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夜光虫

今日も、
あなたへのお手紙を書きます。

昨日、うちは仕事でした。
木に登ってチェンソーを使っているんですよ。
ロープで上るんです。
リュウキュウマツという木に登りました。
松ヤニが服について、
いい匂いがしていました。

「いい匂い」って、不思議ですね。

曖昧だけど、
基準や閾値があるのかも分からないけど

うちにとっては、確かに
いい匂い。

******

そうそう。
昨日は、
特別な光を見ました。
夕方のランニングの汗を流しに、
うちは海に入りました。
19時を過ぎていましたから、もう真っ暗。

そんな真っ暗な海の中に、
光がありました。

夜光虫です。

この時期だけ、
浜の近くに寄ってくるという
夜光虫。

夜に光る虫。
海の中で。

知っていましたか。
夜光虫って、
水が動くと光るんですよ。

それまでは光っていなくて、
どこにも見えなくて、
ただ黒い海しか見えないんです。

平泳ぎで進む水の中、
手を伸ばすと、
夜光虫が光り出します。

水をかき分けて進む
うちのまわりでは、
夜光虫がしばらく光って、舞って、
視界の後ろへ流れていきます。
そして光は消えていく。
また光っては、消えて。

まるで星空を泳いでいるみたい。


その光の色は、ホタルに似ていました。
その明るさは、星のように微かでした。

その挙動は、
炎からたちのぼり、宙を舞う
火の粉に似ていました。

その出会いは…



実家の夏の闇夜に聴いた、
遠田で蛙が鳴く声。

焚き火から舞い上がる火の粉。

それは、とても懐かしく、
心落ち着いて。

ふれることで、
天に呼ばれているような心持ちがする出来事。



28.9.5 Mizuki







絵を描くのは楽しいですが、 やる気になるのは難しいです。 書くことも。 あなたが読んで、見てくださることが 背中を押してくれています。 いつもありがとう。