国1位のベトナムと3位のインドは一時的に米輸出を停止した。これは、誰も非難できない。自国民の食糧を優先するのは当たり前である。


そして、「新しい社会」「新しい生活様式」の大前提は、経済成長ばかりを追い求めないこと。見直すべきは脆弱な都市型社会と過剰な便利さの追求であり、取り入れるべきは第一次産業の重視とさまざまなレベルにおける食の自給だ。実際、都市住民の田園回帰志向は強まる一方だ。最新の「まち・ひと・しごと創生本部」の調査」によれば、東京圏在住者の49.8%が地方圏暮らしに関心があるという。あわせて、アメリカの起業家・富豪のニック・ハノーアーが言うように、「累進課税ならぬ累進規制。大企業ほど高い最低賃金や労働規制を課す」ことである。


ただし、ここで留意すべきは、農村社会を美化しすぎないことだ。達増拓也岩手県知事自身が述べているが、感染者ゼロの一因は「交流人口の拡大が進んでいなかったこと」でもあり、農村社会でひとたび感染者が出れば、その人や家族が暮らしにくくなりがちという現実もある。言うまでもなく。「感染=悪」とみなしてはならない。

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