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たぶん、七五三

「数え年」が、何をどのように数えているのか分からない。しかも、同じ学年でも早生まれだと数え年が違うらしい。難解すぎる。いたずらに混乱を招いている。そもそも、三学期に誕生日を迎えるのに「早」生まれと呼ばれることすら、腹落ちしていない。暦の概念を、きちんと臨海セミナーで学ぶべきだった。

夫婦揃ってその程度の理解なので、我が家における七五三は、「概ね三歳前後または七歳前後に写真を撮るイベント」という曖昧な位置付けだった。「概ね三歳前後」がカバーするエリアは、皆目検討がつかない。いつになったら七五三が始まるのか誰も分からず、親戚一同、固唾を呑んでいた。

ある日、次女(年少)の級友が七五三の写真を撮ったという話を、妻から聞いた。十月十日(とつきとおか)が過ぎたのも先日のことのように思えたが、気が付けば、3年10ヶ月が経過していた。十分に七五三の射程圏内と言える。賽は投げられた。私達夫婦は、急いでフォトスタジオを予約した。

フォトスタジオの店内には、絵に描いたような家族の写真が幾つも壁に並んでいた。重厚で格調高い額で飾られた、大きなポートレートが目を引く。30-40代男性の多くは、額で飾られた絵を見ると、条件反射的に飛び込みたくなる。

砦の上空に浮かぶ鳥カゴに思いを馳せていると、被布着物姿の次女が出てきた。次女は、自分で選んだ着物を着た甲斐もあって上機嫌になり、様々なポーズを披露する。曖昧だったイベントの輪郭が、徐々にはっきりと見えてきた。意気揚々と千歳飴袋を掲げたことからも、これが七五三であることは決定的だった。

念のために書くが、写真右側が次女だ。

三つ指をついてお辞儀をする次女の姿は、旧来の結婚前夜を彷彿とさせ、私に走馬灯を見せた。次女と過ごした3年10ヶ月の日々が、色濃く鮮明に思い起こされる。出生した日、初めての誕生日、家族旅行、幼稚園行事などを切り取った写真や動画が、瞼に浮かんだ。左右にスワイプすると、月別でサムネイルが一覧表示された。コメント投稿機能も完備されており、優れたUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインを実感した。

夢のようなひと時だった。退店時に、基本撮影料と写真データ代、オプション衣装代、写真フレーム2点合計で10万円強を一括請求された気がするが、記憶が定かではない。この良き日が白昼夢だったかどうかは、カードの利用明細を確認してから判断したい。

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