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臨時休校の学校給食への影響

 安倍首相が唐突に打ち出した、全国の小中高校に対する春休み開始までの臨時休校要請について、各方面から異論が出ている。専門家の意見を反映したものではなく、右派系勢力にも広がりつつある批判にあせった首相の思いつきだろう(産経新聞とフジテレビグループが2月22・23日に行った世論調査では、支持率36.2%、不支持率46.7%)。

以下のコメントが的を射ている。

「休校は地方自治体が主体的に判断すべきだ。具体的な対応策を示さずにインパクトの強い策を表明するのは、政治的パフォーマンス」(教員らでつくる公教育計画学会)

 ここで指摘したいのは、休校に伴って学校給食が行われなくなることだ。首相の頭にはまったくないだろうが、影響は大きい。ひとつは、子どもたちの昼食をどうするのか。学校給食が最大の栄養源であり、お腹を満たす食事であるという子どもたちは少なくない。もうひとつは、野菜や牛乳、加工品などを供給する農業者・生乳事業者・食品納入業者、そして仕事がなくなる給食調理関係者への補償である。

 前者については、市町村の自主的判断で、全員ないし希望者への給食の提供を継続すべきである。たとえばつくば市(茨城県)では、5日までは通常登校とし、給食も提供。6日以降については、2日に行う希望調査に基づき、希望者に提供するという。また、狛江市(東京都)では、各学童クラブごとに近接小学校に出向き、教室で提供するか、学童クラブに給食を運び込むという。異なる学校の児童についても、一律引率のうえで対応するそうだ(以上はおもに東京・多摩地区の現・前市会議員のネットワークの情報に基づいている)。ただし、こうした対応は決して多くない。

 オープンする学童クラブでは、仕出し弁当を提供する市町村も多いようだ。学校給食と学童クラブは所轄が異なるから給食の提供は難しいというのだろうが、子どものためを最優先して柔軟に対応するべきである。

 後者については、すでに野菜や生乳のキャンセルが大量に出ている。たとえば、地産地消率が約30%と首都圏では非常に高い小平市(東京都)では、3月分の4.5トンがキャンセルになったという。その分が市場に集中すれば、相場が下がる。また、一度に大量調理する給食用と個人客主体の市場用では、ネギのように品種が異なる場合もある(『日本農業新聞』2月28日)。一方、一宮市(愛知県)では、市民向けに日持ちしない給食用野菜・果物を小売価格のおよそ半額で屋外販売し、大好評だったという。販売金額の妥当性はともあれ、有効利用という点では評価できる。

 自民党の経済成長戦略本部・新型コロナウイルス関連肺炎対策本部は3日に、経済への影響緩和策(提言)をまとめた。そこでは、「休校により給食が停止されることに伴い、損失を被る生乳事業者・食品納入業者、給食調理関係者への支援」は謳われているが、農業者への言及はない。子どものために丹精こめて栽培している農業者への支援も検討してほしい。

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