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温泉小噺 独泉(独占)

「あらっ、おねーさん、もうでるの?」
ほっかほかに温まって浴室部分から脱衣所に移ると、
脱衣所で服を脱ぎかけてたおばちゃんから声をかけられた。
荷物を入れてある脱衣籠が一つしか無いので、
先客が一人なのはわかるはずだ。

「はい。お先でした。今、誰もいませんよ」
貸し切りですよ、よかったですねというニュアンスを含ませて、
もちろん知らない人だけど愛想よく返事をした。
すると、その人は言う。
「私、一人は好かんのよ。寂しいじゃない」

へえーなるほど、貸し切りじゃない方がいいという人もいるのね。
私は貸し切りだとラッキー!と思うほうだ。

「きっともうすぐ誰か来るよ」と慰めつつ、
「多いのもヤだけどね、一人は怖いしね」
「やだなー、誰かこないかなー」
「さみしいわ」
ずっとぶつぶつと言いながら、お風呂に入ってく
おばちゃんの背中を見送った。
がんばれ、おばちゃん(何をがんばるかわかんないけど)

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