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このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる


意味があるかどうかはわからないけどーー自分の中にある最高の自分に恥ずかしくない生き方をしてほしいってこと。

『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる』が収録されている、短編集が読み終わりました


とても、いい本だった 兎に角、とても


サリンジャーの作品を読む度に、自分の中にある少年性や少女性をまざまざと見せつけられてしまうし、………そして、私は何度も、何度も、何度も、ホールデン・コールフィールドよりも大人になったと気付かされてしまう


サリンジャーの文章は、日常の些細な風景が描かれていると思って読んでいると、実は非常に繊細な心象風景のように思えてくる 『ライ麦畑でつかまえて』を一度でも読んだなら、自分が耳にした知らない子供の泣き声や、どこへ行くのか見当もつかない隣の他人や、夜道を歩いている時に目に入ってくる、家々の灯りの一つひとつが、きっと美しく映るに違いない(この文章がなんだか気障っぽくて、感傷的になってしまう)


作者のJ・D・サリンジャーが戦争を経験したことは知っていたけれど、戦争物を書いているとは知りませんでした 勿論、とても悲しい、やり切れない気持ちになる話ばかりなのだけど、読んでよかったと思わせてくれる作品ばかりでした
『他人』に出てくる、以下の文章がとても好きです

彼は勇敢に微笑んだとか、最期に立派な言葉を口にしたと思わせてはならない。
そんなことはなかったのだから。そんなことはほとんどどれも映画か小説の話であって、そんなことができるのはごくごく限られた兵士、それも生の喜びが抜け落ちていることが最期までわからなかった兵士だけなのだ。(中略)
死んだ仲間をがっかりさせるな。撃て!撃て!さあ!撃て!



最後に収録されている『ハプワース16、1924年』は確かに読み辛く、難しい内容でしたが、この作品を最後に世間から姿を消したサリンジャーのことを思うと、作家としての遺書のようなものに思えたのは私だけでしょうか
サリンジャー自身が誰か(或いは世間、また或いは、そういうことは大抵特定の誰かだったりする気がする)への思いをしたためた手紙のようでした まあ、実際に手紙という体裁なんですが


金原瑞人さんの翻訳もとても良かった 読み易かったし、親近感が湧く文章で、サリンジャーの伝えたい美しい世界をより近くに感じました

#このサンドイッチ 、マヨネーズ忘れてる #サリンジャー #小説