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歴史香る世界のスパイス料理 第3回ルネサンス期イタリアのスパイス - スパイス航路に導かれ

本記事は、雑誌『小原流挿花』2018年10月号に寄稿した記事を追記再構築してnoteに投稿したものです。当時は4ページで5品の料理を紹介しましたが、noteではボリュームがあるので、全5回としました。その第3回です。
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食のルネサンス感じるスパイス風味の鶏のソテー

 古代ローマの時代から1000年以上時計の針を進めて見ましょう。14~16世紀になると、古代ギリシア・ローマの文化を復興しようという運動が起こり、優れた芸術作品が生まれました。いわゆるルネサンスです。芸術、音楽、思想に影響を与えたルネサンスは、食の分野にも進出します。中世の王侯貴族は饗宴を開き、料理の味よりも見た目が派手な演出や美しさなどのエンタメ要素が強かったのですが、この美食と派手なビジュアルに加え、節度の概念が持ち込まれました。何事もほどほどに、です。
 富や権力の象徴として多用されていたスパイス類が最小限に控えられたのです。スパイスは薬の代用品として効能を期待するなら少量で十分でした。また、テーブルマナーの啓蒙が起こったのも1500年ごろでした。ナイフや食器はよく洗い、清潔感が保たれるようになりました。そんな時代のスパイスを活かした一品をご紹介します。
 ローマ教皇ピウス4世、ピウス5世に仕えた宮廷料理人バルトロメオ・スカッピが著した当時の料理書にはスパイスを上手くブレンドした万能調味料が紹介されています。

“あらゆる香辛料は、よい香りをつけ、料理の味を引き立ててくれる。調味料を混ぜておき、さまざまな料理に使えるよう備えておくとよい。計1パウンドの調味料になるように、それぞれの分量を記す。
シナモン4 1/2オンス、クローブ2オンス、ショウガ1オンス、ナツメグ1オンス、メレンゲッタコショウ1/2オンス、サフラン1/4オンス、砂糖1オンス” (『オペラ』より)

 当時、スパイスの使い方を最も心得ていたのはイタリア人でした。上記の材料を粉末状にすりつぶし、密封瓶に入れておけば3,4ヶ月保存できると考えられていました。このローマ教皇領があったウンブリア州では鶏肉料理が有名です。スカッピの万能調味料を使いながら鶏肉をソテーしていきましょう。見ての通り甘めの味わいですので、最後にレモンとローズマリーで引き締めます。ローマ教皇も味わったルネサンス料理をどうぞ。


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