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水道について考えてみませんか

2カ月ぶりの新刊がきょう出来上がりました。『日本の水道をどうする!?――民営化か公共の再生か』(内田聖子編著、本体1700円+税)です。
 昨年の暮れに水道法が改正され、水道事業の運営権を民間企業に売却すること=民営化が可能になりました。メディアでもけっこう報道されたので、ご存知の方も少なくないでしょう。


安倍政権は、経済に関して二つの重い病気に罹っています。「新自由主義・市場至上主義病」と「成長病」です。効率と競争を金科玉条とし、GNPさえ増えれば人びとは幸せになると誤解する病気です。この本は前者について的確に診断し、治療のための処方箋を明らかにしました。
水は単なる経済財ではありません。水へのアクセスは人権です。民営化に失敗したヨーロッパや南米などでは、再公営化がトレンドになっています。しかし、その事実は広く知られていません。


本書の執筆者は、専門家、市民運動家、労働組合リーダーたちです。まず、約30年間にわたる海外の豊富な事例から民営化の問題点を詳しく述べ、抵抗運動を紹介。そして、なぜ安倍政権が水道民営化に邁進するかを暴きました。一言で言えば、国際的水ビジネス市場へ進出するためです。そこには、「住民のため」という視点はありません。
さらに、日本で民営化の最前線に立たされている浜松市や宮城県、民営化を阻止した大阪市の反対運動の担い手が活動を報告しました。各地の取り組みに大いに参考になるはずです。もちろん、現在の公営による水道サービスに問題がないわけではありません。これからの公営水道をどう変えていけばよいかも考察しました。人口も水道使用量も減るなかで、職員の確保を前提としたうえでの小規模化や広域化も検討すべきでしょう。そして何より大切なのは、蛇口の向こう側に思いを寄せ、水の利用について自分事として考えることだと思います。人は水なしには生きられません。だから、水は自治の原点でもあるのです。

ところで、3年前の今日は忘れることができません。きっと皆さんも覚えているでしょう。津久井やまゆり園の凄惨な殺傷事件が起きた日です。事件後に、私が事務局長を務める「平和の棚の会」(16の出版社で構成)は意見書を出しました。そこから抜粋します。
「この凶行の背後には、これまで日本社会がおし進めてきた効率優先の政策(それにそぐわない人びとを排除するという意味で優生思想が背景にある)のの凶行に与えた影響は、無視できません。一方で市民の中にも程度の差はあれ、こうした優生思想があることも思い起こしておかなければなりません。なぜ障害者施設が郊外に作られるのか、なぜ被害者の名前を公表するのも憚られるような雰囲気があるのか。この恐るべき凶行の犯人を「怪物」として自分たちから切り離された存在とすることはできません」
 声明では「日本社会が」と書きましたが、こうした効率優先の政策を最も行ってきたのは、間違いなく安倍政権です。

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